下園荘太『自衛隊メンタル教官が教える 折れないリーダーの仕事』〜読書リレー(105)〜

「生き残るためのリーダーシップ」という概念を提供する、とても興味深い本です。 

自衛隊の教官である著者が、ビジネスにも通用するリーダーシップの考え方について、自衛隊での経験をもとに持論を展開する本です。クラウゼヴィッツ戦争論など、ビジネスと戦争については類似点があることが言われていますし、MBAなどのビジネスプログラムにも、士官出身の人が少なくないと言われています。特にリーダーシップについては、組織を導いていくという点において、多分に共通点を見いだすことができると思います。このため、この本も読んでいて、「これはビジネスの時もそうだな!」と思うことがほとんどであり、私のようなビジネスパーソンにおいてもとても役に立つ本といえます。

 

この本において特徴的とも言えるのが、「勝つためのリーダーシップ」ではなく、「生き残るためのリーダーシップ」の提起にあります。 そもそもビジネスにおいても戦場においても、勝負が一回のみで終わることはなく、継続した戦いが求められます。この中においては、常に勝ち続けるためのマインドセットを行うことは非常に難しく、モチベーションが崩れることも少なくありません。こうした現在の状況を鑑みると、一回限りの勝負に勝つためのリーダーシップではなく、長期的に「負けない」リーダーシップの方が求められているというのです。

 

著者によると、負けないリーダーシップには以下の特徴があるといいます。

 

①負けないリーダーシップは、長期戦を前提とする

②負けないリーダーシップは「疲れた人」を対象にする

③負けないリーダーシップは疲労のコントロールを重視する

④負けないリーダーシップは、リーダーの決断が組織の運命を握る

 

特に③について、人間は強いプレッシャーを与えられると判断力やコミュニケーションが鈍ってしまうという人間の特徴をしっかりと掴み、その上でのリーダーシップが求められるというのです。

 

この考え方は、今の日本企業に必要なのではないかなと思ってしまいます。右肩上がりの成長が20年単位で停滞している日本社会においては、従来のような「勝つ」視点というよりかは、「負けない」という考え方の方がfitしているような気がします。その点においては、とても役に立つ視点を提供してくれるほんとなっています。

 

では、では

三田紀房『汗をかかずにトップをねらえ!?』〜読書リレー(104)〜

 またしても、三田紀房氏による本を読んでしまいました。でもやっぱり、この視点は面白いと思います。

 

タイトルからし自己啓発的な内容の本ですが、ドラゴン桜のように「騙されたくなけらば勉強しろ」という内容の本になっており、高校生の時にドラゴン桜をリアルタイムに読んでいた私からすると妙に納得がいく内容となっています。

 

この本で強調されているのが、「今の20代後半から30代にかけて」の日本人だということです。なぜこの世代に対して強烈なメッセイージを発信しているのかというと、ここが、「ロストジェネレーション」だから、と言えなくもないでしょう。

 

この世代というのは、就職活動時代にはあまり日の目を浴びなかった世代です。具体的にいえば、世界的な不景気の影響を受け、企業が新卒の採用募集人数を絞った時期でもあります。そうした中では、優秀な人材においてもそうした企業に入ることができず、苦労したことだと言えます。そうした世代に訴求したのが、この本だと思います。

 

また、特に顕著なのが、即戦力を求められる現在の転職市場です。現在、人手不足の中で、現場を取り仕切る中間層、すなわちミドルマネジメントの人手不足が顕著に表れています。これは、日本の大手企業が好調な業績を達成している中で、ある意味仕方のないことなのかもしれませんが、即戦力が足りない、ということはすなわち、現場の職場において、生え抜きの人材が育っていない、ということが挙げられます。言い換えれば、ロストジェネレーションにおいて採用を絞ってしまったがために、そうした世代においてきちんとした教育がなされていない、という現実に日本企業がいよいよ直面している、ということになるのでしょう。

 

そうした中では、いってみれば需要と供給のバランスの中で、供給が少なくなっているというのが顕著に見えるわけです。本来であれば、供給が少なくなっているということは、需要を満たすために市場価格は釣りあがっていく、すなわち賃金は上がっていくというのがセオリーだとおみますが、実態としてはそうなっていないわけです。日本の課題として、そうした不均衡の部分に、真正面から取り組むべきではないのかな、と思ってしまいます。

 

では、では

堀江貴文『なんでお店が儲からないのかを僕が解決する』ー読書リレー(103)ー

飲食店をまた違った角度で見させてくれる、そんな本です。 

なんでお店が儲からないのかを僕が解決する

なんでお店が儲からないのかを僕が解決する

 

 Kindle Unlimitedで読み放題対象となっていたので即ポチ。外食好きが興じてレストラン推薦有料サイト「テリヤキ」を運営する一面も持つ堀江貴文氏が、レストランについて述べた本です。自身の名前で勝負できるとこうしたサイドビジネスもどんどんできるので、本当に羨ましい限りではありますが、365日外食だという堀江貴文氏の経験値は凄まじく、様々な視点で外食産業を見ており、とても勉強になる一冊です。

 

この本の一貫した主張は、レストランとして経営的に成功するためには、古い伝統や格式にとらわれず、新しいことを常に挑戦し、他とは違う価値をどんどん創出して行くべきだというものです。簡単にまとめるとなんだそれだけのことかよと思われる方もいるかもしれませんが、それができていないのが外食産業だと堀江氏は指摘しています。

 

例えば寿司職人の話。堀江氏が以前twitterで「何年も修行に時間を費やす寿司職人はバカ」と投稿し、炎上したと言います。寿司職人といえば、修行期間中はなかなか酢飯を握らせてもらえず、皿洗いや掃除などの仕事をこなしながら見よう見まねで師匠の技を盗んで行く、というアプローチが求められていました。しかし、これはやはり非合理的な習得方法なわけで、寿司を握りたかったら直ぐに挑戦すればいいのにという意味での発言だったわけです。しかし、古い伝統にとらわれるあまり、そうした合理性とは程遠い手法が採用されているのも事実だといえます。堀江氏は業界の外から、斬新な視点で持ってこうした慣例を批判的に捉えただけであり、至極的を得た発言をしていると思います。

 

一見すると当たり前のことなのに、なかなか実行に移せないという状況は、外食産業のみならず他の分野でも起きているのではないでしょうか。合理性が求められるビジネスの世界においても、業務フローなどで不要なプロセスが含まれていたり、会議が多くなったりと、色々あるわけです。しかしそうしたものは、蓋を開けてみると「前任者の頃からこうしてやっていたのだから、変えられない」というような、過去に拘束されるケースも少なくありません。

 

人間の心理学的ななんかが働いていることは間違いありませんが、何れにしてもに人間は過去に束縛されやすい動物のようです。そうした状況を常に批判的に見れるかどうか。この本はそういった意味でも、外食産業を切り口に面白い視点を提供していると思います。

 

では、では

岡島悦子『抜擢される人の人脈力 早回しで成長できる人のセオリー』ー読書リレー(102)ー

人脈と聞くとあまりいいイメージがありませんが、この本を読むとキャリア形成の上でいかに戦略的にアクションを行なっていくべきなのか、考えさせられます。

 

抜擢される人の人脈力  早回しで成長する人のセオリー

抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー

 

 

前掲の岡島悦子氏による人脈について述べた本。年間数百人のマネジメント層のビジネスパーソンと知り合う中で、どのようにして成功に結びつくような経験を積み重ねてきたのか、その体験談をベースに、独自のキャリア論と人脈論について述べています。本の内容のために、読者が限られてしまうとは思いますが、20代30代の「自分の名前で勝負したい」というかなりのバリバリキャリアを求める人にとっては、いかに自分という商品を売り込んでいくかという問いをしっかりと考える上で、この本は非常に役に立つと思います。

 

この本の面白いところは、キャリアにとって大きくプラスとなる「抜擢」を戦略的に勝ち取る方法を考えていることです。人は抜擢されることによって、この本の言葉を借りれば、1つ上のレイヤーに行くことができ、仕事での視野を広げ、さらにお声がかかるという正のスパイラルに持って行くことができるというのです。それはまさに雪だるまのように、一番初めは小さな塊が、どんどん転がることで大きくなって行き、最初の原型からは想像がつかないほど立派に成長するような、そんな状態に似ています。これをうまく行うために、本書では以下のアプローチを紹介しています。


1.自分にタグをつけよ(自己の訴求ポイントを明確化せよ)
2.コンテンツをつくれ(「おっ、コイツは」と思わせる実績事例を)
3.仲間を広げよ(お互い切磋琢磨し、次のステップを共創せよ)
4.自分情報を流通させよ(何かの時に自分のことを思い出してもらう)
5.チャンスを取りに行く(実力以上のことに挑戦し、人脈レイヤーを広げる)

この順番だというのです。

 

これを読んだとき、学生時代に思い当たる節がありました。私は学生時代、台湾旅行を機に中国語にハマり、いろんな友人に「台湾面白いわ、中国語面白いわ」と語っていました。意図していたわけではなく、純粋な興味本位からの発信だったのですが、「どうやらうちの学校に中国語ギークがいるらしい」という噂が広まり、いろいろな話が舞い込んでくるようになりました。例えば今度中国から留学生が来るから、チューターとしてサポートしてほしい、とか、中国語サークルを立ち上げるからサポートメンバーとして参画してほしい、とか、はたまた中国語の文献の翻訳をしてほしい、などなど、気がつけば自分が意図していなかったような話がどんどん舞い降りてきたわけです。もちろんその中には、自分の能力から見ても少しチャレンジングなオファーもありましたが、そうしたものを1つ1つ片付けて行くうちに、自分の「中国語、台湾」の理解がどんどん深まるような気がしていったのです。

 

大学を卒業し社会人になってからは特段そういう経験がなかったため、自分の心の中ではあれは特殊な事例だったのかということで片付いていたのですが、この本を読んで「ああ、あの時の体験はこういうことだったのか」と、改めて感じることができました。

 

今振り返ると、あの時の自分はいい意味でタグ付が自然とできていたのだと思います。ただそれを、自然発生的に起こすのではなく、人為的に行うことこそ、戦略的な人脈を形成する上では大事であるということがわかったような気がします。

 

前掲の堀江貴文著にもありましたが、3つのタグ付けを活用して、他にない人材を目指すというものがありました。その本では、結局タグといっても、自分の名前で仕事ができるようになった人たちの後付け論的なものだ、という理解しかありませんでしたが、この本のおかげで、少し実践的に考えることができそうです。

 

では、では

 

奥野修司『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』ー読書リレー(101)ー

 

怖い中国食品、不気味なアメリカ食品 (講談社文庫)

怖い中国食品、不気味なアメリカ食品 (講談社文庫)

 

 

食の安全をめぐる議論については、過去から様々な角度で取り上げられていますが、これはかなりセンセーショナル。特にアメリカと中国から輸入される食品に着目し、これらがいかに怖さを持っているのか、その裏を探るという本です。

 

私も上海在住の身ですので、中国の食品をこれでもかと毎日食べているわけですが、改めて食の安全について考えさせられる一冊でした。

 

現在日本の食料自給率は40%をきるレベルです。それはすなわち、約3分の2の食事を、外国産に依存するということになります。しかしながら、これらの食事は、日本人のために、日本人が認める基準で生産されたものか、と言われると疑問が残ります。「グローバル化を進めるということは、食の安全のスタンダードを、最も低い国に合わせる」、とこの本でも指摘されていましたが、まさにスタンダードが全く異なるものを取り入れている危険性があるわけです。

 

この本では、アメリカ牛肉で、日本で禁止されているホルモン剤(エストロゲン)が大量に含まれている、中国産のコメが重金属で汚染されている、といった事例が紹介されています。こうした事例は日本からは考えにくいことですが、彼らからすれば「自分たちが食べないものはどのように作ったって構わない。お金になりさえすれば良い」という考えがベースとなって生み出されているものです。消費者が生産される土地が思いつかないと不安になるのに対して、生産者も、消費者があまりにも遠いと、消費者の顔をイメージすることができず、そうした考えに至ってしまうのかもしれません。

 

しかしそれらは一方で、安易に安いものに手を出してしまう日本人にも一因があるのではと思ってしまいます。前回紹介した大前研一氏の書籍の中でも、「日本は低欲望社会」だという指摘がありましたが、安いものにどんどん手が伸びてしまうのです。そうしているうちに、知らず知らずに自分たちの健康を害する行為をしてしまっているのかもしれません。

 

dajili.hatenablog.com

 

これらの安価な食事が危険であるならば、極端な言い方をすれば不買運動を行なっても良いわけです。そうすることで日本の生産者を安価な食品から守ることができ、消費者の手に届く食品も安全なものとなる、正のスパイラルに持っていくことができます。そうしたサイクルにするためにも、まずは知ることが大事。そういった意味では、この本は良質な知識を提供してくれていると思います。

 

では、では

 

遠藤功『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』〜読書リレー(100)〜

日本のMBAのみならず、MBAとキャリアについて考えた本です。

 

 

経営コンサルティング会社ローランドベルガー元会長で、早稲田大学MBAプログラムの教授でもあった遠藤功氏。自身もMBA卒であるにもかかわらず、「日本人にMBAはいらない」というタイトルで本を出しています。

 

海外トップスクールと日本のMBAとは、大きく差が開いており、日本のMBAでキャリアを築くよりかは、実務経験をしっかり積む、特に「修羅場」を経験することが大事だ、というのがこの本の論旨です。

 

著者によると、海外初のMBAプログラムが日本で普及し始めたのは2000年代。2003年度に文部科学省によって創設された「専門職大学院制度」が一つのきっかけとなり、現在では約80の大学が、100もの大学院レベルのビジネス教育プログラムを開設しています。しかし一方で、プログラムの質については海外トップスクールと大きな差が開いている状況で、加えてそうした供給過多の状況の中で、定員割れによる学生の競争率が低くなっているといいます。こうしたプログラムから輩出される人材が、果たして日本のビジネスリーダー足りうるのか?という問題意識を、MBAプログラムで教鞭をとった立場から痛切に述べています。

 

この本で取り上げられている視点というのが、ミンツバーグのMBA批判本である「MBAが会社を滅ぼす」では、「アカデミックなビジネススクールで二年間過ごしただけなのに、マネジメント能力が身についたと思い込んでいる人たちが社会に送り出されて」いるために、マネジメントができないのに、マネジメントができると勘違いをしている(そして、周りもなんとなくそう認めてしまっている)というような人材が大量に出てしまっている、というのです。

 

そうした視点は、日本のMBAのみならず、海外のトップスクールでも度々指摘されているところです。あくまでもMBAはアカデミックな場所。しかしビジネスは実践するものであり、理論を構築するものではありません。知識を得たとしても、それを実践しない限りは全く役に立たない。そうした点をしっかりと理解しておかないと、MBAで学ぶ価値はなくなってしまう、というのが注意すべき点なのかなと思います。

 

もう一点、著者が述べているのが、「日本のMBAに日本のビジネスマンが大挙してしまうのが、日本のビジネスマンが学校に通う余裕があるほど、バリバリ働かされてもらっていない」という点です。30代半ばのやる気のある中堅社員たちに大きなチャレンジの場を与えられていない、というのです。大手企業が好調で、人手が不足しているというニュースが飛び交っていますが、確かに世界にインパクトを与えるような日本企業が多くなっているのかというと、疑問が残ります。「仕事で人は磨かれる」という点を考えると、そうした仕事が日本になくなってきているのではないか、というのがこの著者の言及から読み取ることができます。

 

いずれにしても、これからMBA留学する自分にとっては、身の引き締まる思いでこの本を読んでしまったのでした。

 

では、では

私が欧州MBAを選ぶ5つの理由

MBAのプログラムスタートまで、半年を切りました。今までこのブログでは読んだ本の読後録をメインにしていましたが、これに加えて、MBA留学に関する情報もこのブログを通じてシェアしていきたいと思っています。

 

18年の8月より、INSEAD(インシアードと呼びます)のMBAプログラムに留学することが決まりました。今は居住先の選定やビザの準備等に加え、一部会社が主催するセミナーなどへの参加など、少しずつ準備に向けて忙しくなっている時期でもあります。

 

INSEADというとあまり日本では聞きなれない大学ですが、日本人のイメージとは裏腹に、世界的に見れば非常に評価が高いのがこの大学の特徴です。MBAランキングで一番信頼性が高いと言われているFinancial Times紙の最新版ランキングでは、1位のスタンフォード大学に次ぐ2位にランクインしています。去年までは2年連続で1位になるなど、高い評価を得ているといえます。

 

日本で海外MBAというと、アメリカのMBAが圧倒的に知名度も高いです。ハーバードをはじめ、スタンフォードやMITなど、日本人が連想するMBAといえばこういった大学のものだと思われる方が多いかもしれません。

 

そうしたなかで、なぜ私はヨーロッパのMBAを選んだのか。今後のキャリアを考える上で、そして現実的にプログラムを選ぶ上で、様々なメリットがあったのです。

以下、私が感じる欧州MBAのメリットです。

 

①プログラムの評価が高い

すでに上記で触れましたが、日本人のイメージとは異なり、現在MBAで高い評価を得ているのはアメリカの大学だけでない、という事実があります。実際、前述のFinancial Times紙のMBAランキングでは、トップ10以内にヨーロッパのスクールが2校ランクインしています。(INSEAD、LBS)。トップ30までに範囲を広めると、アメリカの大学が16校とトップではありますが、ヨーロッパの大学が9校、アジアの大学が5校(INSEADは、フランスとシンガポールの両方にキャンパスがあるが、簡易的にヨーロッパでカウント)とMBA=アメリカという図式ではなくなってきているのが見て取れます。

今から20年前までは、アメリカの大学がこうしたランキングの上位を総なめしていたのですが、世界経済におけるアメリカの相対的地位の低下や、ヨーロッパや中国・インドといった大学の努力により、年々両者間の差が縮まってきているどころか追い越している現象も見られます。

さらに近年では、トランプ大統領就任に伴い、海外からの就業者に対する冷遇が噂されていることも影響を与えているようです。アメリカへの留学のメリットが薄れておりMBAへの出願者が減る一方、ヨーロッパやアジアのMBAプログラムの出願者が増えている、という情報もあります。

 

②プログラムの期間が短い

海外MBAを検討されている方は、すでに社会人になられている方が多いと思います。現在安定したポジションにいる中で、あえてもう一度学生という立場に戻り、勉強し直すというのは、金銭の面でもリスクの高い行為といえます。このため、いかに学生の立場でいられる期間を短くし、その時に得られたであろう給与収入が得られないことによるロス(機会損失)を少なくするか、というROI(Return on Investment)の観点が必要になります。

この点で、ヨーロッパのMBAは非常に柔軟性があります。2年のプログラムが主流であるアメリカに対し(一部を除く)、ヨーロッパはほとんどが1年から1年半の期間でプログラムを修了することができます。INSEADやCambridgeのMBAについては10ヶ月、ロンドンビジネススクールは15ヶ月から21ヶ月というレンジです。こうした短期間のプログラムにより、ビジネスの現場から離れる期間を短くし、MBAの経験をスムーズにキャリアに生かすことができます。

 

③海外学生比率が高い(ダイバーシティの高さ)

海外学生比率の高さは非常に重要だと思っています。MBAでは特に学生同士の人脈構築はもちろんのこと、ディスカッションを通じた学生からの学びも多いところがあります。こうした状況で、現地の学生の比率が多いと、どうしてもプログラムの内容や学校のサポートも現地寄りになってしまいます。そして海外学生へのサポートは蚊帳の外に置かれがちです。私は大学学部生時代に台湾に留学していましたが、まさしくそのような状況に置かれていました。

アメリカの大学では、相対的に海外学生比率が低い傾向にあります。ほとんどの大学が、海外学生比率が30%台となっています。これは逆にいえば、3人に2人はアメリカ人ということになるのです。さらに、「海外学生」にも注意が必要です。これはMBAプログラムに留学した日本人にカウントされている学生でも、学部時代にアメリカに留学経験があったり、そもそもアメリカ国籍がないだけでアメリカ在住が長い学生がいたりと、海外学生といっても相当にアメリカナイズされている人が多いと聞いています。

しかしヨーロッパのMBAはそうした点を考慮し、海外学生比率を90%台に調整しています。さらにある国の比率が高まるなどの偏りがないように、学生の比率を調整しているといいます。さらに、MBAの授業で紹介されるケースも、地域の偏りがないように調整されているといいます。こうした中では、MBAプログラムを通じて国際感覚を身につけることができるのは、アメリカではなくヨーロッパである、ということができるでしょう。

 

④平均年齢が高い(社会人経験が長く、実務経験と座学のバランスが取りやすい)

ヨーロッパのMBAに特徴的なのが、学生が相対的に年齢が高めということです。アメリカのプログラムでは平均年齢がだいたい27歳であるのに対し、ヨーロッパは29~30歳が多いです。この違いは、ダイレクトに実務経験の違いに響いてきます。27歳ですと、実務経験2年程度であり、まだ大きい仕事は渡されにくいイメージです。一方で29~30歳となると、私のように海外駐在や管理職の経験者が出てくるため、比較的実務経験でも豊富な人が学生として学びにきます。このMatureさが、また学生同士の学びを促進させ流ことにつながります。

 

⑤学費が安い

これは私のように私費でMBA留学を検討する人にとっては死活問題です。あくまでも「アメリカの大学と比べて」という条件付きですが、それでもヨーロッパのプログラムは、アメリカと比べて安価に設定されています。アメリカのトップスクールとなると、年間の学費だけで7万ドルを超えており、2年間の学費の総計は1600万近くになります。一方ヨーロッパのトップスクールの学費は、1年ということもありまず学費が抑えられるというのもありますが、一番高価なロンドンビジネススクールでも最長2年で約8万ポンド。日本円にして約1200万ですから、75%も違うわけです。世界的な物価の上昇に伴いMBAプログラムの学費もうなぎのぼりに上がっており、年率約4%のスピードで上昇しています。これを考えると、アメリカもヨーロッパもそもそも学費が高すぎて諦めざるを得ないケースも出てくるかもしれませんが、何れにしても現段階においては、ヨーロッパの方が安価といえます。

 

以上のように、ヨーロッパのMBAはそれぞれメリットがあります。もちろん、人それぞれによってMBAをとる目的が異なるので一概にはいえませんが、私のように「社会人になってビジネスに興味が湧いた。ただ、コスパよく集中して勉強したい」という考えの方にはオススメだと思います。

 

では、では