読書リレー(33) 実は見つけやすい?仕事効率化のカギ ー本間卓哉「全社員生産性10倍計画」

仕事の効率化のカギは、実はいたるところに落ちているのかもしれません。

 

読書リレー(32)で働き方における効率性について考えていたところ、AmazonKindle Unlimitedで偶然見つけてしまったのがこの本です。タイトルに「全社員生産性10倍計画」とありますが、もちろん、前述書の「徹夜しないで人の二倍仕事をする」と同様に具体的に10倍、2倍にどうなるかという点については書かれていません。まあ、どうやらこういった類の本はタイトルで具体性を出すことで魅力的にみさせるという方法を使っているので、多分これについてあれこれ議論するのは本質的ではないでしょう。(こういうタイトルにせざるを得ないところに、出版業界の苦しさが見え隠れしているような気がします…笑)。

 

仕事の効率化には様々な方法が考えられ、前述の「徹夜しないで…」ではどちらかというと、どういう風にして仕事の効率化をするような考え方に持っていくかというマインドセットの傾向が強かったのにたいし、この本ではさらに手法をブレークダウンして、仕事の効率化・生産性向上の中でも具体的な方法論の一つとして考えられるITの活用について、かなり細かく記載がされています。

 

ITといえば、もうかなり前の言葉のように思われますが、「侮るなかれ!」というのがこの本の主な内容だと思います。ITというのはインフラのようなもので、ないと非常に困りますが、存在していることにあまり気づかれないケースが多いようです。例えば、仕事に限らずインフラストラクチャーで最たるものと言えば、電力や水道などがありますが、これらは「必要なタイミングで、必要な量だけ」きちんと出れば何も問題になりません。また、よほど電力や水道の繊細な調整が必要となる産業の属していない限りは、それらの質についてもあまり深掘りされない、またその質はあまり重視されない・重視する必要がないのが特徴です。ITも、そういうインフラストラクチャーの一種としてみられがちですが、ITは質を深掘りすればするほど、仕事の効率性を向上するカギを握っているのです。例えば各社員が持っているPCのスペックが古かったりする場合、ソフトを起動するだけで待機時間が何十秒、何分とかかってしまう、というケースがあります。一見すると非常に小さな時間ですが、それを1日に何回も行うのであれば話は別です。それを最新スペックに揃え、待機時間を変えるだけで、大幅な時間短縮ができるのです。

 

そんなことあるのか?と思いますが、私は実体験レベルで上記シチュエーションに遭遇しています。オフィスの中にはどこかに一人はエクセルマクロマスターなるものがいて、複雑なマクロと計算式を武器に、大量のデータを整理するような人がいました。しかし、データ管理が蓄積されるにつれてマクロや計算式も高度化し、ついにPCのスペックが追いつかないという事態が発生してしまったのです。その時、その社員の方は、一度マクロを実行するだけでも10分以上かかると嘆いており、その間にタバコをすい、トイレに行き、ある時は別の社員とおしゃべりをしながら過ごしていました。そうなると、作業の時間は必然的に多くかかってしまい、その方はよく残業はもちろんのこと、休日出勤もされて、大変そうにされていました。そして、経営層はその状態を特に問題視していなかったわけで、その方に業務が集中し、慢性的な機能不全に陥っていった、ということがありました。それにみかねたIT部門の若手社員が最新版かつスペック強化版のPCを特注でリースし、その社員に与えてあげたところ、マクロ実行から完了まで1分もかからないくらいで完了し、とても時間の効率性ができた、と言います。

 

この実体験を改めて振り返ると、非常にベーシックなところでなんでつまづいているの?と考えざるを得ません。普段会社で働いていると、情報セキュリティなどの観点から、使用できるPCに制限がかかる、とかなんとかの様々な理由により、ITの活用が制限されています。よって、仕事で使っているITインフラよりも、自分のパーソナルなITインフラの方が数倍便利、というような事態が発生してしまっているというのが多くの方の現状かと思います。しかしながら、そこの現実と実力の差があればあるほど改善の余地が秘められているわけです。この本でも、日本の生産性の低さについて嘆きの声があげられていますが、日本の生産性が低い理由について筆者は、「工場のような生産現場ではなく、サービス業や、製造業の営業・間接部門などのホワイトカラーの生産性が、世界に比べて非常に低いせい」だと述べています。そしてその生産性の向上において、ITの活用が欠かせないと述べています。

 

単純に業務時間を制限するよりも、こうした点にフォーカスして、もう少し議論を深めるべきなのかもしれませんね。

 

ITでどのように業務改善ができるんだろう?

どんな具体的な活用法があるんだろう?

そもそも、働き方改革ってなんだろう?

 

というテーマを知りたい方には、この本がオススメです。

 

では、では