橋本健二『新・日本の階級社会』〜読書リレー(69)〜

 

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

 

 

日本はすでに格差社会が浸透しているのではないか?という点について、社会学の中でも一番クラシックな人口動態の観点から分析した本です。労働形態や所得に基づく階層のカテゴリー化のみならず、性別特に女性についても詳細な分類化を行なっています。

 

面白いのが、全てのカテゴリーにおいて、「自己責任論」が蔓延している、という点です。パート主婦を除き、ほとんどの人が、「今自分がこのような社会的地位になったのは、自分の努力によるもの(もしくは、自分の努力が足りなかったから)」という考えです。パート主婦はこの論調を持たないのは、今の自分の立場が、性別という自分の力では抗えないものによるという考えがあるためですが、驚くことに、男性を含むその他の全ての社会的グループの人々について、この考え方が主流なのです。

 

当然、これは自分とは異なる境遇の人々に対する配慮をなくしてしまうことにつながります。社会的に成功した人々は、自身の成功を「自分の努力によるものだ」というふうに考えてしまうため、逆に成功しない人々を「君たちは努力していないから成功していないのだ」という形で捉えてしまうために、貧しい境遇にある人々にたいして冷遇的な態度を見せてしまうのです。このため、格差ができても仕方がないという、格差容認論につながりやすい事態を招きます。

 

 

しかし、実際は格差が世代によって固定されつつあることをこの本では提示しています。すなわち、親が裕福であれば、そこに生まれた子供も裕福になりやすい、という現象です。ここに、実態と認識のギャップが発生しています。これの何が問題かというと、こうした社会的問題を解決しようと働きかけたとしても、賛同を得難いということにつながります。これにより、貧富の差がますます固定化され、拡大してしまう可能性を秘めているのです。

 

他の社会と比べれば、まだまだ貧富の差がそこまで開いてはいないのが日本社会ですが、今の状態が続けばどんどん広がってしまうのではないか、そんな心配をしてしまう一冊です。

 

では、では