向谷匡史『田中角栄 相手の心をつかむ「人たらし」金銭哲学』〜読書リレー(92)〜

 数年前まで、日本を引っ張るリーダーが不在だとして、過去の偉人に学ぼうとする機運が高まっていました。その中でも特に注目されていたのが、田中角栄元首相だと思います。

田中角栄 相手の心をつかむ「人たらし」金銭哲学

田中角栄 相手の心をつかむ「人たらし」金銭哲学

 

 

金権政治と揶揄され、最終的にはロッキード事件で退陣することとなった田中角栄氏ですが、そのリーダーシップの強さたるや歴代の首相の中でも際立っており、数年前のリーダー待望論と相まって注目を浴びていました。この本では、特に田中角栄氏の金銭面に着目し、 どのような金銭哲学を彼が持っていたのかを探るというような本です。

 

田中角栄氏は、金権政治と揶揄されるように金銭によって人を動かすことが多かったといいます。私もこの本を読んで初めて知ったのですが、反対派閥の政治家や若手など、ありとあらゆる点でうまく金を使っていることがわかります。本書では、そうした中においても、田中角栄氏なりに金銭を使う際の哲学を持っていた、というのが主な内容です。それらは、使える額は全く異なるとしても、私のような平凡サラリーマンにも活用できるような考え方が多く盛り込まれています。

 

この中で、田中角栄氏が一貫しているのが、相手の期待値をうまくコントロールし、金銭によって人を動かすためにはどうすればよいかを考え抜いた点にあります。金銭というものを渡す際、渡し方によってそれが生き金にもなれば死に金にもなる、といいます。時には意表を突き、相手の期待値を大きく上回るような与え方をする。また時には同じ額でも渡し方を変え、相手を満足させる、ということもしています。すなわち、相手の状況をうまく読み取り、最小限の額で最大限の効用を得る、という点にフォーカスしていたのです。

 

例えば、ある政治家が金銭で困っていたとして、田中角栄氏に借金を求めるとします。だいたい他人に借金を求める際には、借りたい一心で金額を少なくいう傾向があります。5万円必要なところを、「3万円でいいのです」という。田中角栄氏はそういった人の心理を見抜いているので、3万円でと言われても、あえて多めに出すのだという。受け取った側は大いに喜ぶことだろう。

 

また、蛇の生殺しをしない、即ちできないことははっきりとできないと言う、これも重要と言うのです。例えば上記の例で言えば、3万円と言われて、手元に準備可能な資金が1万しかないとする。この場合、すぐに「3万は難しい、そのかわり1万なら大丈夫だ。」とすぐに行動に打ちしたのだそうです。

 

かなりピンポイントに絞った本ですが、それなりにまとまっており、処世術の勉強になります。まあ私の場合にはお金そのものがないので、田中角栄氏のようなスタイルはできないのですが…笑

 

では、では