遠藤功『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』〜読書リレー(100)〜

日本のMBAのみならず、MBAとキャリアについて考えた本です。

 

 

経営コンサルティング会社ローランドベルガー元会長で、早稲田大学MBAプログラムの教授でもあった遠藤功氏。自身もMBA卒であるにもかかわらず、「日本人にMBAはいらない」というタイトルで本を出しています。

 

海外トップスクールと日本のMBAとは、大きく差が開いており、日本のMBAでキャリアを築くよりかは、実務経験をしっかり積む、特に「修羅場」を経験することが大事だ、というのがこの本の論旨です。

 

著者によると、海外初のMBAプログラムが日本で普及し始めたのは2000年代。2003年度に文部科学省によって創設された「専門職大学院制度」が一つのきっかけとなり、現在では約80の大学が、100もの大学院レベルのビジネス教育プログラムを開設しています。しかし一方で、プログラムの質については海外トップスクールと大きな差が開いている状況で、加えてそうした供給過多の状況の中で、定員割れによる学生の競争率が低くなっているといいます。こうしたプログラムから輩出される人材が、果たして日本のビジネスリーダー足りうるのか?という問題意識を、MBAプログラムで教鞭をとった立場から痛切に述べています。

 

この本で取り上げられている視点というのが、ミンツバーグのMBA批判本である「MBAが会社を滅ぼす」では、「アカデミックなビジネススクールで二年間過ごしただけなのに、マネジメント能力が身についたと思い込んでいる人たちが社会に送り出されて」いるために、マネジメントができないのに、マネジメントができると勘違いをしている(そして、周りもなんとなくそう認めてしまっている)というような人材が大量に出てしまっている、というのです。

 

そうした視点は、日本のMBAのみならず、海外のトップスクールでも度々指摘されているところです。あくまでもMBAはアカデミックな場所。しかしビジネスは実践するものであり、理論を構築するものではありません。知識を得たとしても、それを実践しない限りは全く役に立たない。そうした点をしっかりと理解しておかないと、MBAで学ぶ価値はなくなってしまう、というのが注意すべき点なのかなと思います。

 

もう一点、著者が述べているのが、「日本のMBAに日本のビジネスマンが大挙してしまうのが、日本のビジネスマンが学校に通う余裕があるほど、バリバリ働かされてもらっていない」という点です。30代半ばのやる気のある中堅社員たちに大きなチャレンジの場を与えられていない、というのです。大手企業が好調で、人手が不足しているというニュースが飛び交っていますが、確かに世界にインパクトを与えるような日本企業が多くなっているのかというと、疑問が残ります。「仕事で人は磨かれる」という点を考えると、そうした仕事が日本になくなってきているのではないか、というのがこの著者の言及から読み取ることができます。

 

いずれにしても、これからMBA留学する自分にとっては、身の引き締まる思いでこの本を読んでしまったのでした。

 

では、では