山崎文明『情報立国・日本の戦争 大国の暗闘、テロリストの陰謀』〜読書リレー(155)〜

 

改めて日本の情報管理の甘さに気付かされた本です。この本では、「新しい形態の戦争」として筆者が表現する「サイバー戦争」について、一般向けに簡単に紹介した本です。情報セキュリティという言葉が日本においてもかなり浸透してきましたが、この本を読むと、それでも日本の取り組みはまだまだ甘いのではないかなと思います。

 

サイバー犯罪・コンピューター犯罪の本質は、コンピューターが登場してきた1960年代以降全く変わっていないと著者は述べています。それは、「プログラムの中に自分にしか分からないロジックを組み込んで、悪事を働くこと」だというのです。これは、マルウエアによってデータを盗んだり、操作できなくなるようにしたりといったことが含まれています。そして著者は、日本人のセキュリティ意識が二十年間全く変わっていないと警鐘を鳴らしています。

 

まず著者が上げているのが、専門家の不在です。著者は、サイバーセキュリティー関連の国際会議に参加し、他国の政府高官や研究者たちと情報交換しているといいます。この方法が、最新のサイバーセキュリティの動向を知る上で一番確実で効率的だと言います。しかし国際レベルの重要会合で、著者は日本人にほとんど会ったことがないというのです。

 

このことは、サイバーのみならず、テロ対策についても言えると著者は述べています。例として、東京の地下鉄を取り上げていますが、ニューヨークやロンドンの地下鉄はテロ対策がしっかりと取られているのに対し、東京の地下鉄のテロ対策は、被害が拡大する恐れがあると指摘しています。例えばニューヨークの地下鉄では、毒物が地下鉄車両内で撒かれた場合、その車両をロックして毒物の被害の拡大を防ぐといいます。一方日本のマニュアルでは、その車両にいる人をたすけるべく、換気を積極的に行うと言います。実はこれは非常に危険なやり方で、被害を拡大することにつながりかねないと言います。また、日本の地下鉄は地下30mに作られたものも存在していて、そこで毒物が撒かれてしまった場合には甚大な被害が想定されています。そうしたテロ対策がないがしろにされて都市開発がされていってしまっていると著者は指摘しています。

 

こうした状況を解決していくには、やはり教育が必要だというのです。先ほどのサイバーセキュリティ関連の国際会議では、8〜16歳を対象としたサイバーセキュリティのセミナーがあり、そこではハッキングの教育が公然とおこなれていると言います。日本人の感覚からすると信じられないような内容なのですが、「どんなに 完璧 なセキュリティーシステムを構築しようとも、システムを構築した人の意図や仕組みを知ってしまえば、その安全は簡単に崩れ去る」ということをしっかりと理解することが何よりも重要だと言います。

 

 

 

日本では2020年から、プログラミングが義務教育の必修科目になりますが、サイバーセキュリティから見たリテラシーをしっかりと身につけていく必要があるのではないかと思ってしまいました。

 

では、では