「的」にまつわる、中国語と日本語の共通点

今日は日本人が中国語を勉強する上で重要な「的」について説明したいと思います。この「的」という言葉、中国語を知らない方でも少しは見聞きしたことがあるのではないでしょうか?
 
簡単に言えば、この「的」というのは、日本語で言うところの「〜の」という意味になります。例えば日本語でも、「私の家」という言葉がありますが、これを中国語に訳すと「我的家」になります。なんだかとても簡単そうですね。
 
また、この「的」という言葉は、一部例外を除き、この「〜の」という意味でしか使われません。日本語では、この言葉は「まと」という意味がありますが、中国語には「まと」という意味で使われることはありません。
 
ではなぜこの「的」という言葉を、数ある他の中国語のフレーズの中でも一番最初に、しかもこのタイミングで説明するのか。それにはきちんとわけがあります。というのも、この「的」という概念とその使われ方を知れば、日本語と中国語が似ているとますます思うようになるからです。え、どういうこと?と思われる方もいらっしゃると思いますので、ここで前の例文を用いて、的の使われ方について説明したいと思います。
 
广东省的经济规模已经超过了香港。快速成长的Tech产业是其中一个贡献。
 
この文章の中で、「的」という言葉は2つ使われています。一つ目が「广东省的经济规模」ですね。この文章の中に簡体字が含まれていますが、前回の記事で紹介したルールに基づいて解釈してみます。まず「广东省」ですが、广东だけだと推測が非常に難しいですが、これに省がつくことによって、中国のある省を表しているんだなと推測できます。ここから日本人に馴染みのある中国の地名で、广が使われているところといえば…?そう、広東省くらいしか思いつきませんよね。これで正解です。ということで広東省と置き換えます。次に、经济ですが、これは簡体字といえども、なんとなく「経済」と読むことができそうです。最後に规模。これも、規模と容易に推測ができますので、日本語の漢字に置き換えると、「広東省的経済規模」になります。ここで思い出していただきたいのが、的というのが「〜の」に置き換えられるというルールです。そうすると、この文章というのは、「広東省の経済規模」となります。そう、これで正しいんです。すなわち、これだけで中国語の日本語訳ができたということになります。
 
同様に快速成长的Tech产业も「快速成長のtech産業」とすることができます。この文章では「〜の」と訳すと少し日本語として違和感がありますが、伝わらなくもありません。
 
ここでこの「的」のすごさに気づいた方、さすがです。え、どういうこと?と思われた方、ご安心を。この「的」の破壊力を知ってもらうために、別の例をあげたいと思います。
 
かなり意図的ですが、以下の文章も中国語としてきちんと成立します。
 
 
この文章を読んでみてどう思われましたか?実はこの文章に、日本人にとってはとてもありがたい、中国語の文法上のある2つのルールが隠されています。こちらについてそれぞれ説明していきたいと思います。
 
一つ目は、「『的』という言葉の前には、名詞も動詞も形容詞も関係ない」という点です。つまり、どんな言葉が来ても、日本語的には「〜の」と置き換えてしまうことができる、ということなのです。先ほどの例でいうと広東省は名詞、成長は一応動詞的に使われています。
 
二つ目は、「修飾の順序が全く同じ」ということです。
 
日本語の場合、何かを修飾する際には、被修飾語の前に並びます。例えば、「向こうに座っている髪の長い若い女性」では、女性という被修飾語に、「向こうに座っている」「髪の長い」「若い」という三つの修飾語が前に並んでいます。実はこれと同じルールが中国語でも同じなのです。すなわち、「向こうに座っている」+「的」+「髪の長い」+「的」+「若い」+「的」+「女性」という形で、表現することができるのです。これは日本語話者にとってはとても役に立つのです。
 
なぜ役に立つのか?日本人が日本語の考えのままスムーズに言葉を表現できたり、中国語を日本語に置き換えたりすることができるからです。これが違うとどうなるか、英語で考えてみましょう。例えば先ほどの例で言えば、「向こうに座っている髪の長い若い女性」は、私の拙い英語能力によれば、「A young woman who is sitting over there and whose hair is long」になるかと思います。この例で言えば、被修飾語に対して、修飾語が前後するため、我々日本語ネイティブスピーカーからするとどうしても難しく聞こえてしまいます。大学受験を経験された方なら、こういった文章が日本語訳の問題として出題され、「何が修飾語か、何が主語か」なんて線を引きながらじっくり考えたこともあるかと思います。そうした作業が、中国語ではいらないのです。きちんとした表現で言えば、「日本語と同じ並びなので、難しく考えなくて良い」ということになります。
 
これら二つの「的」の特徴を踏まえるとどうでしょう?これは日本人にとってとても都合が良いのです。というのも、中国語のフレーズ(文章ではありません)も、日本語の脳を使って簡単にできるからです。上記の例でも、向こうに座っている髪の長い若い女性というのも、日本語の考えそのままに中国語の文章を作ることができます。
 
これは、文章の読解というよりかは、文章を作る、すなわち作文やスピーキングの際に活かすことができます。中国語を知らなくても、日本語の熟語を「的」でうまくつなぎ合わせることで、複雑なフレーズを作ることも不可能ではないのです。
 
では、では