中国語の単語は難しければ難しいほど日本語と同じ意味になる

今回は中国語の単語と熟語について。日本人から見た中国語の単語と熟語の特徴について説明したいと思います。

 

前回の記事で、中国語の漢字はほとんど日本語と同じと説明しました。これは簡体字も含めると、実に95%近くの漢字が同じということになります。 

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しかし、同じ漢字が使われているのは理解できたとして、意味はどうでしょうか?もちろん意味が違えば、たとえ同じ漢字を使っていたとしても全く意味がなくなるわけです。意味が違うのに日本語の考え方そのままに中国語を使ってしまうと、いらぬ誤解を与えてしまう事態が発生しかねません。

 

実際に、日本語と中国語で同じ漢字を使うにも関わらず意味が全く異なるものがいくつか存在します。これは特に、中国人が日本に旅行に来た時に必ずといっていいほど話題に上がります。中には違いがありすぎておもわず笑ってしまうものがいくつかあります。

 

以下に実例を紹介したいと思います。

 

①大丈夫 :no problemではなく、立派な男性という意味で使われます

②前年 :去年の意味ではなく、一昨年の意味で使われます

③合同 :中国語では、契約という意味になります

④放心 :心ここに在らずという意味ではなく、「安心する」という意味で使われます

 

このように、日常で使われる単語の中には中国語と日本語で意味が異なるものがあり、中国語学習者を困らせるものが多く含まれています。

 

しかし私はこうした事例があるのを認めつつも、それでも「日本語と中国語の単語はほとんど同じ」と主張したいです。そしてそれは、ビジネスなど難しい言葉を使えば使うほど同じであると言えます。

 

それはどういうことか、早速具体例を用いて説明したいと思います。以下は前回も掲載した文章です。

 

金融是国家重要的核心竞争力,是推动高质量发展的重要支撑,作为北京第一大产业,金融业不仅推动了北京经济持续平稳健康发展,也有力促进了北京的城市规划、建设和高质量管理。

 

この中で、中国語(簡体字を日本語版の漢字に戻したあと)と日本語の漢字の意味が全く同じになるのは、以下になります。

 

金融・国家・重要・核心・競争力・発展・重要・北京・大産業・金融業・北京・経済・持続・健康・発展・建設・管理

 

どうでしょう?かなりのフレーズで意味が同じという結果に驚かれる方も少なからず一らっしゃるのではないでしょうか。

 

そして、上記のいずれのワードも、抽象度の高い概念を表現する言葉の割合が増えていると思います。特に重要・発展なども、この単語だけではなかなか意味を判別しづらい、抽象度の高いワードとなっています。

 

では、なぜこうした抽象度の高ければ高いほど、日本語と中国語の言葉の意味が同じになってくるのでしょうか。それはその言葉が、ルーツを共有しているからです。しかもそれは、なんと日本にあるのです。

 

それはどういうことか、少し歴史の話をしたいと思います。日本が明治時代に入ったあと、「文明開花」「近代化」の大号令と共に、多くの日本人研究者が西洋の近代的概念を研究し、日本に紹介していきました。その際に、そうした近代的概念を漢字で表現していきました。例えば政治や経済、社会などといった言葉は、この時に作り出された言葉だと言われています。

 

そして、それが中国語でも使われるようになります。当時多くの中国人留学生が日本にいて、西洋の近代概念を日本から学ぼうとしていました。その際に中国人留学生が行ったのは、日本人が作ったいわゆる和製漢語といったものを、中国語でそのまま使用したのです。これが、ルーツを共有していると先ほど説明した所以です。

 

それゆえ、特に学問の分野で非常に多くの共通性が見られます。例えば、中国でトップと呼ばれる北京大学の学部の名前を見てみると、日本の大学と間違えてしまうくらいとても日本の学部の名前と似ています。

 

理学部                

数学科学学院     

物理学院            

化学与分子工程学院        

生命科学学院                   

城市与环境学院 

地球与空间科学学院             

心理与认知科学学院        

建筑与景观设计学院        

 

人文学部                    

中国语言文学系 

历史学系            

考古文博学院     

哲学系(宗教学系)                      

外国语学院         

艺术学院            

对外汉语教育学院         

歌剧研究院         

社会科学学部                   

国际关系学院     

法学院  

信息管理系         

社会学系                          

政府管理学院     

教育学院            

新闻与传播学院               

体育教研部         

新媒体研究院     

教育财政科学研究所        

经济与管理学部               

经济学院                

人口研究所         

国家发展研究院  

 

もちろん、中国留学生が輸入したのは漢字そのものですので、読み方は全く異なります。例えば社会という言葉は日本語で「shakai」ですが、中国語では、「shehui」となり、別の読み方がなされます。そしてこれらの漢字は、特に名詞で共通しているケースが多いようです。

 

これがわかると、面白いことができます。中国語を勉強していた私は、感じの読み方を少しずつマスターしていた時期なのですが、この事実を知ってからは単語をむやみやたらに覚えることをやめました。その代わり、難しい言葉を話す時には、日本語の単語をまず思い出し、それを漢字だけ中国語読みするということをしました。そうするとほとんどの場合で意味が通じるのです笑 これはまさに、前回の記事で紹介した「フランス人がフランス語の脳で英語をしゃべる」と同じことではないでしょうか。

 

ただしこの法則には一つ落とし穴があります。それは、日常に使われる単語であればあるほど似ていない比率が大きくなるのです。また動詞も少し異なる意味になるケースがありますので、そこは注意が必要です。

 

では、では