長田 貴仁『社長の値打ち~「難しい時代」にどうあるべきか~ 』〜読書リレー(70)〜

 70まできました。

社長の値打ち?「難しい時代」にどうあるべきか? (光文社新書)

社長の値打ち?「難しい時代」にどうあるべきか? (光文社新書)

 

 日本の企業の社長にフォーカスを当て、リーダーシップや社長像のあり方について、様々な視点で述べています。何か主義主張があるわけではなく、エッセイ形式で徒然なるままに書いています。様々な議論が含まれており、つまみ食いする形で読むことができます。

 

2007年に発売された本ですので、リーマンショックや製造業の相次ぐ不正などについてはピックアップされていません。そのせいなのか、10年前の視点がかえって新鮮に見えてきます。

 

面白いのが、台湾企業と、京都発の企業の類似点です。京都発というと、戦後様々な企業が成長を遂げてきました。今でいうテクノロジー系ベンチャーであり、オムロンや京セラだけでなく、村田製作所ローム島津製作所堀場製作所日本電産など、枚挙にいとまがありません。一方、台湾企業は、アメリカの大企業からのEMS(委託生産)を中心に成長を遂げました。SHARPを買収した富士康グループを始め、ASUSACER、HTCなどが挙げられます。

 

これらにどのような共通点があったのか。それは、市場環境です。日本も台湾も、戦後において大企業が大きなシェアを築いていました。そのシェアは、中小企業を寄せ付けないほど強大で、中小企業は輸出に活路を見出すしかなかったのです。このため、これらの中小企業が生き残っていくためにまず考えついたのが、輸出に向いた国際競争力のある製品をつくることでした。このため、こうした中小企業は、最初からグローバル市場で戦うことを志向した、「グローバル企業」だったのです。

 

また、大企業に負けないために、企業内のマインドも変えました。まずは、経営のスピードです。これら企業の特徴は、特に台湾企業がそうですが、早い意思決定です。例えば、SHARPを買収した際の富士康グループの行動のスピードの速さに、驚いた方も少なくないでしょう。また、もう一つが徹底的なコスト削減です。海外でシェアを獲得すべく、まずはコスト戦略をとったという点も共通しているといいます。

 

これはよく言われていることですが、日本の大企業は長寿で、新陳代謝がなかなか起きない、という議論があります。Forbes global 500にランクインする企業も、アメリカは数十年前とだいぶ様変わりした一方で、日本はほとんど変化がありません。それはひとえに、こうした中小企業・ベンチャーがなかなか成功しない、加えて、大企業の目的が、利益の拡大ではなく生存にシフトしている、という点が挙げられます。日本のベンチャーにおいても、最初からグローバル展開を志向するような企業というのは限られているのが現状です。

 

こうした現状に対し、日本はそういう社会なのだから仕方ない、という反論があります。しかし戦後の歴史を見れば、上述した京都発のベンチャーが成長を遂げていったという事実はあるわけです。大企業が残っていくことも悪くはありませんが、日本発のベンチャーが新陳代謝を促していくのも良いのではないか、と考えてしまいます。

 

では、では