INSEADがMaster in Managementを始めたってよ。

 昨日正式にアナウンスがされていますが、INSEADがこの度新しいプログラムとして、Master in Managementを始めたようです。詳細は下記WEB参照。

 

https://www.insead.edu/master-programmes/mim

 

ビジネススクール間で競争が激しくなる中で、他の欧州スクールがMIMプログラムを充実させているところに焦りもあったのでしょう。MIMを作ることでプログラムにおいても、INSEAD十八番の「多様性」を出したようです。

 

そもそもMIMとは何か。私自身もよくわかっていないのですがただ一つ言える違いとしては「年齢」でしょう。MIMは社会人経験も1~2年と少ない学生を対象にしています。こうすることによって、MBAが「過去のビジネス経験をベースに実務の観点で議論をする」というところにフォーカスするのに対し、MIMは「実務とは少し距離を置き、学術的な観点で議論を進める」という違いを生み出します。そして卒業後のキャリアにおいても、INSEADMBAは比較的、「従来のキャリアを変える」ためのトランジションの期間の位置付けが強いのに対し、MIMは「キャリアの良いスタートを図る」という位置付けが強いのではないかと考えています。

 

ただ、個人的にはこのMIMというプログラム、かなり中途半端になるんじゃないのではと危惧しています。理由としては、MIMとMBAのバリュープロポジションです。INSEAD(とくにMBA)が評価されているのは、何よりも①ダイバーシティ(国籍・キャンパス)、②米国MBAとの平均年齢の面でのマチュアさ、③(MBAのみ)1年制、です。Executiveはとくに①が、MBAは3つ全てがプラスに働いています。というのもMBAの例で見る限り、「キャリアを変えるためにMBAに行きたい」と考える人にとっては、INSEADは米国MBA以上に魅力的な価値を持っています。しかし、MIMの場合、①は、MIMを必要とするのが現状欧州の学生にとどまっており、他の地域での価値の訴求ができていないという点で活きません。②③は、そもそもMIMは卒業後すぐの学生を対象にしているため、また1年制を前提としているため、年齢・プログラム期間の面で差別化を図ることもできません。それどころか、INSEAD MBAの若い学生がMIMに流れ、年齢のダイバーシティを損なう恐れがあることも考えられます。すなわち、MIMはバリュープロポジションを下げる可能性すらあるのです。

 

また、キャンパスのキャパシティの問題もあります。INSEADは、フランスとシンガポールがメインのキャンパスで、そこにくわえサテライトオフィスの色合いが強いアブダビが続きます。キャンパスが複数あるのは良いのですが、現状のキャンパスの大きさを見る限り、MIMは完全にキャパオーバーな気がします。特にシンガポールキャンパスは深刻で、Exective MBAが始まった際にはほとんどの会議室が埋まり、MBAのリクルーティング活動に弊害が生じるのも目の当たりにしてきました。

 

また、INSEADはいずれのキャンパスにも寮がありません。条件は違えど土地に限りがあるフォンテーヌブローとシンガポールキャンパス近辺で、さらに学生を増やしたらどうなるのか、学生生活の不満が高まりそうです。

 

とネガティブな内容が続きましたが、悪いことばかりではありません。最終的にはINSEADにとってMIMはビジネススクールとしてのブランド向上につながると個人的には思いますし、アルムナイネットワークが増えるというのもメリットと言えます。また、何よりも感心したのが、欧米ビジネススクールの中でもトップの地位にありながらも、INSEADが常に価値向上のために考え、動いているという点です。まずはMIMの成功を願いたいです。

 

では、では

Silicon Valley Trek②〜シリコンバレーから見た日本〜

Silicon Valleyを一週間渡って見て、色々考えさせられたのが技術とビジネスの関係性です。前職が電機メーカーの営業ということもあり、テクノロジーやハードウエアといった分野に少なからず興味関心を持っていたのですが、今回のTrekでもそれに関連する産業を訪問したこともあり、色々と考えさせられました。

 

特に考えさせられたのが、シリコンバレーから見えて来た日本、特に日本のものづくりです。これもまた前回と同様逆説的ではありますが、最先端と呼ばれるものに触れ、それをベンチマークとしておくことで、今自分が携わっている(もしくはこれから携わるであろう)フィールドの問題点が浮き彫りになって来たような、そんな気がします。正直にいうと、「日本のものづくりってもう終わっているようなものだけど、工夫次第でなんとかなるんじゃないか」というものです。

 

Silicon Valley Trek中に起きたある出来事を紹介します。前回紹介した通り、我々はTrek期間中様々な会社を訪問しましたが、その中でも、シリコンバレーのロボット・スタートアップの企業を訪問しました。そこでは、日本でもよく見られるようになった接客用ロボットを製造・販売していました。小さな工場で、アジャイルとフレキシブルを売りにしており、日本の顧客を多く抱えていた、というのです。スタンフォードのPhDを中退したCTO曰く、「日本の顧客が口コミで我が社を紹介してくれているので、非常に助かっている」ということ。

 

ただ、この熱気とは裏腹に、技術面での素晴らしさをこの会社からはあまり感じませんでした。実際に工場ラインを見ましたが、正直なところとてもシリコンバレーの名に相応しいような最先端を扱っているとは言えません。3Dプリンタを用いてリーン生産を行なっていると豪語していましたが、扱っている3Dプリンタは比較的古いタイプのもので、そこまで生産性が高いとは思えません。また製品のデザインや性能についても、数多の深センのスタートアップを見て来た私からすると、ハードウエアの面でとてつもなく優位が築けているかというと、どうやらそうでもなさそう。なのに、日本企業はそうしたスタートアップからこぞって製品を購入している。彼らの会議室には、日本企業のロゴが掲載されており、「ここと取引をした」というのが堂々と掲げられていました。

 

私はCTOの次の言葉を聞いて、正直がっかりしてしまいました。「日本のお客さんの中には、我々がシリコンバレーにいるということだけで好意的に思ってくれるところもある。シリコンバレーがある種のブランドとして活きている。」

 

正直、このくらいの規模の技術力と開発力、生産能力を有した会社は、日本や中国に腐るほど存在しています。日本の大手企業においても、その気になればいくらでもこうしたラボのような場所は幾つでも作ることができる。優秀なエンジニアを雇い最新鋭の3Dプリンタでも用意すれば、いとも簡単に彼らを超えるようなスタートアップを作ることができます。それなのに、実際の日本の企業はそれをせず、こうしたスタートアップから製品を購入している。ここで私は、必ずしもこのスタートアップが悪いといっているわけではありません。彼らだって真っ当にビジネスをし、企業が必要とする製品を販売しているわけですから、それだけで社会的価値の高いことをしているわけです。問題の本質はそこではなく、日本企業の側にあります。

 

この企業を訪問後、これについてずっと考えていました。そこで出た結論は、「日本企業はやりたくてもこうしたことができない。だから、リーン生産や柔軟性を有したスタートアップを活用しているのではないか」という点です。ただ、この「できない」というのをさらにブレークダウンすると、技術的にできないのではなく、文化的・制度的にできないのです。大企業の中において、秩序を乱すようなスタートアップ的組織は毛嫌いされる。だからいくらケイパビリティもキャパシティも有したとしても、大企業の秩序の維持が優先され、スタートアップなどのリスクが高いものについては外部に委託する。そうした流れができているのではないか、ということです。

 

ここで感じるのは、日本企業に重大な「空洞化」が起きているのではないか、という懸念です。すなわち、比較的リスク性向の高い分野や、日本企業の既存の秩序を乱すようなグレーな分野においては、積極的に外部に委託がされる。アベノミクスによる円安によって、日本企業は軒並み好調が続いている一方で、賃上げをせずに内部留保はたまる一方ですので、潤沢な資金があります。その資金がどこに流れているかというと、内部ではなく、外部委託先なわけです。この傾向が続くと、いつの間にか日本企業の内部に何も残らなくなってしまうという状況に陥るかもしれないのです。

 

こうしたケースはすでに他でも見られます。例えばイノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセン教授は『イノベーション・オブ・ライフ』の中で、PCメーカーであるデルの事例を取り上げています。デルは価格競争の中でコスト削減を目的に、委託先である台湾メーカーのASUSに委託を進めていきました。しかしながら、委託の中で技術力や開発力を蓄えて来たASUSが自社ブランドでPCを販売し、デルはさらに窮地に陥った、というストーリーです。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
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この本では、著書のコンセプトから「人生あまり委託しないほうがいいよ」ということを述べているのですが、このデルのケースは、どうしても日本企業の未来につながるものがあるのではないかと感じざるを得ません。

 

 

では、では

Silicon Valley Trek①〜シリコンバレーのエコシステム〜

以前の記事でも紹介した通り、P4終了からP5開始までの一週間、アメリカはカリフォルニアベイエリア(サンフランシスコ〜サンノゼまでのエリア)にて、INSEADのElectiveであるSilicon Valley Trekに参加してきました。このTrekでは、一週間かけて、シリコンバレーの企業を訪問し、ゲストスピーカーとのディスカッションを通じてシリコンバレーのビジネスについての知見を深めることを目的にしています。

 

INSEADにおいて、我々学生が普段口にする「Trek」には大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、MBAプログラム即ち学校がオフィシャルに主催するTrekで、選択科目として履修することになり、参加すれば単位がもらえるというものです。内容としては、純粋な企業訪問のTrekもあれば、観光・企業訪問の双方を織り交ぜたTrekがあります。Class of July 2019では、シリコンバレーイスラエル・中国・インド・ドバイ等が開講されていました。二つ目は、INSEADのClubが主催するTrekで、「地域×セクター」という二つの切り口に基づき、それぞれのClubが企業訪問をセッティングするというものです。単位はとれませんが、特定の分野にフォーカスしたTrekになり、よって必然的に就活色が強くなりますので、その分野に興味のある学生にとっては非常に費用対効果の高いTrekになっています。私が把握しているもので、「ロンドン×金融」「アムステルダム×起業」「香港×PEVC」「ジャカルタ×テック」などが企画されており、私もこれらいくつかのTrekに参加しました。そして最後に、学生の有志が主催するTrekがあります。これはある国の出身の学生が、その国の文化を知ってもらおうと主催するものです。企業訪問よりも文化体験の方が色濃くなるのがこのTrekの特徴で、我々の代では、日本のほかレバノンイスラエル・ブラジル等が企画されています。

 

そうした数あるTrekの中でも、このSilicon Valley Trekは非常に人気があり、25名の参加枠に対して多くの学生が応募します。学生はBidding pointという、選択科目・キャンパス選択に使われるために各学生に均等に配布されたポイントを使い、このTrekにポイントを投票することによってTrek参加の意向を表明します。そして、投票したポイントの多い学生から順番に枠が割り当てられます。私はこのTrekにどうしても行きたかったので、かなりのポイントをつぎ込みました笑

 

ではどうして個人的にそんなにも行きたかったのか。理由としては以下三つがあります。

アメリカの理解

恥ずかしい話、私は仕事・プライベート含めアメリカに行ったことがありません。中国語ができるということにかまけてアジアの探究を急ぐあまり、人生の中でアメリカに行くタイミングを完全に失ってしまったというのがあります。このため、このTrekによってアメリカの食わず嫌いを克服したい、そんな思いがありました。

 

②テック総本家のシリコンバレーについての知見を深めたい

私はテクノロジー(ハードウエア・ソフトウエア双方)に興味を持っていたので、シリコンバレーは避けては通れません。多くのテック企業が本社を構えるシリコンバレーでは、日々イノベーションが起きていると聞いていましたが、果たして本当にそうなのか?この目で確かめて見たい、という想いがありました。

 

深センとの比較

少し逆説的にはなりますが、このTrekを通じてアジアの可能性について探って見たいというものがありました。私は仕事柄、「ハードウエアのシリコンバレー」と呼ばれた深センに訪問し、そのダイナミズムを肌で感じてきました。そうした中で、口々にベンチマークとして取り沙汰されるのが「シリコンバレー」でした。では深センはどうシリコンバレーと違うのか、アジアはどういう特色を持っているのか、シリコンバレーを通じて映し鏡のように見て見たい、というモチベーションがありました。

 

そうして応募したTrekですが、総じて満足度の高い一週間でした。というのも、ゲストスピーカー・訪問企業の質が良かったからです。一例を挙げると以下の企業を訪問しました。

 

テック企業:LinkedIn、Wework、Square等

スタートアップ:Ycombinatorからも出資を受けたスタートアップや、シリアルアントレプレナー

PEVC:Y-Combinator、CVC等

その他:エッセイスト、エンジェル投資家、等

 

様々なバックグラウンドからなるゲストスピーカーを通じ、短期間でシリコンバレーの全体像を把握できたのは非常に有益だったと思います。

 

そうした中で感じたのが、エコシステムの重要性です。シリコンバレーのエコシステムの特徴を挙げるとすれば、大きく以下の二点に集約されると思います。

 

①PEVCの存在

ゲストスピーカーが口を揃えて言っていたのが、「シリコンバレーは持続可能である」ということ、そしてその理由として「PEVCの存在」をあげていました。すなわち、世界中からお金が集まり、熱意を持った起業家がファンディングのために集まる場所としてシリコンバレーが機能している。このため、テクノロジーが進化して言っても、場所としてのシリコンバレーが消えるわけではない、ということを豪語していました。

 

この説明に正当性を感じるのが、今のスタートアップの特徴です。現在のスタートアップの特徴は、ほとんどがローカル市場にフォーカスしています。というのも、ソフトウエア・アプリを使って解決するのは、結局のところローカル市場のある意味アナログな部分であり、目に見える製品のような、グローバル市場共通で価値が認められるものというのは少ないように見受けられます。このため、どうしても昨今のスタートアップはローカル市場にフォーカスせざるを得ません。それでも、シリコンバレーが活気に満ちているのはなぜかというと、そうしたローカル市場にフォーカスしているスタートアップでさえも、出資のチャンスを求めてシリコンバレーに集まってくるからです。このため、お金があるところに起業家が集まり、起業家同士で切磋琢磨する、ある種の道場のような機能をシリコンバレーが有しているような気がします。

 

②大学の存在

二点目にあげていたのが、大学の存在です。シリコンバレーには、アメリカでも有数のトップ校が存在しています。具体的には、スタンフォード大学・UCバークレーなどがあげられます。彼らがシリコンバレーのエコシステムを維持していると言えます。

 

一つ目に、人材プールとしての機能があげられます。アメリカ全国から、ひいては世界中から、優秀な学生がここに集まってくる。そして彼らの卒業後の進路は、大抵ベイエリアになるといいます。このため、ベイエリアの企業は比較的外国人が多く、加えて若さを感じます。サンフランシスコは現在オフィスビルが並ぶ開発著しい都市になっていますが、私が街を歩いていて驚いたのが、先進国では珍しいほど街中を歩く人が若い、ということです。特にビジネスマンの年齢が比較的若いように見受けられました。これは、こうした大学から、コンスタントに若い人材が供給されていることの証左なのかもしれません。

 

二つ目に、ネットワーキングとしての機能があげられます。彼らは大学で繋がりを有しているので、強固なネットワーキングを有しています。このため、異なるバックグラウンド同士の交流が進みやすい、という特徴もあるのかもしれません。

 

ではここまで考察を深めた上で、一つの疑問が上がってきます。それは、「シリコンバレーは複製可能か?」というものです。現在、ベルリンや深センなど、多くの都市がシリコンバレーを模倣しようと躍起になっていますが、果たしてこれは実現可能な旅路なのか?この質問をゲストスピーカーにぶつけて見たところ、ほとんどが「シリコンバレーは複製できない」という答えでした。理由としては、上記のエコシステムはシリコンバレーに特有であり、他のエリアでは模倣はできても優位性は出せない、ということでした。

 

しかし果たして本当なのか、私はTrekが終わった現在においても疑念を持っています。深センも現在中国の多くのマネーが流入し、破竹の勢いで投資規模が増加しています。また人材においても、深セン近辺に世界クラスの大学は香港くらいしかありませんが、とにかく若い人材がどんどん深セン流入している現在の状況を見る限り、シリコンバレーと同様の状況になっていると言えなくもありません。もしかすると数十年後には、深センがアジアのスタートアップの総本家となる可能性もゼロではないと思っています。

 

(続く)

欧米のビジネススクールの違い

先日学校にて、Exchange Programを利用してP4をWharton MBAで過ごした学生とランチをしました。中国出身の彼女は、アメリカでもキャリアを考えていたことから、2ヶ月でも良いのでアメリカで過ごして見たい、という気持ちが強かったようで、INSEADでもフランスキャンパスにはいかず、シンガポールアメリカでカリキュラムを終えるといいます。

 

あくまでその学生からの伝聞にはなりますが、少しINSEADアメリカのビジネススクール(いや、Whartonというべきか)の違いについて面白い洞察がありましたので、以下まとめたいと思います。

 

①学校の規模

欧州のビジネススクールは学部がないものが多いのですが、アメリカのビジネススクールは大学と連携しているため、とにかくスケール感が違うそうです。学生の規模もとにかく多い。1年間に1000人近くいれば、そうなってしまうのも仕方ないのかもしれません。

 

また、授業においてもスケールが違うようです。INSEADだと、選択科目だと少ない時で20名前後の授業が開講されており、少し規模の多いゼミのような授業もあったのですが、Whartonは規模の多い授業が多く、「教授がはるかかなたに見える」距離感だったそうです。というのも、Whartonではビジネススクール生に加え、学部生もビジネススクールの授業を履修できるようなシステムになっているため、必然的に一授業あたりの人数が多かったといいます。

 

②ネットワーキング

その規模感から出てくるのが、ネットワーキングの違いです。Whartonは、学生の数が多すぎて、逆に友人を作ることが難しかったと、その学生が振り返っています。そりゃあ、授業でも大人数だったら、学生間の交流を作り出すことは難しいのかもしれません。その代わりネットワーキングの場所として機能しているのがClub活動だと言います。同じ興味関心を持つ学生が運営するClubが交流の場となり、学生のネットワーキングの場所になっているようです。

 

一方でINSEADにおいては、メインでフランスとシンガポールという二つのキャンパスに学生が分かれます。(Class of July だとアブダビも候補に含まれます)このため、一つのCohortで500人近くの学生がいると言っても、瞬間的に一つのキャンパスにいるのが200-300名程度になります。加えて、INSEAD名物(?)でほぼ毎日何かしらのイベントが行われるため、Clubに頼らなくてもネットワーキングができるというのが特徴です。その代わり、Club活動が弱いのがINSEADの特徴とも言えるのかもしれません。というのも、Club活動にコミットできる期間は4〜6ヶ月となっており、非常に短い。Clubに参加して、「あれもこれもやって見たい」と考えていたらいつの間にか就活シーズンに突入して終了、ということもあったようです。

 

 

③学生のバックグラウンド

また、彼女は学生のバックグラウンドについても面白いことを言っていました。Whartonはファイナンススクールと呼ばれている通り、金融関連のバックグラウンドを持つ学生の比率がとても多いというのです。これはコンサルを中心に比較的満遍なく学生のプロファイルがばらけているINSEADとは違う印象を受けます。そして就職活動も、INSEADが(ほぼ全員)コンサルを受けるのと同じように、Whartonではほぼ全員が金融関連のキャリアを目指すようです。やはりここは各スクールのカラーが出ていると言えるのかもしれません。

 

以上簡単にまとめましたが、わかってくるのは、一口にビジネススクールと言っても、それぞれのカルチャーやカラーが全く異なるという点です。知名度やブランドにとらわれず、自分のキャリアや考え方にfitするビジネススクールを選ぶべきだ、と出願時によく言われましたが、あながち間違いではないようです。

 

では、では

P5スタート。学生生活も残りあと2ヶ月

 遅ればせながら、先週INSEAD生活最後のピリオドとなるP5がスタートしました。

 

P4同様P5は全て選択科目によって占められております。ただP4と異なるのが、要求される選択科目の数。P4は推奨4コマだったのに対し、P5はさらに少なくなって3コマとなっています。まだ就職活動を行っている学生もいるのですが、私のように就職活動を終了した学生や、社費できている学生については他にすることもなく、授業の間の空き時間を見つけてはひたすら旅行に行くという期間になっています。確かに、MBA学生は学費で相当な出費をしたものの、「時間もあってお金もある」典型的な良い状態ですので、これを機に様々な場所に行くのはある種自然なのかもしれません。私もその流れにもれず、様々な旅行の計画を立てているような状況です。

 

残り短い学生期間ですが、なるべく更新していきたいと思います。

 

では、では

P4終了 〜INSEADとコンサルの蜜月関係を考えてみる〜

3月に始まったP4も、早いもので4月末に終了いたしました。P4からはコア科目はなくなり、完全に選択科目になりました。P4から授業が少なくなり、私は結局3.5コマの授業を履修しました。ただ、このうち0.5コマはブレイク間に行われるトレック(世界のある地域を訪問し、そこでの企業を訪問したりゲストスピーカーの講演をしたりするというイベント)を履修したので、実質的には3.0コマという、他のピリオドと比べても半分以下の授業となりました。

 

ちなみに私が履修した科目は以下の通り。自分の興味に赴くままに授業を履修したら全く統一感がなくなってしまいました笑。

 

・Private Equity

外側からはよくわからないPrivate Equityについて、多方面から議論を行うという授業。毎回の授業でゲストスピーカーがきて、ケースに基づいた議論をするというもの。

 

・Competitive Supply Chain

サプライチェーンというと資材調達を思い浮かべますが、この授業では資材調達にのみならず業務改善全般について議論しました。

 

・Blue Ocean Strategy

INSEADでおなじみのブルー・オーシャン戦略。これについてケースやシミュレーションを用いながら議論を進めていくという授業。授業の中では、著者のチャン・キム氏が講演する機会があり、INSEADのユニークな授業と言えると思います。

 

・Building Business in Silicon Valley

所謂トレックです。一週間かけて、シリコンバレーおよびその周辺の企業を訪問するというイベント。詳細については後日詳述します。

 

この少ない授業の間で何をしていたかというと、就職活動です。INSEADではコンサルを中心にこのピリオドから就職活動が解禁します。異なる企業が毎日キャンパスを訪れ、説明会を行ったりコーヒーチャットを行ったり、またはインタビュー(これもキャンパスで行います)を行ったりしています。このため社費の学生・起業家を除いたほぼ全ての学生が、イベントのたびにリクルーティングスーツに身をまとい、こうしたイベントに出席していきます。コンサル志望の私もこれら人々の一部になり、就職活動を行っていきました。

 

この観点で言うと、P4は違った意味でピリピリしていた時期だったかなと思います。ほとんどの学生が私と同様ほぼ授業がないのですが、Break Out Room(学習室)に行けばケース練習(コンサル面接で課される、実際のビジネスを模し議論をすると言うもの)を行う学生で埋め尽くされます。また、良くも悪くも情報が共有され、「あいつは〇〇の一次受かったみたいだ」「あの地域は書類で相当落とされたみたいだ」といった情報が飛び交います。コンサルの中でも特にMBB(McKinsey、BCG、Bain)はほとんど全ての学生が出願し、かつそのプロセスがはっきりしていることもあり、かなりの情報が飛び交っていた印象を持ちます。私はその渦中にいたのであまり実感がわきませんでしたが、どうやらコンサル志望でない学生や社費生には、この雰囲気が非常に息苦しく感じられたようです。

 

このピリオドを通じて感じたのは、INSEADとくにMBAは良くも悪くも「コンサルスクール」としてこれからもそのポジションを維持していくだろう、と言うことです。というのも、需要側(コンサル)にしても供給(学生)にしても、これほどまでにないほどの条件が揃っているからです。

 

まず需要側。MBBを中心とした戦略コンサルファームは世界各地にオフィスを有しています。このため、INSEADのように様々な国籍から学生を集めている学校は、採用活動をする上で非常に効率が良いのです。本来であれば、各オフィスがイベントを開き、社員等を動員して学生の対応をしなければならないのですが、INSEADでは一括で社員を送り込みさえすれば、各オフィスを志望する学生にリーチできる、と言う利点があります。説明会のみならず、応募やインタビューに至るまで全てのプロセスを一本化することで、これまた採用にかかるコストを抑えることができます。そして、多様性を謳うINSEADだけあって職務でもバラバラの経験を持つ学生が集められてきています。これは、各業界・プラクティスで細分化・専門化が求められてきているコンサル各社にとって、それぞれの分野にフィットするバックグラウンドを持つ候補者を探すことが限りなく簡単になります。

 

次に供給面について。コンサルスクールと称されるだけあってまずかなりの割合の学生がコンサルを志望していると言うところが一つ挙げられます。次に、これら学生によって作り上げられたプラットフォームがあります。具体的には、学生同士でのケース練習はそれこそ頻繁に行われており、相手を探すことに苦労しません。時間が許せば1日4回ケースを行うことも不可能ではないと言う環境は、非常に恵まれているのかもしれません。さらには、戦コン出身者の学生も非常に親切で、こうしたコンサル志望の学生を積極的にサポートしてくれます。これら環境は、INSEAD外ではなかなか作り出すことができないかと思います。

 

ただし供給側については、ピリピリした雰囲気になるので、注意が必要です。と言うのも学生同士切磋琢磨するのはいいのですが、忌憚なきフィードバックの応酬になるのでメンタル面でタフさが必要になります笑 加えて、ピアプレッシャーが半端ではなく、コンサル志望者でない学生も、「コンサルにいくべきなのでは?」という考えが芽生えてしまいます。事実、もともとコンサルを考えていなかった学生が物は試しと応募するケースがみられました。

 

いずれにしても、こうした需給のベストバランスはなかなか崩せるものではなく、今後もINSEADはコンサルスクールとしてのブランドを維持していくのでしょう。内部でそれを大きく感じたピリオドでした。

 

では、では

 

 

 

 

 

景気とMBAの関係性からビジネススクールのビジネスモデルを考えてみる

今日Yahooニュースを見ていると、こんなトピックがありました。

news.yahoo.co.jp

 

なにせ先週金曜日のアメリカの市場の影響を受け、日経平均株価も一気に650円下がっているわけですから、「一体何が起きてるんだ?」と気にならなくもなりません。そこでYahooのトピックに挙げられていたのが、イールドカーブという話。

 

イールドカーブ、P1のコア科目でもP3のマクロ経済学での試験でも出てきたトピックで、個人的にはとても馴染み深く思えました笑 イールドカーブとは長短期の金利をつないで描く利回りの曲線と表現できますが、この傾きがマイナスになっている、すなわち短期の金利より長期の金利の方が小さい、という現象が発生しているといいます。

 

これは一般的には景気後退の予兆とされ、実際下記イールドカーブの傾きの推移を表したグラフから見て取れるように、逆イールドカーブは2000年代前半のドットコムバブルと2008年のリーマンショックの前にそれぞれ発生しており、次の景気後退の予兆を示しているものなのかもしれません。

Yield Curve --GuruFocus.com

 

個人的には、このイールドカーブの話は聞いていてメカニズムはわかるのですが、だからと言って景気後退を説明する因果関係にはなっていないのかなとも思ってしまいます。一定の相関関係はありそうですが、イールドカーブが発生したから景気が確実に後退する、とはっきりとした因果関係は成立しないのではないか、と思ってしまいます。とは言いながらも、結局のところ景気はどうしても浮き沈みがあるので(この辺りの話について、サプライチェーンマネジメントの授業で面白い洞察をもらったのでまた次の機会に考察したいと思いますが)、今の好景気は必ず終わりが来るものだと思っておくべきかとおもいます。何より歴史が証明しているので。

 

では、景気が悪くなるとMBAにどのように影響が及ぶのか、ちょっと考えて見たいと思います。

 

よく言われていることとしては景気とMBAは負の相関関係にあると言われます。すなわち、景気が悪いとMBAへのアプリカントが増え、景気が良いとMBAを志す学生が減る、というものです。

 

このトピックで色々調べて見たら、同様にブログで同じようなこと考えていた人がいました笑 しかもINSEAD卒業生笑

blog.ladolcevita.jp

時は2008年、リーマンショック真っ只中の記事で、同じく景気とMBAの相関関係について考察したものです。当時は今とは異なり、MBAを志す学生が多かったようです。

 

一方で現在はどうなのかというと、アメリカのMBAプログラムを志す学生が、年々現象傾向にあるとのこと。

www.cnbc.com

ただし、10年前と異なるのが、MBAプログラム自体の多角化(ヨーロッパ・アジア)があります。このため、一概に「景気が良いからMBAアプリカントが減っている」とも言い切れないのかもしれません。ただ一つの仮説として、「負の相関関係はありそうだ」と言えなくもなさそうです。

 

ではなぜこんなことになるのかというと、MBAはキャリアを変えたり、キャリアを中断したりと、「分岐点」で考える学生の方が大多数を占めています。このため、景気が良い時には、「景気が良く仕事が好調なので、MBAに行かずこのままキャリアを進めたい」と考える人が多い一方、景気が悪い時には、「景気が悪く仕事がないので、とりあえずMBAで勉強して次のキャリアに備える」と考える人が多くなる、というのが一般的に言われている説明になるかと思います。

 

ということで、非常に景気変動を受けやすいMBAですが、ビジネススクールはどうやってリスクを分散しているのか。ある教授が授業の余談としてこのトピックで話をしていましたが、彼曰く、これに対する回答は、プログラムの多角化だそうです。すなわちEMBA。EMBAは企業派遣が圧倒的で、景気が好調の時に需要が増えるようです(好調なので、教育投資にかけられる剰余金が増える→多くのアプリカントが押し寄せる)。このため、景気変動とは正の相関関係にあるのだとか。これによって、MBAプログラムの需要変動とうまく相殺し合っているというのです。

 

いずれにしても、競争が激しいアメリカや中国はともかく、日本からのアプリカントはあまり景気との関係性は薄いのかもしれません笑

 

では、では