だじりブログ

日々の読書から広がる考察

シンガポールキャンパスとフランスキャンパスの違い

卒業も近くなり色々と書き残すことがないように、ギアを上げている今日この頃。今日はINSEADの特徴でもあるキャンパスの違いについて紹介したいと思います。

 

INSEADには現在フォンテーヌブロー(フランス)・シンガポールアブダビキャンパスの三つキャンパスがあります。MBA生の場合、入学をフランスかシンガポールかで選択をすることができ、アブダビはClass of Julyの場合、P3の1ピリオドのみ選択することが可能です。

 

一口に同じ学校といっても、キャンパスが異なるだけで学校生活やネットワーキングにも大きな違いが見られるような気がします。以下それぞれの違いについてまとめて見ました。

 

①授業

そうです。シンガポールとフランスにおいて、授業が異なります。同じMBAプログラムなのにそんなことがあっていいのか、と思わず言いたくなりますが、キャンパスによってコア科目・選択科目が若干異なってきます。

 

まずコア科目から。こちらについては、科目自体は変わりません。フランスにいてもシンガポールにいても基本的に履修しなければならないコースは同じ。科目の評価方法もスケジュールも同じです。

 

では何が違うのか。科目の内容にあります。というのも、同じ科目でもそれを教える教授が変わります。そしてその教授が提供するケースも、教授の好みによって若干変わります。そしてこの教授の違いというのが、学生のその科目に対する評価自体を変えてしまうから不思議です。

 

まあ、同じキャンパスにいても教授が異なるケースもあるわけで、この内容の違いをキャンパスの違いに帰結するのもどうかと思いますが、オフィシャルには「同じ科目だ」といっている中で、こうした違いがあることには注意する必要があるのかもしれません。

 

次に選択科目について。こちらについては、内容もさることながら、開講されている科目自体も異なります。例えばシンガポールキャンパスだと、アジアにフォーカスした科目が開講されています。例えば私が履修した「Strategies for Asia Pacific」はシンガポールキャンパスのみでの開講となっています(個人的にはこの授業は非常に良かった)。一方フランスにおいては、EUなどに関連する授業が開講されていると言います。

 

 

②ネットワーキング

個人的にはやはり最大の違いといえばここでしょうか。キャンパスがそれぞれフランスとシンガポールにあるので、学校に訪れるゲストスピーカーや卒業生についても、地理的な偏りが見られます。シンガポールにおいては、東南アジアを中心としたネットワークに容易にアクセスできますし、一方でフランスにおいてはヨーロッパ全体のネットワークにアクセス可能です。

 

③学生生活

最後に学生生活。フランスとシンガポールはキャンパスのロケーションと地域の違いにより、学生生活も異なります。フランスにおいては、キャンパスがフォンテーヌブローというパリ近郊の「田舎」ですので、大体が学校近辺にすみ、夜になるとワインを片手にネットワーキングと言う名のパーティが繰り広げられます。

 

一方でシンガポールキャンパスはと言うと、アジアの都市のほぼ真ん中に位置します。それゆえ、住む場所もまだらで、学校が終わると大体近隣のレストランに集まるか、離散するかになります。シンガポールはいい意味でも悪い意味でもドライな学生生活になっているような印象です。

 

同じ学校といえども、キャンパスによって違いがあるので、INSEADを志望される方はキャンパスの選択も注意された方が良いかと思います。

 

では、では

INSEAD学生の卒業後の進路について

5月も末になり、残すところMBA生活もあと1ヶ月近くとなりました。Intensiveなプログラムということもあって本当に充実した日々を過ごしていますが、それがあと少しともなると少しずつ感慨深くなってきています。

 

このP5という期間はとても特殊です。というのも、学生によってこの2ヶ月の使い方が全く異なるからです。就職活動を終えた学生は、この期間を旅行期間として活用し、様々なところに繰り出しています。クラスメートの中には、P5でとる授業をピリオドの前半に固め、残り1ヶ月をひたすら旅行に当てるというツワモノもいます。シンガポールキャンパスに在籍しているはずなのに、授業の合間の2週間にフォンテーヌブローに滞在する、なんていう学生もいます。

 

また、引き続き就職活動を行う学生も見受けられます。コンサル・金融以外の企業を第一優先に考えている学生にとっては、企業側もP4・P5関係なく独自に採用活動を行なっているので、それらに合わせじっくりと面接をするという学生もいます。

 

こうした中で、学生の就職活動の模様が少し面白いなと思ったのでここにまとめたいと思います。面白いのが、多様性を謳うINSEADの中においても、国籍やバックグラウンドに基づき卒業後の進路にパターンが見受けられることです。大きく分けて、学生の卒業後の進路については、①戦略コンサルティング、②金融、③テック・事業会社系、④起業・その他の大きく4つにまとめられます。④はベット紹介するとして、ここでは①②③について以下順を追って説明したいと思います。

 

①戦略コンサルティング

INSEADが「コンサルスクール」と称されるだけあって、戦略コンサルティングを卒業後の進路として考える学生は非常に多いです。INSEADの公式情報においても、卒業生のおよそ4割がコンサルティング業界に進み、また3割がMBB(McKinsey、BCG、Bainの頭文字をとったもの)にいくというので驚きです(社費生含む)。そのためか、MBBにおいてINSEADは最大の採用数を誇っており、例えばMcKinseyはグローバルで見るとINSEAD卒のコンサルタントが、他のビジネススクール卒のコンサルタントを差し置いて一番多いといいます。ダイバーシティを謳うINSEADですが、卒業後の進路までは流石にダイバーシティではないようです笑

 

余談にはなりますが、なぜMBBを中心とした戦略コンサルファームがINSEADからここまでの数を採用できるのかというと、それはやはり学生の多様性、特に欧州を中心とした多様性にあるのではないかと考えています。MBBのいずれもアメリカ企業ですので、アメリカ国内のオフィスは基本的に米ビジネススクールの卒業生から採用を積極的に行なっているといいます。ただ、たとえ世界一位の経済規模を持つといっても、一国にフォーカスしてしまっては採用数が限られてしまいます。一方でINSEADアメリカでの採用は少ないものの、キャンパスのあるヨーロッパやアジアでの採用が多いような印象です。戦略コンサルといっても今はグローバルファームですので、世界中にオフィスがある。そうしたオフィス、特に発展著しい地域においては、自然と採用も増える。そうしたアメリカ以外の需要増を、INSEADがうまく取り込んでいるのではないか、そう考えることができます。

 

閑話休題。これだけ採用数が多いので、採用プロセスも非常に整ったものになります。まず、P3に各社コーヒーチャットやケース面接対策セミナーなど、ありとあらゆるイベントを行い学生取り込みを行います。そのあと、P4の初めに会社説明会があります。そこで正式なキックオフとなります。会社説明会ののち学生は履歴書とカバーレターを提出し書類選考に臨みます。書類選考に通った学生は、学校で行われる一次面接に臨み、それに合格すると、今度は各オフィスによる二次面接、最終面接と続きます。このプロセスが、3月末〜4月末に終わるように、スケジュールがしっかりと整っています。すなわち、コンサル志望の学生は、このプロセスにある程度乗っかることで、効率的に選考を進めていくことができるわけです。「コンサルスクール」ならではの効率化ともいえるでしょう。

 

しかしながら、プロセスは一見すると非常に統一されていますが、それは「各地域の選考をまとめて一つに行なっている」だけにすぎませんので、やはり国・地域によって状況が異なります。各地域のオフィスには、現地言語が話せるかどうかを条件にするところが多いです。このため、英語が通じるシンガポール・ドバイ・ロンドン、そして中華圏内を除き、ほとんどの学生が自国のオフィスを志望します。例えば、日本の学生が日本オフィスを志望し、タイの学生がバンコクオフィスを志望します。これら「現地言語の制約がある」国々の学生にとっては、出身国のオフィスに申請すること自体がアドバンテージになりますし、逆に別の国で働くというのはよほどの理由がないと非常に難しく、自然と自国オフィスに回帰していきます。

 

また、選考の内実も各地域によって大きく異なります。というのも、いずれのコンサルファームも、各地域のオフィスが最終的な採用決定権を持っているのですが、当然各地域によって採用数や方針が同一企業においても変わってくるためです。例えば、日本やタイのオフィスを志望する学生(当然、ほとんどが日本人かタイ人)はほとんど全ての学生が書類選考をパスした一方で、あるファームの中国オフィスでは30人近くが申請して3人のみ書類選考をパスできたという非常に狭き門でした。そして、二次面接以降になってくると各オフィスでの面接になりますので、当然同国籍の学生が集まって情報共有を行います。こうなってくると、同じファームを受けてはいるものの、別の戦いをしているともいえるでしょう。

 

またオファーが出てからも、それぞれの国によってオファー受諾に対する考え方が大きく異なります。日本やタイなどは比較的シンプルで、オファーをもらったら基本的にそこにいく、という形です。一方で複雑なのは中華圏。特にシンガポール在住の中国人は中国国内のオフィスでオファーをもらうと、違う悩みに当たります。というのも、INSEADシンガポール在住の中国人は、自身もしくはパートナーがシンガポール政府から奨学金をもらってシンガポールに在住しているというケースが非常に多く、中国に帰ってしまうと多額の違約金を支払う必要があるそうです。

 

②金融系

コンサルスクールと称されるINSEADにおいても、投資銀行といった金融系のキャリアを志望する学生は少なからず存在します。こうした学生については、コンサルティングとは違った理由で「画一的なプロセス」が存在し、結果学生の特色も如実に現れてきます。

 

まず、金融系で特徴なのが、金融系のバックグラウンドを持つ学生しか志望しない、という点です。逆に、他のケースを聞いたことがありません。INSEADはキャリアチェンジの場をよくアピールしていますが、こと金融系のキャリアにおいてはそうはならないようです。

 

次に、ヨーロッパの学生は就職先としてロンドンが多いということです。これはINSEADがP1に、ロンドントレックと称して金融機関に学生を送り込むプログラムを実施しており、そこで学生がオファーをもらうというのが定石となっていることに起因します。現に、私のグループメートも、ある銀行のロンドン支店IB部門から早々にオファーをもらっていました。

 

それ以外の場所の選択肢となると、やはり自力で探すほかないようです。金融系を志望する学生が少ないということが起因しているのでしょうか、INSEADもロンドン以外の地域において強固なリソースを有しているわけでもなく、学生がそれぞれ独自に就職活動を進めている、といったような印象を受けます。例えば、私の友人の中国人は、学校のリソースを使わず自力でネットワーキングを行なっていました。

 

③テック・事業会社系

コンサルに次いで多いのが、このテック業界といえるでしょう。テック業界といっても定義は曖昧で、具体的な会社名で言えばGoogleAppleといった巨頭から、Agoda、Traveloka、Gojekといった新興テック、AmazonやShopeeといったEコマースやMicrosoftIntelといったハード系も含まれます。

 

また、これ以外にも事業会社にアプライする学生も一定数存在します。具体的にはSiemensSamsungDellNissanといった電機・機械・自動車系、ロレアルやグッチなどのRCLG(リテール・コンシューマ・ラグジュアリグッズの略称)他にもOil&GasやLogistics系など多種多様。

 

これらについて特徴的といえるのは以下の二つです。まずは学生について、テック業界に進む学生には、元戦コン出身者や異なるバックグラウンドを持つ学生が多いような印象を受ける一方で、事業会社系は、もともとそのバックグランドを有している学生がアプライする傾向にあるようです。テック企業については、戦コン出身者のExitとしてテック企業が魅力的なのに加え、働き方についても比較的フレキシブルな点なのが、彼らを魅了しているのかもしれません。一方で事業会社においては、各社MBA卒業生を対象にした「リーダーシッププログラム」を準備して、多様なキャリアプランを提供しているのですが、やはり基本的にそうしたプログラムに興味を持つのは、前職で類似した経験を持つ学生に絞られるようです。

 

二点目にあげられるのが、選考のプロセスについてです。各社採用学生数が1〜3名と、戦略コンサルティングファームと採用数が大きく異なるため、採用活動も各社ともバラバラ。期間も、書類選考からオファーまで4ヶ月以上かかる企業もあります。このため、これらを志望する学生の多くが、P5においても継続的に就職活動を行なっています。

 

事業会社やテックは、ロケーションを変えたい学生にとっては非常に魅力的な選択肢です。というのも、言語の制約が比較的緩やかで、企業側も人材の多様性を向上する目的なのか外国の学生を積極的に採用しているような気がします。MBA卒業後のキャリアでロケーションを変えるとなると、こうした企業が有効なオプションになると言えます。

 

では、では

INSEADがMaster in Managementを始めたってよ。

 昨日正式にアナウンスがされていますが、INSEADがこの度新しいプログラムとして、Master in Managementを始めたようです。詳細は下記WEB参照。

 

https://www.insead.edu/master-programmes/mim

 

ビジネススクール間で競争が激しくなる中で、他の欧州スクールがMIMプログラムを充実させているところに焦りもあったのでしょう。MIMを作ることでプログラムにおいても、INSEAD十八番の「多様性」を出したようです。

 

そもそもMIMとは何か。私自身もよくわかっていないのですがただ一つ言える違いとしては「年齢」でしょう。MIMは社会人経験も1~2年と少ない学生を対象にしています。こうすることによって、MBAが「過去のビジネス経験をベースに実務の観点で議論をする」というところにフォーカスするのに対し、MIMは「実務とは少し距離を置き、学術的な観点で議論を進める」という違いを生み出します。そして卒業後のキャリアにおいても、INSEADMBAは比較的、「従来のキャリアを変える」ためのトランジションの期間の位置付けが強いのに対し、MIMは「キャリアの良いスタートを図る」という位置付けが強いのではないかと考えています。

 

ただ、個人的にはこのMIMというプログラム、かなり中途半端になるんじゃないのではと危惧しています。理由としては、MIMとMBAのバリュープロポジションです。INSEAD(とくにMBA)が評価されているのは、何よりも①ダイバーシティ(国籍・キャンパス)、②米国MBAとの平均年齢の面でのマチュアさ、③(MBAのみ)1年制、です。Executiveはとくに①が、MBAは3つ全てがプラスに働いています。というのもMBAの例で見る限り、「キャリアを変えるためにMBAに行きたい」と考える人にとっては、INSEADは米国MBA以上に魅力的な価値を持っています。しかし、MIMの場合、①は、MIMを必要とするのが現状欧州の学生にとどまっており、他の地域での価値の訴求ができていないという点で活きません。②③は、そもそもMIMは卒業後すぐの学生を対象にしているため、また1年制を前提としているため、年齢・プログラム期間の面で差別化を図ることもできません。それどころか、INSEAD MBAの若い学生がMIMに流れ、年齢のダイバーシティを損なう恐れがあることも考えられます。すなわち、MIMはバリュープロポジションを下げる可能性すらあるのです。

 

また、キャンパスのキャパシティの問題もあります。INSEADは、フランスとシンガポールがメインのキャンパスで、そこにくわえサテライトオフィスの色合いが強いアブダビが続きます。キャンパスが複数あるのは良いのですが、現状のキャンパスの大きさを見る限り、MIMは完全にキャパオーバーな気がします。特にシンガポールキャンパスは深刻で、Exective MBAが始まった際にはほとんどの会議室が埋まり、MBAのリクルーティング活動に弊害が生じるのも目の当たりにしてきました。

 

また、INSEADはいずれのキャンパスにも寮がありません。条件は違えど土地に限りがあるフォンテーヌブローとシンガポールキャンパス近辺で、さらに学生を増やしたらどうなるのか、学生生活の不満が高まりそうです。

 

とネガティブな内容が続きましたが、悪いことばかりではありません。最終的にはINSEADにとってMIMはビジネススクールとしてのブランド向上につながると個人的には思いますし、アルムナイネットワークが増えるというのもメリットと言えます。また、何よりも感心したのが、欧米ビジネススクールの中でもトップの地位にありながらも、INSEADが常に価値向上のために考え、動いているという点です。まずはMIMの成功を願いたいです。

 

では、では

Silicon Valley Trek②〜シリコンバレーから見た日本〜

Silicon Valleyを一週間渡って見て、色々考えさせられたのが技術とビジネスの関係性です。前職が電機メーカーの営業ということもあり、テクノロジーやハードウエアといった分野に少なからず興味関心を持っていたのですが、今回のTrekでもそれに関連する産業を訪問したこともあり、色々と考えさせられました。

 

特に考えさせられたのが、シリコンバレーから見えて来た日本、特に日本のものづくりです。これもまた前回と同様逆説的ではありますが、最先端と呼ばれるものに触れ、それをベンチマークとしておくことで、今自分が携わっている(もしくはこれから携わるであろう)フィールドの問題点が浮き彫りになって来たような、そんな気がします。正直にいうと、「日本のものづくりってもう終わっているようなものだけど、工夫次第でなんとかなるんじゃないか」というものです。

 

Silicon Valley Trek中に起きたある出来事を紹介します。前回紹介した通り、我々はTrek期間中様々な会社を訪問しましたが、その中でも、シリコンバレーのロボット・スタートアップの企業を訪問しました。そこでは、日本でもよく見られるようになった接客用ロボットを製造・販売していました。小さな工場で、アジャイルとフレキシブルを売りにしており、日本の顧客を多く抱えていた、というのです。スタンフォードのPhDを中退したCTO曰く、「日本の顧客が口コミで我が社を紹介してくれているので、非常に助かっている」ということ。

 

ただ、この熱気とは裏腹に、技術面での素晴らしさをこの会社からはあまり感じませんでした。実際に工場ラインを見ましたが、正直なところとてもシリコンバレーの名に相応しいような最先端を扱っているとは言えません。3Dプリンタを用いてリーン生産を行なっていると豪語していましたが、扱っている3Dプリンタは比較的古いタイプのもので、そこまで生産性が高いとは思えません。また製品のデザインや性能についても、数多の深センのスタートアップを見て来た私からすると、ハードウエアの面でとてつもなく優位が築けているかというと、どうやらそうでもなさそう。なのに、日本企業はそうしたスタートアップからこぞって製品を購入している。彼らの会議室には、日本企業のロゴが掲載されており、「ここと取引をした」というのが堂々と掲げられていました。

 

私はCTOの次の言葉を聞いて、正直がっかりしてしまいました。「日本のお客さんの中には、我々がシリコンバレーにいるということだけで好意的に思ってくれるところもある。シリコンバレーがある種のブランドとして活きている。」

 

正直、このくらいの規模の技術力と開発力、生産能力を有した会社は、日本や中国に腐るほど存在しています。日本の大手企業においても、その気になればいくらでもこうしたラボのような場所は幾つでも作ることができる。優秀なエンジニアを雇い最新鋭の3Dプリンタでも用意すれば、いとも簡単に彼らを超えるようなスタートアップを作ることができます。それなのに、実際の日本の企業はそれをせず、こうしたスタートアップから製品を購入している。ここで私は、必ずしもこのスタートアップが悪いといっているわけではありません。彼らだって真っ当にビジネスをし、企業が必要とする製品を販売しているわけですから、それだけで社会的価値の高いことをしているわけです。問題の本質はそこではなく、日本企業の側にあります。

 

この企業を訪問後、これについてずっと考えていました。そこで出た結論は、「日本企業はやりたくてもこうしたことができない。だから、リーン生産や柔軟性を有したスタートアップを活用しているのではないか」という点です。ただ、この「できない」というのをさらにブレークダウンすると、技術的にできないのではなく、文化的・制度的にできないのです。大企業の中において、秩序を乱すようなスタートアップ的組織は毛嫌いされる。だからいくらケイパビリティもキャパシティも有したとしても、大企業の秩序の維持が優先され、スタートアップなどのリスクが高いものについては外部に委託する。そうした流れができているのではないか、ということです。

 

ここで感じるのは、日本企業に重大な「空洞化」が起きているのではないか、という懸念です。すなわち、比較的リスク性向の高い分野や、日本企業の既存の秩序を乱すようなグレーな分野においては、積極的に外部に委託がされる。アベノミクスによる円安によって、日本企業は軒並み好調が続いている一方で、賃上げをせずに内部留保はたまる一方ですので、潤沢な資金があります。その資金がどこに流れているかというと、内部ではなく、外部委託先なわけです。この傾向が続くと、いつの間にか日本企業の内部に何も残らなくなってしまうという状況に陥るかもしれないのです。

 

こうしたケースはすでに他でも見られます。例えばイノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセン教授は『イノベーション・オブ・ライフ』の中で、PCメーカーであるデルの事例を取り上げています。デルは価格競争の中でコスト削減を目的に、委託先である台湾メーカーのASUSに委託を進めていきました。しかしながら、委託の中で技術力や開発力を蓄えて来たASUSが自社ブランドでPCを販売し、デルはさらに窮地に陥った、というストーリーです。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
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この本では、著書のコンセプトから「人生あまり委託しないほうがいいよ」ということを述べているのですが、このデルのケースは、どうしても日本企業の未来につながるものがあるのではないかと感じざるを得ません。

 

 

では、では

Silicon Valley Trek①〜シリコンバレーのエコシステム〜

以前の記事でも紹介した通り、P4終了からP5開始までの一週間、アメリカはカリフォルニアベイエリア(サンフランシスコ〜サンノゼまでのエリア)にて、INSEADのElectiveであるSilicon Valley Trekに参加してきました。このTrekでは、一週間かけて、シリコンバレーの企業を訪問し、ゲストスピーカーとのディスカッションを通じてシリコンバレーのビジネスについての知見を深めることを目的にしています。

 

INSEADにおいて、我々学生が普段口にする「Trek」には大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、MBAプログラム即ち学校がオフィシャルに主催するTrekで、選択科目として履修することになり、参加すれば単位がもらえるというものです。内容としては、純粋な企業訪問のTrekもあれば、観光・企業訪問の双方を織り交ぜたTrekがあります。Class of July 2019では、シリコンバレーイスラエル・中国・インド・ドバイ等が開講されていました。二つ目は、INSEADのClubが主催するTrekで、「地域×セクター」という二つの切り口に基づき、それぞれのClubが企業訪問をセッティングするというものです。単位はとれませんが、特定の分野にフォーカスしたTrekになり、よって必然的に就活色が強くなりますので、その分野に興味のある学生にとっては非常に費用対効果の高いTrekになっています。私が把握しているもので、「ロンドン×金融」「アムステルダム×起業」「香港×PEVC」「ジャカルタ×テック」などが企画されており、私もこれらいくつかのTrekに参加しました。そして最後に、学生の有志が主催するTrekがあります。これはある国の出身の学生が、その国の文化を知ってもらおうと主催するものです。企業訪問よりも文化体験の方が色濃くなるのがこのTrekの特徴で、我々の代では、日本のほかレバノンイスラエル・ブラジル等が企画されています。

 

そうした数あるTrekの中でも、このSilicon Valley Trekは非常に人気があり、25名の参加枠に対して多くの学生が応募します。学生はBidding pointという、選択科目・キャンパス選択に使われるために各学生に均等に配布されたポイントを使い、このTrekにポイントを投票することによってTrek参加の意向を表明します。そして、投票したポイントの多い学生から順番に枠が割り当てられます。私はこのTrekにどうしても行きたかったので、かなりのポイントをつぎ込みました笑

 

ではどうして個人的にそんなにも行きたかったのか。理由としては以下三つがあります。

アメリカの理解

恥ずかしい話、私は仕事・プライベート含めアメリカに行ったことがありません。中国語ができるということにかまけてアジアの探究を急ぐあまり、人生の中でアメリカに行くタイミングを完全に失ってしまったというのがあります。このため、このTrekによってアメリカの食わず嫌いを克服したい、そんな思いがありました。

 

②テック総本家のシリコンバレーについての知見を深めたい

私はテクノロジー(ハードウエア・ソフトウエア双方)に興味を持っていたので、シリコンバレーは避けては通れません。多くのテック企業が本社を構えるシリコンバレーでは、日々イノベーションが起きていると聞いていましたが、果たして本当にそうなのか?この目で確かめて見たい、という想いがありました。

 

深センとの比較

少し逆説的にはなりますが、このTrekを通じてアジアの可能性について探って見たいというものがありました。私は仕事柄、「ハードウエアのシリコンバレー」と呼ばれた深センに訪問し、そのダイナミズムを肌で感じてきました。そうした中で、口々にベンチマークとして取り沙汰されるのが「シリコンバレー」でした。では深センはどうシリコンバレーと違うのか、アジアはどういう特色を持っているのか、シリコンバレーを通じて映し鏡のように見て見たい、というモチベーションがありました。

 

そうして応募したTrekですが、総じて満足度の高い一週間でした。というのも、ゲストスピーカー・訪問企業の質が良かったからです。一例を挙げると以下の企業を訪問しました。

 

テック企業:LinkedIn、Wework、Square等

スタートアップ:Ycombinatorからも出資を受けたスタートアップや、シリアルアントレプレナー

PEVC:Y-Combinator、CVC等

その他:エッセイスト、エンジェル投資家、等

 

様々なバックグラウンドからなるゲストスピーカーを通じ、短期間でシリコンバレーの全体像を把握できたのは非常に有益だったと思います。

 

そうした中で感じたのが、エコシステムの重要性です。シリコンバレーのエコシステムの特徴を挙げるとすれば、大きく以下の二点に集約されると思います。

 

①PEVCの存在

ゲストスピーカーが口を揃えて言っていたのが、「シリコンバレーは持続可能である」ということ、そしてその理由として「PEVCの存在」をあげていました。すなわち、世界中からお金が集まり、熱意を持った起業家がファンディングのために集まる場所としてシリコンバレーが機能している。このため、テクノロジーが進化して言っても、場所としてのシリコンバレーが消えるわけではない、ということを豪語していました。

 

この説明に正当性を感じるのが、今のスタートアップの特徴です。現在のスタートアップの特徴は、ほとんどがローカル市場にフォーカスしています。というのも、ソフトウエア・アプリを使って解決するのは、結局のところローカル市場のある意味アナログな部分であり、目に見える製品のような、グローバル市場共通で価値が認められるものというのは少ないように見受けられます。このため、どうしても昨今のスタートアップはローカル市場にフォーカスせざるを得ません。それでも、シリコンバレーが活気に満ちているのはなぜかというと、そうしたローカル市場にフォーカスしているスタートアップでさえも、出資のチャンスを求めてシリコンバレーに集まってくるからです。このため、お金があるところに起業家が集まり、起業家同士で切磋琢磨する、ある種の道場のような機能をシリコンバレーが有しているような気がします。

 

②大学の存在

二点目にあげていたのが、大学の存在です。シリコンバレーには、アメリカでも有数のトップ校が存在しています。具体的には、スタンフォード大学・UCバークレーなどがあげられます。彼らがシリコンバレーのエコシステムを維持していると言えます。

 

一つ目に、人材プールとしての機能があげられます。アメリカ全国から、ひいては世界中から、優秀な学生がここに集まってくる。そして彼らの卒業後の進路は、大抵ベイエリアになるといいます。このため、ベイエリアの企業は比較的外国人が多く、加えて若さを感じます。サンフランシスコは現在オフィスビルが並ぶ開発著しい都市になっていますが、私が街を歩いていて驚いたのが、先進国では珍しいほど街中を歩く人が若い、ということです。特にビジネスマンの年齢が比較的若いように見受けられました。これは、こうした大学から、コンスタントに若い人材が供給されていることの証左なのかもしれません。

 

二つ目に、ネットワーキングとしての機能があげられます。彼らは大学で繋がりを有しているので、強固なネットワーキングを有しています。このため、異なるバックグラウンド同士の交流が進みやすい、という特徴もあるのかもしれません。

 

ではここまで考察を深めた上で、一つの疑問が上がってきます。それは、「シリコンバレーは複製可能か?」というものです。現在、ベルリンや深センなど、多くの都市がシリコンバレーを模倣しようと躍起になっていますが、果たしてこれは実現可能な旅路なのか?この質問をゲストスピーカーにぶつけて見たところ、ほとんどが「シリコンバレーは複製できない」という答えでした。理由としては、上記のエコシステムはシリコンバレーに特有であり、他のエリアでは模倣はできても優位性は出せない、ということでした。

 

しかし果たして本当なのか、私はTrekが終わった現在においても疑念を持っています。深センも現在中国の多くのマネーが流入し、破竹の勢いで投資規模が増加しています。また人材においても、深セン近辺に世界クラスの大学は香港くらいしかありませんが、とにかく若い人材がどんどん深セン流入している現在の状況を見る限り、シリコンバレーと同様の状況になっていると言えなくもありません。もしかすると数十年後には、深センがアジアのスタートアップの総本家となる可能性もゼロではないと思っています。

 

(続く)

欧米のビジネススクールの違い

先日学校にて、Exchange Programを利用してP4をWharton MBAで過ごした学生とランチをしました。中国出身の彼女は、アメリカでもキャリアを考えていたことから、2ヶ月でも良いのでアメリカで過ごして見たい、という気持ちが強かったようで、INSEADでもフランスキャンパスにはいかず、シンガポールアメリカでカリキュラムを終えるといいます。

 

あくまでその学生からの伝聞にはなりますが、少しINSEADアメリカのビジネススクール(いや、Whartonというべきか)の違いについて面白い洞察がありましたので、以下まとめたいと思います。

 

①学校の規模

欧州のビジネススクールは学部がないものが多いのですが、アメリカのビジネススクールは大学と連携しているため、とにかくスケール感が違うそうです。学生の規模もとにかく多い。1年間に1000人近くいれば、そうなってしまうのも仕方ないのかもしれません。

 

また、授業においてもスケールが違うようです。INSEADだと、選択科目だと少ない時で20名前後の授業が開講されており、少し規模の多いゼミのような授業もあったのですが、Whartonは規模の多い授業が多く、「教授がはるかかなたに見える」距離感だったそうです。というのも、Whartonではビジネススクール生に加え、学部生もビジネススクールの授業を履修できるようなシステムになっているため、必然的に一授業あたりの人数が多かったといいます。

 

②ネットワーキング

その規模感から出てくるのが、ネットワーキングの違いです。Whartonは、学生の数が多すぎて、逆に友人を作ることが難しかったと、その学生が振り返っています。そりゃあ、授業でも大人数だったら、学生間の交流を作り出すことは難しいのかもしれません。その代わりネットワーキングの場所として機能しているのがClub活動だと言います。同じ興味関心を持つ学生が運営するClubが交流の場となり、学生のネットワーキングの場所になっているようです。

 

一方でINSEADにおいては、メインでフランスとシンガポールという二つのキャンパスに学生が分かれます。(Class of July だとアブダビも候補に含まれます)このため、一つのCohortで500人近くの学生がいると言っても、瞬間的に一つのキャンパスにいるのが200-300名程度になります。加えて、INSEAD名物(?)でほぼ毎日何かしらのイベントが行われるため、Clubに頼らなくてもネットワーキングができるというのが特徴です。その代わり、Club活動が弱いのがINSEADの特徴とも言えるのかもしれません。というのも、Club活動にコミットできる期間は4〜6ヶ月となっており、非常に短い。Clubに参加して、「あれもこれもやって見たい」と考えていたらいつの間にか就活シーズンに突入して終了、ということもあったようです。

 

 

③学生のバックグラウンド

また、彼女は学生のバックグラウンドについても面白いことを言っていました。Whartonはファイナンススクールと呼ばれている通り、金融関連のバックグラウンドを持つ学生の比率がとても多いというのです。これはコンサルを中心に比較的満遍なく学生のプロファイルがばらけているINSEADとは違う印象を受けます。そして就職活動も、INSEADが(ほぼ全員)コンサルを受けるのと同じように、Whartonではほぼ全員が金融関連のキャリアを目指すようです。やはりここは各スクールのカラーが出ていると言えるのかもしれません。

 

以上簡単にまとめましたが、わかってくるのは、一口にビジネススクールと言っても、それぞれのカルチャーやカラーが全く異なるという点です。知名度やブランドにとらわれず、自分のキャリアや考え方にfitするビジネススクールを選ぶべきだ、と出願時によく言われましたが、あながち間違いではないようです。

 

では、では

P5スタート。学生生活も残りあと2ヶ月

 遅ればせながら、先週INSEAD生活最後のピリオドとなるP5がスタートしました。

 

P4同様P5は全て選択科目によって占められております。ただP4と異なるのが、要求される選択科目の数。P4は推奨4コマだったのに対し、P5はさらに少なくなって3コマとなっています。まだ就職活動を行っている学生もいるのですが、私のように就職活動を終了した学生や、社費できている学生については他にすることもなく、授業の間の空き時間を見つけてはひたすら旅行に行くという期間になっています。確かに、MBA学生は学費で相当な出費をしたものの、「時間もあってお金もある」典型的な良い状態ですので、これを機に様々な場所に行くのはある種自然なのかもしれません。私もその流れにもれず、様々な旅行の計画を立てているような状況です。

 

残り短い学生期間ですが、なるべく更新していきたいと思います。

 

では、では