だじりブログ

日々の読書から広がる考察

シンガポールでMBA留学するメリット

近年シンガポールMBAプログラムを希望する日本人が増えているようです。シンガポールには、シンガポールの大学がMBAプログラムを有しているのはもちろんのこと、INSEADのようなもともと欧州にあるような学校がシンガポールにキャンパスを有している場合も多く、後者においてはシンガポールが欧米圏からみて「アジアへのアクセスのきっかけ」という場所として機能していることがわかります。

 

私もINSEADMBAプログラムで半年近くシンガポールに滞在していますが、欧州では感じられなかった、シンガポールにいる日本人ならではのメリットを色々と感じています。学業面・生活面において、ここで感じた点をまとめてみたいと思います。

 

①住みやすさ

今まで欧州・アジアと様々な地域に滞在してきた私ですが、今までの経験から言っても、シンガポールの住みやすさは他の都市とは比べ物になりません。食事の面で言えば、日本のレストランはもちろんのこと、食品や雑貨などがローエンドからハイエンドまで豊富に揃います。日本人の駐在員が多いことも影響しているのかもしれませんが、「日本のモノの豊富さ」という点にフォーカスすれば、親日と言われる台湾を凌駕していると思います。

また、病院等のインフラも充実。欧州ではなかなか見つけることができない日系病院もあります。

 

②多様性のバランスの良さ

ご存知の通り、シンガポール多民族国家です。中華系が大多数を占めてはいるものの、インド系やマレー系も多いです。そして意外に思われるかもしれませんが、欧米系の滞在者も多く見かけます。

そして多様性のみならず、その多様性の中身が日本人にとって非常に学びになります。というのも、私がフランスに滞在していた時には、ヨーロッパを中心に、アフリカ・西アジアが大多数でした。これらの国々は、正直なところ日本人にとっては馴染みが薄じく、また特定のインダストリーを除けばこれらの地域とビジネスで接することはあまりありません。一方でシンガポールは多くが中華系。ビジネスの面でフォーカスすれば、ますます影響力が強まる中華圏に触れることができるのは日本人にとっては非常にプラスに働きます。加えて、中国本土の中国人とは異なり、シンガポール人はインターナショナルで非常に接しやすいですので、中国になれない方々でも容易に接することができると思います。(とはいっても、シンガポール人特有の相性というものがありますので、そこは個人差があるとは思いますが)

 

③ビジネスでの接点とシンガポールのアクセスの良さ

現在日本の多くの企業が、成長著しい東南アジアへの進出を強めています。中国における地政学リスクがますます増える中で、生産拠点を東南アジアに移管するメーカーも多いだけでなく、市場としての魅力も増えているようです。2000年代後半に日本国内で、「世界の工場から市場へ」と中国がよく揶揄されていましたが、それと同じような現象が今東南アジアで起きていると言えます。

シンガポールは東南アジアの玄関口として、他の国へのアクセスも抜群。隣接するインドネシアやマレーシアはもちろんのこと、タイやミャンマーにも非常に短時間で行くことができます。INSEADの学生も、週末にこれらの国々によく旅行に出かけていました。そうした点では、非常に魅力的な地域である東南アジアでビジネスの勉強をするのは非常に理にかなった選択と言えるでしょう。

 

もちろん、何を目的とするかで、ロケーションやプログラムの選択基準は変わってきます。例えば欧米で仕事をしたいということでしたら、もちろんシンガポールにいるのはデメリットにはなれどメリットにはなりません。また国際感覚を身につけるという点で言えば、たとえ多くの欧米からの駐在員を抱えていると雖も、シンガポールはアジアに傾倒しすぎていると言えるでしょう。逆にアジアを中心にキャリアを考えていきたいという方にとっては、シンガポールは非常に魅力的な選択肢になるのかもしれません。

 

では、では

一年制MBAのメリット・デメリット

6月も半ばに差し掛かってきて、授業の残すところあと少しわずかとなってきました。卒業する前に、なんならこのINSEADに在籍している間に、MBAとキャリアに関する情報も発信できればなと思います。

 

MBA特に海外フルタイムにおいては、2年制のものと1年制のものと二つのタイプがあります。2年制はアメリカをメインとしており、1年制はINSEADを中心とした欧州のビジネススクールに多い傾向があります。私はこの中でも1年制のビジネススクールをメインで受験し、INSEADにて勉強を進めてきましたが、その中で色々とメリット・デメリットがより鮮明に見えてきました。

 

ここでは実体験ベースで、1年制MBAのメリット・デメリットについてまとめたいと思います。

 

・メリット

①密度の濃い学生生活

やはり何と言っても、1日1日が濃いというのが特徴な気がします。これはカリキュラム・マインドセット双方から言えることですが、とにかく1日1日が濃密なので、非常に濃い学生生活になります。

 

例えば授業について。選択科目の授業は1単位で14コマ(1コマあたり1時間半)なのですが、0.5単位の授業となると長くて2週間、最短で週末の2日間で終わってしまいます。1単位の授業でも最短で2週間で終わります。なんでこんなことが起きているのかというと、一週間で4~7コマを一気にやるのです。もちろんだからと言って容赦はなく、がっつり課題やグループワークが入ってきます。

 

そして課外活動でも、やりたいことはすぐにやるという気持ちが働きます。1年で短いということもあり、多くの学生のマインドセットとしては、「今やっておかないと多分次できない」という生き急ぐ形の人が多い印象です笑 このため、旅行にネットワーキングに多種多様な動きをして行きます。このため、必然的に1日あたりの濃密度が高まってきます。

 

ただし、忙しさのレベルでいうと、正直なところ働いていたときの方が時間的拘束は長かったような気がします。時間を自分でマネージできますし、時間を調整して日中に子育てをできるわけですから、ある程度のゆとりもあるのかなと思います。

 

②就活の時間はしっかりある

1年制MBAだとよく受ける質問が、「就職活動大変じゃないですか?」というもの。インターンシップもできずそのまま一発勝負で選考に臨んでいくため、学業との両立を懸念するのも自然のことかもしれません。

 

ただ、個人的には逆に就活の時間は十分にあると考えています。一つ目は、カリキュラムがしっかりと調整されているという点です。他のビジネススクールはわかりませんが、少なくともINSEADにおいては、就職活動が解禁となる時期から、選択科目の推奨履修数がとても少なくなっています。このため1年制といえども、学生は就職活動に比較的時間をかけることができるのです。二つ目に、就職活動の効率性があるのかなと思います。というのもコンサルや事業会社の一部などすでにINSEADの多くの学生が志望する業界については、選考プロセスがグローバルで共通化されており、多くの学生が同じタイミングで同じ選考に臨みます。このため、情報共有や対策といった選考への準備にかける労力を節約でき、効率的に就職活動ができるというメリットがあるのです。

 

・デメリット

①知識の深堀ができない

個人的には1年制MBAで一番満足いっていないところかなと。上述した濃密な時間と一見矛盾する内容ですが、知識の探究という点においては正直1年制では短い気がします。もちろん、授業の内容等は全く問題はないのですが、その授業で得た課題意識や問題意識を、自分自身でさらに深掘りするには時間がありません。物理的な時間的制約があるため、授業のための準備や試験に費やすことがどうしても優先になってしまいます。一方で、そこから一歩進んで、例えば授業のケースに関連する本を読んでみたり、授業で推薦される文献を自分で読み解いていくといったことは、なかなかできません。

 

とはいっても、少なくともINSEADにおいては、「P6」と呼ばれる、卒業式〜仕事始めまでの時期が存在します。幸運なことに私も1ヶ月半ほどこの期間があるので、ゆっくりと自身の知識の探究に費やすことができればなと思っています。

 

では、では

 

 

では、では

 

ブルー・オーシャン戦略とINSEAD

ブルー・オーシャン戦略。ビジネスに携わる方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。肌感覚では、INSEADよりも、ブルー・オーシャンなら聞いたことがあるという方のほうが多いような気もします笑

 

このブルー・オーシャン戦略、現在INSEADに在籍するW・チャン・キムレネ・モボルニュが2005年に提唱した概念で、競争の激しい、企業同士が血で血を洗う「レッドー・オーシャン」で戦うのではなく、競争のない「ブルー・オーシャン」を創造していくべきだという概念です。この書籍の出版以来経営理論の本においてはベストセラーとなり、世界中のビジネスパーソンに愛されている概念なのかなと思います。

 

 

日本でもこのブルー・オーシャン旋風は非常に勢いがあり、東京大学京都大学早稲田大学にも「ブルー・オーシャン・インスティテュート」が存在し、ブルー・オーシャンの事例研究が行われるといいます。そして「ブルー・オーシャン・シフト」に見られるように日本でも様々な事例が見られるとしています。

 

この理論の特徴は、従来の競争戦略論とは一線を画しています。というのも、W・チャン・キム本人曰く、従来の競争戦略というのは、マイケル・ポーターの「競争の戦略」で見られる「5 Force」理論にあるような、ある意味「いかに他者と差別化を図るか」というものでした。この理論においては、市場の分析から競合の分析に至るまで、敵と戦場を理解し、そうしたある種他者の存在によって位置付けられる自社のケイパビリティ・アイデンティティをうまく活用していくことが大事だとされてきました。すなわち、戦略とは「いかに競争するか」というのが従来の考え方でした。

競争の戦略

競争の戦略

 

 

そこでW・チャン・キム教授は「競争するのではなく、どうやって新しい市場を作り出すのか」という点に着目したそうです。そうして企業研究をしていくうちに、一つのパターンを見出した。それがブルー・オーシャン戦略の肝である「今までに顧客として捉えられていなかった顧客の捕捉(Capturing non-customer)」だといいます。それを理論化したのがこの戦略というわけです。

 

よくブルー・オーシャンを競争の比較的少ないニッチ市場と捉えて表現する方がいらっしゃいますがそれは少々間違っているような気がします。というのも、ブルー・オーシャンというのは作り出されるものであり、現に見えている市場を競争が少ないと雖も、競合がある時点でそれはある種のレッドオーシャンな訳です。ブルー・オーシャンの特徴として、価値の創造とともに、価値の捕獲(Capture)も同時になされるという点、そしてそのブルー・オーシャン自体が、企業のアイデンティティになるために模倣されにくい、という点です。

 

このブルー・オーシャン戦略、INSEADではどのように学ぶことができるのかというと、実はしっかりと選択科目にブルー・オーシャン戦略に関わる授業があります。その名も「Blue Ocean Strategy」と「Blue Ocean Strategy Study Group」というものです。この二つの授業では、この理論をたっぷりと扱います。前者は理論をベースにケース・スタディやシミュレーションを通じて戦略の理解を深めるという目的で行われるものであり、後者はブルー・オーシャン戦略に基づいた事例分析をグループで行うという、ある種の論文執筆のようなものです。そしてこれら二つの授業の特徴は、一部分において、この理論の提唱者であるW・チャン・キム教授自身が講義を行うというものです。

 

先週、この後者の授業があり、グループワークに参加してきました。数人規模のグループに対して、W・チャン・キム教授がゼミ形式で指導してくれるわけですから非常に有意義な時間です。これだけで、INSEAD MBAの学費の元が取れたような気がします笑

 

それはさておき、非常に印象的だったのが、この理論とともにW・チャン・キム教授が目指すINSEAD像を教えてくれたことです。INSEADMBAプログラムは近年とても高い評価を得ているわけですが、それもブルー・オーシャン戦略によって新しいターゲット層をしっかりと確保できたからだといいます。INSEADの特徴である①1年制の集中プログラム、②欧州・アジアキャンパスによる多様性の確保、③マチュアさ(平均年齢が高め)というのは、ある種MBAの中でも特徴的なものです。特に②はビジネススクールにおいて複数キャンパスを持つトップスクールはINSEADくらいで、まさに上述したブルー・オーシャンの特徴を体現しています。そして今後は、現在のコンサルスクールというものに加え、アントレで成果を出していくといいます。正直なところ私も入学前まではアントレプレナーシップにあまり興味が湧いていませんでしたが、アジア・ヨーロッパに限らずこのINSEADのキャンパスに溢れるアントレ精神に良い意味で刺激を受けています。実際のところ、INSEAD発のスタートアップは増えてきているので、それらがINSEADのブランドをさらに高めていくことになるのではないかなと。

 

ブルー・オーシャン戦略について興味を持たれた方で、しっかりと戦略を学びたいと人にとってINSEADは良い環境なのかもしれません。一方で、アントレ精神にも触れる良い場所でもあると言えるでしょう。

 

では、では

武田薬品のトランスフォーメーション

 

headlines.yahoo.co.jp

 

2015年にトランスフォーメーションに踏み切った武田製薬の今を取り上げる記事です。そこでは、CEOに外部から外国人を招聘し、トップダウンの大号令のもとでグローバル化を図った武田製薬が、仏大手のファイザーを買収するなどのM&A戦略を実施していくことで成長を図っている、そのような過程にある武田薬品が、「気づけば『社員9割が外国人』」という社員の眼差しで取り上げられています。日本人社員からすると、今まで慣れ親しんだ会社がいきなり外資のような雰囲気になるわけですからそれはそれで驚きです。そうした中で、武田薬品で働く日本人社員がどのようにしてその変化を受け入れて行ったのかについて記事が書かれています。

 

少し驚いているのが、この記事が、日本の企業の現状をポジティブに捉えているという点です。急速にグローバル化を進める社内において、ストラグルしながらも成果を上げている意欲の高い日本人社員がいて、彼ら彼女らが会社を牽引していくのではないか、そして武田が成功した暁には日本企業がグローバル企業になっていくための一つの成功例として取り上げられるのではないか?という形で締めくくっています。

 

注目すべきは、肯定的な記事とは裏腹に、コメント欄には非常にネガティブなものが続いているという点です。「武田は株主利益を追求するあまり、日本らしさを失った」「今の武田はもう昔の武田ではない。昔のほうがよかった」「グローバル化が進んでいる企業では働きたくない」等。このコントラストが見ていて非常に面白く感じられます。

 

実はこの企業、今週の戦略論の授業でケースとして扱ったばかりでした。2015年の時点での取り組みについての文章を読み、クラスでディスカッションするというものでした。授業の中でもやはりトランスフォーメーションの懸念すべき点として、古い体質の文化をいかに変えていくか、という点にフォーカスが当てられており、この記事と非常にリンクしており非常に興味深く読みました。

 

このケースが面白いのは、創業200年超の企業が、いかにして変革を加えていったかという点にあり、日本はおろか世界的に見ても稀有なケースな訳です。日本という単純な視点にとらわれず、トランスフォーメーションの過程を見るという視点においても非常に興味深い企業なのかもしれません。今後も日本企業でこうした、「世界でも稀に見る」事例が増えていけば、もう少し日本も活き活きしてくるのかもしれませんね。

 

では、では

INSEADと旅行

しばらく中国語のネタが続いたので、INSEADに戻して見たいと思います。題して、旅行について。

 

INSEADは三つのキャンパスを持ち、いずれロケーションが異なることから、様々な学生が集まってきます。そしてINSEADを特徴付けているのが、学生のモビリティの異常なまでの高さです。これが如実に現れるのが旅行です。

 

INSEADの学生はとにかく旅行が好き。もちろん個人差はありますが全体的には間違いなく旅行好きの人々が集まっていると言えるでしょう。グループワークや課題で忙しいにも関わらず、週末になると大抵誰かがどこかの国に行っていて、それをSNSに上げている。それが引き金となって、「私も行きたい!俺も!」というムーブメントを作り出し、次の週にはまた別の人が同じ場所に行っていたりする…。そんなことが日常茶飯事的に発生しています。

 

そうして周囲がアクティブに動くのを目の当たりにし、他の学生も同じように旅へと駆り出されます。私自身、あまり旅行はいいかなと思っていたのですが、あまりにもクラスメートが旅行に行く姿を見て、「これではもったいない!」と思い、色々と旅行に出たものです。

 

INSEADは10ヶ月のプログラムですが、キャンパス含め、私がこの10ヶ月間で行った場所をリストアップして見ます。

 

フランス(パリ・フォンテーヌブロー・ボルドー・ノルマンディー)

イギリス(ロンドン)

ドイツ(ベルリン・ケルン)

デンマークコペンハーゲン

ベルギー(ブリュッセル

スペイン(バルセロナ

クロアチア

オーストリア(ウイーン)

シンガポール

マレーシア(ジョホールバル

インドネシアジャカルタ・バリ)

アメリカ(サンフランシスコ・シリコンバレー

 

キャンパスを除き10カ国。1ヶ月平均で1ヶ国新しい場所に行っている計算になります。

 

ちなみにこの数字、周囲を見るとこれでも少ないほうです。ヨーロッパでも、私が知っている限りでポルトガルアイルランド・オランダ・ハンガリールーマニアノルウェーアイスランド等。アジアでも、ミャンマーカンボジア・タイ・オーストラリア・フィリピン・UAEレバノンイスラエル・トルコ・インド・ヨルダン等。多い人だと20ヶ国以上巡っているのではないでしょうか。

 

ちなみに、アメリカとスペインを除き、これらすべての国に娘(現在1歳近く)を帯同させて、家族で旅行に出かけています。特になんとも思っていなかったのですが、日本人にこれを説明すると相当な驚きをもって聞いてくれます。あれ、なんでだろうと思っていたところ、以下の記事を見つけ、「ああ、日本の感覚だと子育てしたら海外出るの難しいんだな」と改めて感じてしまいました。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190606-00010002-huffpost-soci

 

人間というものはまさしく習慣の生き物で、私も知らず知らずの間に「たとえ忙しくとも子供と一緒に海外に旅行する」というのが当たり前の日常になってきてしまったわけです。そうした意味では、INSEADのこの環境は子育てや家族という概念におけるリミッタを外してくれたのかなとも思っています。たとえ治安が悪くても、住環境が悪くても、気をつけるポイントさえ気をつければ楽しく旅行ができるとわかったのはこれらの旅路を通じてです。こうした点からも、子育て・家族に違った観点を与えることができたのも、このINSEADを通じての学びだったと言えるかもしれません。

 

では、では

 

 

中国語の単語は難しければ難しいほど日本語と同じ意味になる

今回は中国語の単語と熟語について。日本人から見た中国語の単語と熟語の特徴について説明したいと思います。

 

前回の記事で、中国語の漢字はほとんど日本語と同じと説明しました。これは簡体字も含めると、実に95%近くの漢字が同じということになります。 

dajili.hatenablog.com

 

しかし、同じ漢字が使われているのは理解できたとして、意味はどうでしょうか?もちろん意味が違えば、たとえ同じ漢字を使っていたとしても全く意味がなくなるわけです。意味が違うのに日本語の考え方そのままに中国語を使ってしまうと、いらぬ誤解を与えてしまう事態が発生しかねません。

 

実際に、日本語と中国語で同じ漢字を使うにも関わらず意味が全く異なるものがいくつか存在します。これは特に、中国人が日本に旅行に来た時に必ずといっていいほど話題に上がります。中には違いがありすぎておもわず笑ってしまうものがいくつかあります。

 

以下に実例を紹介したいと思います。

 

①大丈夫 :no problemではなく、立派な男性という意味で使われます

②前年 :去年の意味ではなく、一昨年の意味で使われます

③合同 :中国語では、契約という意味になります

④放心 :心ここに在らずという意味ではなく、「安心する」という意味で使われます

 

このように、日常で使われる単語の中には中国語と日本語で意味が異なるものがあり、中国語学習者を困らせるものが多く含まれています。

 

しかし私はこうした事例があるのを認めつつも、それでも「日本語と中国語の単語はほとんど同じ」と主張したいです。そしてそれは、ビジネスなど難しい言葉を使えば使うほど同じであると言えます。

 

それはどういうことか、早速具体例を用いて説明したいと思います。以下は前回も掲載した文章です。

 

金融是国家重要的核心竞争力,是推动高质量发展的重要支撑,作为北京第一大产业,金融业不仅推动了北京经济持续平稳健康发展,也有力促进了北京的城市规划、建设和高质量管理。

 

この中で、中国語(簡体字を日本語版の漢字に戻したあと)と日本語の漢字の意味が全く同じになるのは、以下になります。

 

金融・国家・重要・核心・競争力・発展・重要・北京・大産業・金融業・北京・経済・持続・健康・発展・建設・管理

 

どうでしょう?かなりのフレーズで意味が同じという結果に驚かれる方も少なからず一らっしゃるのではないでしょうか。

 

そして、上記のいずれのワードも、抽象度の高い概念を表現する言葉の割合が増えていると思います。特に重要・発展なども、この単語だけではなかなか意味を判別しづらい、抽象度の高いワードとなっています。

 

では、なぜこうした抽象度の高ければ高いほど、日本語と中国語の言葉の意味が同じになってくるのでしょうか。それはその言葉が、ルーツを共有しているからです。しかもそれは、なんと日本にあるのです。

 

それはどういうことか、少し歴史の話をしたいと思います。日本が明治時代に入ったあと、「文明開花」「近代化」の大号令と共に、多くの日本人研究者が西洋の近代的概念を研究し、日本に紹介していきました。その際に、そうした近代的概念を漢字で表現していきました。例えば政治や経済、社会などといった言葉は、この時に作り出された言葉だと言われています。

 

そして、それが中国語でも使われるようになります。当時多くの中国人留学生が日本にいて、西洋の近代概念を日本から学ぼうとしていました。その際に中国人留学生が行ったのは、日本人が作ったいわゆる和製漢語といったものを、中国語でそのまま使用したのです。これが、ルーツを共有していると先ほど説明した所以です。

 

それゆえ、特に学問の分野で非常に多くの共通性が見られます。例えば、中国でトップと呼ばれる北京大学の学部の名前を見てみると、日本の大学と間違えてしまうくらいとても日本の学部の名前と似ています。

 

理学部                

数学科学学院     

物理学院            

化学与分子工程学院        

生命科学学院                   

城市与环境学院 

地球与空间科学学院             

心理与认知科学学院        

建筑与景观设计学院        

 

人文学部                    

中国语言文学系 

历史学系            

考古文博学院     

哲学系(宗教学系)                      

外国语学院         

艺术学院            

对外汉语教育学院         

歌剧研究院         

社会科学学部                   

国际关系学院     

法学院  

信息管理系         

社会学系                          

政府管理学院     

教育学院            

新闻与传播学院               

体育教研部         

新媒体研究院     

教育财政科学研究所        

经济与管理学部               

经济学院                

人口研究所         

国家发展研究院  

 

もちろん、中国留学生が輸入したのは漢字そのものですので、読み方は全く異なります。例えば社会という言葉は日本語で「shakai」ですが、中国語では、「shehui」となり、別の読み方がなされます。そしてこれらの漢字は、特に名詞で共通しているケースが多いようです。

 

これがわかると、面白いことができます。中国語を勉強していた私は、感じの読み方を少しずつマスターしていた時期なのですが、この事実を知ってからは単語をむやみやたらに覚えることをやめました。その代わり、難しい言葉を話す時には、日本語の単語をまず思い出し、それを漢字だけ中国語読みするということをしました。そうするとほとんどの場合で意味が通じるのです笑 これはまさに、前回の記事で紹介した「フランス人がフランス語の脳で英語をしゃべる」と同じことではないでしょうか。

 

ただしこの法則には一つ落とし穴があります。それは、日常に使われる単語であればあるほど似ていない比率が大きくなるのです。また動詞も少し異なる意味になるケースがありますので、そこは注意が必要です。

 

では、では

「的」にまつわる、中国語と日本語の共通点

今日は日本人が中国語を勉強する上で重要な「的」について説明したいと思います。この「的」という言葉、中国語を知らない方でも少しは見聞きしたことがあるのではないでしょうか?
 
簡単に言えば、この「的」というのは、日本語で言うところの「〜の」という意味になります。例えば日本語でも、「私の家」という言葉がありますが、これを中国語に訳すと「我的家」になります。なんだかとても簡単そうですね。
 
また、この「的」という言葉は、一部例外を除き、この「〜の」という意味でしか使われません。日本語では、この言葉は「まと」という意味がありますが、中国語には「まと」という意味で使われることはありません。
 
ではなぜこの「的」という言葉を、数ある他の中国語のフレーズの中でも一番最初に、しかもこのタイミングで説明するのか。それにはきちんとわけがあります。というのも、この「的」という概念とその使われ方を知れば、日本語と中国語が似ているとますます思うようになるからです。え、どういうこと?と思われる方もいらっしゃると思いますので、ここで前の例文を用いて、的の使われ方について説明したいと思います。
 
广东省的经济规模已经超过了香港。快速成长的Tech产业是其中一个贡献。
 
この文章の中で、「的」という言葉は2つ使われています。一つ目が「广东省的经济规模」ですね。この文章の中に簡体字が含まれていますが、前回の記事で紹介したルールに基づいて解釈してみます。まず「广东省」ですが、广东だけだと推測が非常に難しいですが、これに省がつくことによって、中国のある省を表しているんだなと推測できます。ここから日本人に馴染みのある中国の地名で、广が使われているところといえば…?そう、広東省くらいしか思いつきませんよね。これで正解です。ということで広東省と置き換えます。次に、经济ですが、これは簡体字といえども、なんとなく「経済」と読むことができそうです。最後に规模。これも、規模と容易に推測ができますので、日本語の漢字に置き換えると、「広東省的経済規模」になります。ここで思い出していただきたいのが、的というのが「〜の」に置き換えられるというルールです。そうすると、この文章というのは、「広東省の経済規模」となります。そう、これで正しいんです。すなわち、これだけで中国語の日本語訳ができたということになります。
 
同様に快速成长的Tech产业も「快速成長のtech産業」とすることができます。この文章では「〜の」と訳すと少し日本語として違和感がありますが、伝わらなくもありません。
 
ここでこの「的」のすごさに気づいた方、さすがです。え、どういうこと?と思われた方、ご安心を。この「的」の破壊力を知ってもらうために、別の例をあげたいと思います。
 
かなり意図的ですが、以下の文章も中国語としてきちんと成立します。
 
 
この文章を読んでみてどう思われましたか?実はこの文章に、日本人にとってはとてもありがたい、中国語の文法上のある2つのルールが隠されています。こちらについてそれぞれ説明していきたいと思います。
 
一つ目は、「『的』という言葉の前には、名詞も動詞も形容詞も関係ない」という点です。つまり、どんな言葉が来ても、日本語的には「〜の」と置き換えてしまうことができる、ということなのです。先ほどの例でいうと広東省は名詞、成長は一応動詞的に使われています。
 
二つ目は、「修飾の順序が全く同じ」ということです。
 
日本語の場合、何かを修飾する際には、被修飾語の前に並びます。例えば、「向こうに座っている髪の長い若い女性」では、女性という被修飾語に、「向こうに座っている」「髪の長い」「若い」という三つの修飾語が前に並んでいます。実はこれと同じルールが中国語でも同じなのです。すなわち、「向こうに座っている」+「的」+「髪の長い」+「的」+「若い」+「的」+「女性」という形で、表現することができるのです。これは日本語話者にとってはとても役に立つのです。
 
なぜ役に立つのか?日本人が日本語の考えのままスムーズに言葉を表現できたり、中国語を日本語に置き換えたりすることができるからです。これが違うとどうなるか、英語で考えてみましょう。例えば先ほどの例で言えば、「向こうに座っている髪の長い若い女性」は、私の拙い英語能力によれば、「A young woman who is sitting over there and whose hair is long」になるかと思います。この例で言えば、被修飾語に対して、修飾語が前後するため、我々日本語ネイティブスピーカーからするとどうしても難しく聞こえてしまいます。大学受験を経験された方なら、こういった文章が日本語訳の問題として出題され、「何が修飾語か、何が主語か」なんて線を引きながらじっくり考えたこともあるかと思います。そうした作業が、中国語ではいらないのです。きちんとした表現で言えば、「日本語と同じ並びなので、難しく考えなくて良い」ということになります。
 
これら二つの「的」の特徴を踏まえるとどうでしょう?これは日本人にとってとても都合が良いのです。というのも、中国語のフレーズ(文章ではありません)も、日本語の脳を使って簡単にできるからです。上記の例でも、向こうに座っている髪の長い若い女性というのも、日本語の考えそのままに中国語の文章を作ることができます。
 
これは、文章の読解というよりかは、文章を作る、すなわち作文やスピーキングの際に活かすことができます。中国語を知らなくても、日本語の熟語を「的」でうまくつなぎ合わせることで、複雑なフレーズを作ることも不可能ではないのです。
 
では、では