読書リレー(25)ジョーナ・バーガー「インビジブル・インフルエンス」

 

 

今年2冊目はこれ。

社会心理学の観点から、「人が人に与える影響」について書かれたものです。ビジネス・パーソン向けに書かれた本ですが、内容が社会科学の専門分野の研究成果を中心に紹介した作りとなっており、とても知的好奇心をくすぐってくれる本です。

 

この本では、「社会的影響力」について、オムニバス形式で様々な角度から研究成果を紹介しています。章ごとのつながりはあまりなくやや独立した形になっているので、Kindleで読むぶんには非常に適したものとなっています(ただし、分量はそれなりにあります。)

 

それぞれが違うテーマを扱っているだけにまとめるのは難しいのですが、この本に一貫したスタンスとして、「人は自分の気づかないところで、意外にも他者からの影響を受けている」というものがあります。「自分が知らない間に」というのがミソで、人は自分で決定したと思っているものでも、実は他や社会からの影響を受けているということがこの本で余すことなく紹介されています。

 

例えば、人は、特にそれと意識していなくても、目に見える機会が多ければ多いほど、そのものに対して好感を持つといいます。この本でも心理学の実験が紹介されています。ある授業のクラスの中から無作為に選ばれた男子大学生が、「面識のない三人の女性から一番好感をもてる人を選べ」というアンケートに回答するという実験です。この三人の女性は、確かに男子大学生と面識はないのですが、同じ授業に参加をしています。このアンケートの結果、数多くの男子大学生が選んだ中で一番多くの票を集めたのが、「三人の中で、最も授業に出席していた女性」だというのです。男子大学生は、特にその女性の出席回数を気にしていたわけではないのですが、多く目に見えるからという理由だけで、好感を持てるという判断を潜在意識のうちにしていたということになります。

 

このほかにも、色々な例が紹介されています。そしてこの本の面白いところが、普通の研究書籍とは異なり、「こういう研究結果があるから、ぜひ日常生活でも気にしてみてね」という形で、実践を呼びかけているということです。まあ、ビジネス書だからという理由もありますが、この本で紹介された事例の多くは、確かに日常生活やオフィスでも実践してみたくなるような、「活きた知識」です。

 

では、では