読書リレー(26) 薬師院 仁志「英語を学べばバカになる~グローバル思考という妄想~」

 

2005年の本ですが、タイトルが面白かったので手にとって読んでみました。「英語を学べばバカになる」。仕事の関係で英語が必要であった私は、集中して英語を勉強した時期があったのですが、このタイトルが正しければ、私はすでにバカということになります笑 いやいやそうじゃあないだろう、ということで読んでみたのですが、内容としては、(もちろん)英語を勉強することが脳に悪影響を与えると言うような内容ではなく、英語を勉強すると言う行為の背景に存在する、グローバル化への間違った認識に対して警鐘を鳴らす本です。

 

日本には、「英語こそが唯一の国際共通語だ」という傾向があります。この態度というのが、著者の言う「まさに「アメリカ型のグローバル・スタンダード」に基づく世界観に根ざしている」とし、あやまったグローバル化であるとして、注意を促しています。確かに著者の言う通り、1990年代・2000年代のグローバリゼーションというのはいわゆるアメリカナイゼーションと同義であり、アメリカ式の文化やライフスタイルが世界を席巻している(席巻しているかのように見えた)時期だったのかもしれません。それに伴い、グローバル化=英語の強化という点が強調されていたのかもしれません。

 

また、「英語こそが唯一の国際共通語だ」という考え方も、決して新しくないと著者は説明します。戦前では、知識人層は英語に先立って、ドイツ語やフランス語などを勉強していたそうです。日露戦争後の講和条約も、フランス語で行われていたといいます。これは私も知らなかった内容であり、とても驚きました。

 

10年以上も前の本ですが、この本が提起する内容は現在においても色褪せていないように思われます。むしろ現時点の方が、この主張が当てはまるのではないかと感じてしまいます。1990年代後半及び2000年代においては、日本にとって海外といえば、アメリカでした。1995年の輸出相手国の内訳を見ると、最も多く輸出をしていた相手国は米国で、シェアは27・3%でした。しかしながらこの趨勢は変わっており、2010年の輸出相手国ナンバーワンは中国でシェアは19・4%となっています。米国は2番目でシェアは15・4%と、15年前と比べ10%ポイント以上落ちているのです。一方で、1995年当時輸入相手国ナンバーワンは米国でシェアは22・4%でしたが、2010年の輸入相手国ナンバーワンはやはり中国で、シェアは22・1%。米国は2位ですがシェアは9・7%まで大幅に低下してきており、、3位の豪州(シェア6・5%)との差が縮まってきている状況になっています。単純に経済の観点から抜き取って考慮しましたが、それ以外にもソフトパワーの面でも、他の国々の力が上がってくる中、アメリカの影響力が相対的に下がってきているのは否めないというのが現状です。

 

グローバリゼーションが、一辺倒から多極化・多文化へとシフトしていくなか、日本の中だけでしか通用しないいわゆる「閉ざされた国際観」に縛られないように、注意しなければなりませんね。この本の中には少し過剰とも思える主張も含まれてはいるのですが、根本の考え方は納得がいくものであり、考えさせられてしまいます。

 

では、では