だじりブログ

日々の読書から広がる考察

読書リレー(34) 失敗から逆転する方法とは? ー中尾政之「失敗は予測できる」

 

 

失敗は予測できる、だけじゃなく、逆転できるかもしれません。

 

本書では、工学的な観点から「失敗はどのようにして起きるのか?」「失敗をどのように防ぐことができるのか?」という観点について、様々な具体例を用いて説明しています。10年以上前の本ですが、古さを感じない本です。この本によると、古今東西ありとあらゆる失敗、例えば原発事故から車両の事故、企業の不祥事などありとあらゆる分野の失敗を分析した結果、その失敗のパターンは41に分けられることができるようです。そして筆者は、「失敗は予測できる」と断言します。というのも、「人間は必ず失敗する動物だが、同じような失敗を繰り返すため、次に起こる失敗事例は過去のものと必ず類似する」からだ、というのです。確かに、新しいテクノロジーが出て来たとしても、原因を深掘りして行くと、「コミュニケーションのミス」だったり、「設計上の不具合」だったりと、必ず共通点はあるわけです。過去から学べば、100%予測が可能というのも、あながち誇張表現ではなさそうですね。

 

では、なぜ人間は失敗を繰り返すのか?過去を振り返らないからです。そして、大抵小さな組織になればなるほど、過去を振り返らないといいます。本書でも、「事故は本業から分立した規模の小さい組織で起き」やすいといいます。なぜならそこは歴史が浅く、事故の類似性を調べたこともなく、リスクを感じたこともないからだそうです。「事故は「本丸」ではなく「二の丸」で起きる。」というのです。

 

こうした背景を持つ失敗ですので、失敗を防ぐためには、「過去から学べ」もしくは「人のふり見て我がふり直せ」ということに尽きるのかもしれません。それは関連する分野での失敗のみならず、全く関係のない分野でも共通項を見つけ出すことができると筆者は説明します。そうした中で、いかに共通性や類似性を見出し、頭の片隅にしまっておき、必要な時にアウトプットできるかが、失敗をうまく生かすことができるか、につながるわけです。

 

となると、失敗は自分の体験ではなく、他人の体験からも多少なりとも勉強することができるわけです。自分が行った失敗は記憶に染み着きやすいため、忘れないケースが多いです。しかし、失敗を防ぐためにも、過去から学ぶ・他人から学ぶという姿勢が必要になるのかもしれませんね。よくビジネスパーソンや政治家の中に、「座右の書」として野中郁次郎著の「失敗の本質」をあげられる方が多くいらっしゃいます。私もこの本を読みましたが、当初「人の失敗が書かれた本をどうして座右の書にしているのだろう?」を不思議がっていました。また内容も第二次世界大戦の日本軍の話と少しセンシティブなこともあり、身構えていたところもあったのですが、この本を読むとなんとなく腑に落ちました。失敗は人の経験からも学ぶことができるわけです。

 

ちなみに、グローバルな視点に立てば、自身の座右の書を「失敗の本質」とするのはNGかと思います。トピックが戦争で、しかも他の国を敵国として、戦争を仕掛け「敗戦」に至っているのですから、「敗戦」を「失敗」として、反省ではなく学ぶと捉え流ことが可能です。そのため、著者の想いがたとえどうあろうと、やはり他の国の人からはネガティブに捉えかねない、誤解されやすいところがあります。本自体は良書ですが、日本から一歩出た際には注意が必要です。(上海で中国人と会食をしている時、日本人の先輩社員がうっかりこの本の話をしてしまい、その場の雰囲気が凍りついてしまったという実体験を元にしています笑)

 

さて、話を元に戻しますが、そんな失敗も逆転できると本書では述べています。そのポイントとは、「仕事の設計手順の上流である要求機能を再考する」といいます。それはどういう意味でしょう?そもそも組織にしろ製品にしろ、形を持っているものにはその形がなぜあるのかという目的があります。それを達成するために形があるわけです。しかし、その形がその本来の目的を達成する唯一の方法ではないかもしれません。もしかすると、その目的を達成するには別の手段があって、そちらの方が失敗を防ぐことができる可能性を秘めているわけです。失敗をした時に、そうした目に見える形のもの、いわゆる下流部分にフォーカスするだけでなく、「そもそも」をつきつめて目的論的モノの見方をすることこそが、逆転をするために必要な考え方といいます。

 

以上が本書の大まかな内容ですが、この本の魅力は何と言ってもその具体例の多さにあります。文字通り、古今東西ありとあらゆる失敗が乗っていますので、「他人の不幸は蜜の味!」という方(いないか笑)にはおすすめです。

 

では、では