檜山 敦『超高齢社会2.0』〜読書リレー(72)〜

高齢化社会への提言。 

超高齢社会2.0: クラウド時代の働き方革命 (平凡社新書)

超高齢社会2.0: クラウド時代の働き方革命 (平凡社新書)

 

 

ICTを使った高齢化社会への対策について論じた本です。技術者らしく、最新のテクノロジーをうまく活用し、高齢化した世代でもうまく雇用を行うことができるような仕組みづくりについて考察しています。

 

他の記事でも述べましたが、日本はかつてないほどのスピードで高齢化社会に突き進んでいます。『未来の年表』でも示されていますが、2050年までには、日本の人口は1億人を切り、高齢者(60歳以上)の割合が増加していきます。また、これに伴い労働者人口も数十年後には1000万人を切るという、未曾有の人手不足に陥る可能性を秘めているわけです。

 

 

 

こうなると、労働者として高齢者の活用が必要となってくるのですが、高齢者はそもそも労働にあてられる時間が少ない(体力がないため、集中できる時間は限られてしまいます)、また、知識はあるものの体力がないため、移動に制約があります。こうした、空間と時間の制約がある高齢者の人材をどのように生かすか、というのが今後の課題になってくるわけです。

 

しかし、この本では、こうした問題をICTが解決してくれるという、比較的楽観的なビジョンを提供してくれています。具体的には、ソフトバンクが提供するペッパーのような、ロボット型のハードウエアを準備し、そこに接続することで、高齢者がそのハードウエアを操作し、自身のスキルを若い世代に伝承するということが可能になるといいます。この本が提示している具体例としては、とある美術館で、高齢者が遠隔でロボットを操作し、入館者に対し美術館の中の展示品をそのロボットを介して紹介するという事例があります。これにより、高齢者はその場所にいる必要もありませんし、時間も入館者対応が必要な時だけ、必要な分のみ働くことが可能なわけです。

 

このような働き方が推進されることで、より多くの高齢者が働きやすくなります。これにより、健康寿命の増加につながることが期待されています。健康寿命とは、痴呆や身体的な老衰により、活動が著しく制限される前の状態を指します。これは、実際の寿命とは異なる概念であり、健康的であることと同義です。日本では、この実寿命と健康寿命に10歳ちかくの差が存在しており、どうやってこのギャップを狭めていくかが課題にもなっています。この課題に対しては、しっかりと仕事を与え、やりがいを与えることが重要と考えられています。そのため、こうした細切れの時間を活用した労働スタイルというのは、こうした問題の解決につながるわけです。

 

この本でも紹介されていましたが、高齢者は年々、健康になっています。これはひとえに現代医学の進歩によるものですが、寿命の増加にともない、ライフサイクルも見直す必要があるのではないかと考えてしまいます。言い換えれば、人生をもっと長いスパンで見て、どのように自分の人生を楽しんでいくのか、というアプローチが必要なのかなと、そんなことを考えさせてくれる一冊です。

 

では、では