藤井直敬『拡張する脳』〜読書リレー(76)〜

 

拡張する脳

拡張する脳

 

 脳科学の延長で、VR(Virtual Reality)などに興味を持ち始めた今日この頃。こうした研究者の本は特に興味深く、色々読み漁っています。まとめ記事は追って紹介するとして、まずはこの本の読後録から。

 

脳とコミュニケーションについて論じた本です。一つの脳だけでなく、社会的に見た脳の働き方についてどのように考えるべきなのか?また、現実を新しく生み出すSR(Substitutional Reality)の研究状況がメインで説明されています。

 

特に面白いのが、SRの研究です。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、現実に似せた映像(例えば、実験当日と同じ服装を着た人が映像に映ったり、現実と違和感のないストーリーが映し出される)と、現実をうまく組み合わせることで、どれが現実なのかわからなくなる、というものです。

 

この本で紹介されていたのが、実験協力者が被験者にHMDを装着し、実験協力者が被験者に声をかけます。この時にはすでに映像は切り替わっています。次の瞬間、実験協力者の容体が代わり、たちまちゾンビになってしまう、というものです。これに被験者は驚き、人によっては思わずHMDを外してしまうこともあるそうです。

 

この実験からわかることは、人間はSRによって、作り出されたものも現実として捉えることができる、ということです。これは、HMDといったハードウエアのスペックに関係ないということがわかっています。すなわち、現実を現実としてみるのも、作られた現実を本当の現実と見るのも、「脳」の働きによるものだ、ということが言えます。

 

ここからわかることは、脳のメカニズムをしっかりと理解することで、現実と同じような体験をすることができる、というのです。これは、今後のテクノロジーとして、期待ができそうですね。

 

では、では