中川右介『ヒトラー対スターリン 悪の最終決戦 (ベスト新書)』〜読書リレー(81)〜
二人の観点から先の大戦を見た、新書らしい新書です。
ヒトラーとスターリンという、当時のカギを握る政治家にスポットライトを当て、第二次世界大戦までの動きを捉えた本です。新書の中に、第一次世界大戦から第二次世界大戦までの期間を説明しているため、詳細な話はなされていませんが、新書らしいまとめ方がされています。
面白いのが、彼らがトップの政治家として成り上がっていくまでのプロセスです。どちらも、「誰にも嫌われないようにして」成り上がっていきます。当時、政争によって政治生命を失うどころか、テロによって正真正銘生命を失うことだってあったわけです。そうした中で、彼らは、誰にも嫌われないようにして生き延びていたわけです。つまり、敵をつくり、敵の敵は見方という形で、多数派に入ることで、トップに上り詰めていったのです。
また、もう一つ興味深い視点が、どちらも戦争を避けようとしていたという点です。お互いにお互いの実力を認めているからこそ、お互いに正面衝突を避けたかったのです。しかしながら、お互いに避けようとするあまり、最終的に戦争にぶつかっていきます。そのプロセスをこの本では描いていますが、非常に面白いです。
その中で描かれているのが、集団安全保障という考え方です。これらは、平時の場合には同盟国の多さを示すことで侵攻しづらいというという点で、戦争に対する牽制が働くのですが、二国間同士で同盟を結んでいた場合、その同盟に基づき各国が参戦してしまうので、いざ戦争が始まると、直接関与のない国家まで戦争に参加してしまうというジレンマが生じてしまいます。先の大戦でも、ドイツのポーランド侵攻により、次々と国家が参戦し、第二次世界大戦へと発展していきます。
今、情勢が必ずしも良好とは言えないアジアですが、我々も、こうした過去から学ぶ必要があるのかもしれません。
では、では