西川恵『知られざる皇室外交』〜読書リレー(94)〜

 

知られざる皇室外交 (角川新書)

知られざる皇室外交 (角川新書)

 

 

社会派ブロガーとして有名なちきりん氏が自身のブログ「Chikirinの日記」で「これぜったいおすすめ!」とコメントしていたので手にとって読んでみました。分量としては新書の割には多めですが、非常に内容が濃い。

 

私のような凡人が普段生活している中ではあまり気にすることのない皇室ですが、日本の象徴として外交面での功績があるのであり、その点を改めて評価するべきなのではないか?という内容の本です。皇室外交という題名ですが、これは宮内庁からすると「皇室は外交はしていない」ということですし、実際皇室は政治・外交とは距離を置く立場で活動を行なっているのですが、皇室の海外訪問によって関係を修復・向上させるケースは枚挙に遑がないことが、この本からわかります。むしろ、皇室のある程度フェアな立場をうまく利用することで、こうした難局を乗り越えてきた、という姿がみて取れるのです。

 

私にとって新鮮だったのが、オランダとの関係修復です。サッカーで強い、というイメージしかないような今のオランダですが、第二次世界大戦後における反日感情はひときわ目立っていたというのです。大戦時、オランダが統治していたインドネシアに侵攻し、駐在していたオランダ人を捕虜にし、過重労働などの厳しい待遇を強要させたそうです。このことがオランダ人の集合的記憶として残り、反日感情につなげて言ったというのです。しかしこれを皇室の交流によって解決へと導くのです。

 

外交上重要な働きを帯びるのが、その国の国家元首であったり、政治家であったりするわけです。そうした人々が、日本に公務で来るときに、接することができる日本人というのが皇室の方々な訳です。このため、皇室の方々の与えるイメージ次第で、一国のトップの日本観を変えることができる、というのが事実なのです。実際この本でもそうした事例が数多く紹介されています。

 

また、両陛下の日本戦没者慰霊の旅についても取り上げられています。今週両陛下は沖縄を訪問されましたが、そこでも第二次世界大戦における戦没者の慰霊を行なっております。これに限らず、南・西太平洋諸島にも足を運び、戦没者の慰霊のみならず現地の人との交流も行なっています。こうした事実は第二次世界大戦に対する日本のスタンスを、改めて発信していることにつながっているように思えてならないのです。

 

では、では