岡島悦子『抜擢される人の人脈力 早回しで成長できる人のセオリー』ー読書リレー(102)ー

人脈と聞くとあまりいいイメージがありませんが、この本を読むとキャリア形成の上でいかに戦略的にアクションを行なっていくべきなのか、考えさせられます。

 

抜擢される人の人脈力  早回しで成長する人のセオリー

抜擢される人の人脈力 早回しで成長する人のセオリー

 

 

前掲の岡島悦子氏による人脈について述べた本。年間数百人のマネジメント層のビジネスパーソンと知り合う中で、どのようにして成功に結びつくような経験を積み重ねてきたのか、その体験談をベースに、独自のキャリア論と人脈論について述べています。本の内容のために、読者が限られてしまうとは思いますが、20代30代の「自分の名前で勝負したい」というかなりのバリバリキャリアを求める人にとっては、いかに自分という商品を売り込んでいくかという問いをしっかりと考える上で、この本は非常に役に立つと思います。

 

この本の面白いところは、キャリアにとって大きくプラスとなる「抜擢」を戦略的に勝ち取る方法を考えていることです。人は抜擢されることによって、この本の言葉を借りれば、1つ上のレイヤーに行くことができ、仕事での視野を広げ、さらにお声がかかるという正のスパイラルに持って行くことができるというのです。それはまさに雪だるまのように、一番初めは小さな塊が、どんどん転がることで大きくなって行き、最初の原型からは想像がつかないほど立派に成長するような、そんな状態に似ています。これをうまく行うために、本書では以下のアプローチを紹介しています。


1.自分にタグをつけよ(自己の訴求ポイントを明確化せよ)
2.コンテンツをつくれ(「おっ、コイツは」と思わせる実績事例を)
3.仲間を広げよ(お互い切磋琢磨し、次のステップを共創せよ)
4.自分情報を流通させよ(何かの時に自分のことを思い出してもらう)
5.チャンスを取りに行く(実力以上のことに挑戦し、人脈レイヤーを広げる)

この順番だというのです。

 

これを読んだとき、学生時代に思い当たる節がありました。私は学生時代、台湾旅行を機に中国語にハマり、いろんな友人に「台湾面白いわ、中国語面白いわ」と語っていました。意図していたわけではなく、純粋な興味本位からの発信だったのですが、「どうやらうちの学校に中国語ギークがいるらしい」という噂が広まり、いろいろな話が舞い込んでくるようになりました。例えば今度中国から留学生が来るから、チューターとしてサポートしてほしい、とか、中国語サークルを立ち上げるからサポートメンバーとして参画してほしい、とか、はたまた中国語の文献の翻訳をしてほしい、などなど、気がつけば自分が意図していなかったような話がどんどん舞い降りてきたわけです。もちろんその中には、自分の能力から見ても少しチャレンジングなオファーもありましたが、そうしたものを1つ1つ片付けて行くうちに、自分の「中国語、台湾」の理解がどんどん深まるような気がしていったのです。

 

大学を卒業し社会人になってからは特段そういう経験がなかったため、自分の心の中ではあれは特殊な事例だったのかということで片付いていたのですが、この本を読んで「ああ、あの時の体験はこういうことだったのか」と、改めて感じることができました。

 

今振り返ると、あの時の自分はいい意味でタグ付が自然とできていたのだと思います。ただそれを、自然発生的に起こすのではなく、人為的に行うことこそ、戦略的な人脈を形成する上では大事であるということがわかったような気がします。

 

前掲の堀江貴文著にもありましたが、3つのタグ付けを活用して、他にない人材を目指すというものがありました。その本では、結局タグといっても、自分の名前で仕事ができるようになった人たちの後付け論的なものだ、という理解しかありませんでしたが、この本のおかげで、少し実践的に考えることができそうです。

 

では、では