ピョートル・フェリークス・グジバチ『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』〜読書リレー(110)〜

 キャリア論において最も新しいとされる本です。既存にとらわれず新しい価値を生み出すことができるか、これが今求められているものだと強く訴えています。

ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち

ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち

  • 作者: ピョートル・フェリクス・グジバチ
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2018/02/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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グーグルのピョートル氏が描く新しいエリート層について書かれた本です。ピョートル氏は、ポーランド出身の方ですが、日本在住が長く、海外における日本という客観的な立場と、日本の中での日本視点という主観的な立場を双方繋ぎ合わせたような論考のスタイルをする方です。私も以前「0秒リーダーシップ」を読んで、新しいリーダーシップの形について理解を深めることができましたが、今回の本は単にリーダーシップにとどまらず、これからの社会を支えるであろう新しい価値を生み出す人たちについて述べています。

 

特に背筋が伸びる思いで読み進めたのが、今の日本に対するピョートル氏の分析です。ピョートル氏は、日本はオールドエリートの認識が色濃く残る社会だというのです。オールドエリートというのは、日本人にとっての従来のエリート観であり、「有名大学を卒業し、一部上場の大手企業に就職し、順調に出世コースに乗っている人」というイメージだといいます。

 

これは、日本という国が、1から10にする、すなわち既存の仕事を大きくしていくだけで事足りる時代の中にあった時には有効だったといいます。すなわち人口増に伴い規模の経済が働き、国内の需要で経済成長をまかなっていく、というようなストーリーです。ここでは、長期的なスパンにおいても比較的楽観的に捉えることができたので、長期的な地位の保証がなされていました。

 

しかし今は状況とは程遠い状況にあります。人口減もそうですが、国の力が衰退していると指摘します。そうした中では、オールドエリートと言われるような人々において、長期的にその立場が保証されません。しかし日本人は未だに、そうしたオールドエリートが絶対的というイメージを払拭するまでには至っていないのです。

 

この中で、新しい価値を生み出すマインドセットが必要だと著者は述べます。具体的には、荒削りでもいいからビジョンを持ち、周りを巻き込みながら何かを成し遂げていく、ということが重要だといいます。これこそが、著者の言うニューエリートだと言うのです。そしてこの本では、そうしたニューエリートを感じさせる人々の事例を多数紹介しています。

 

そしてピョートル氏は、日本はもともと自己実現をしやすい素地があったとし、加えて日本の文化の固有性に着目し、文化的な活動を収入につなげるだけのマーケットがあると述べた上で、このニューエリート創出における日本のポテンシャルを強調しています。

 

やはり思うのは、こうした本を読んでいると、本当に様々な人が様々な視点で、様々な分野で「日本は価値観を変える必要がある、そしてポテンシャルはある」と述べていると言うことです。前回紹介した遠藤功氏も、「生きている会社、死んでいる会社」の中で、会社を生きた状態にしていくことの重要性を述べています。しかしその根底には、価値観を変えることで、ポテンシャルを秘めた会社がたくさんある、と言うことを示唆しています。

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特に最近では、官僚を中心とした文書改ざんやスキャンダルなどが度々報じられ、そうした今までエリートに対する社会の考え方が変わりつつあるような社会の趨勢になっているような気がします。社会というのは何かトリガーがないと認識を変えるような議論が起きませんが、今そのフェーズに来ているような、そんな気がしなくもありません。社会学をかじった人間として、もう少しこの議論の流れをウォッチしていけたらなと思っています。

 

では、では