中原圭介『日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業』〜読書リレー(106)〜

今まで読んだ本の中で、一番しっくりくる説明を提供してくれたのがこの本です。 

日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業 (講談社現代新書)

日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業 (講談社現代新書)

 

 

非常にきになる今後の日本経済について、賃金・雇用・企業の三つの観点から述べているこの本。新書ということもありそれぞれの説明はあまり深堀はされていない印象ではありますが、全体の見取り図の提供という点では、恐ろしいほど現実を直視させてくれるような、そんな本です。また、最近私が読んできた本の論点をまとめてくれたという点では、個人的にかなり効用の高い読書体験をすることができました。

 

この本が描くのは、かなり悲観的な将来です。それは賃金・雇用・企業において、以下の観点から説明がされています。

 

①賃金:アベノミクスは人々の賃金を下げる結果になった

アベノミクスが円安によって株価や企業収益を高めるかたわらで、輸入品の価格上昇によって人々の実質賃金を押し下げるという弊害をもたらした。大企業が最高益を叩き出す一方では、8割の人が「生活が厳しくなった」という調査結果が出ている。

 

②雇用:生産性向上は、雇用のπを減らし、さらなる格差の拡大につながる

前述の「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」にある通り、生産性向上は人件費削減と同義であり、工場の完全自動化によって単純労働の雇用機会は減ることとなる。生産性向上により、高度な知識を有する人材の生産性が向上しさらに富が集約する一方で、単純労働における供給過多により、これらに従事する人々の雇用状況はさらに悪化する。

dajili.hatenablog.com

 

③企業:日本の成長を支えてきた自動車産業と電機産業双方の将来が危ない

特に自動車産業については、世界的に加速するEV化に日本の自動車メーカーが追随できているか不安視されている。日本に550万人とされる日本の自動車産業が危機に瀕している。

dajili.hatenablog.com

 

 

すべての分野について、過去に読んだことある本などと論点が共通しており、斬新な視点はありませんでしたが、その分重みをもって説得力を増しているような気がします。これらの事態を先送りせず、何らかの形で解決に向けた取り組みを行う必要があるということを、逼迫感を持って知らしめてくれる、そんな本です。

 

では、では