中野雅至『ニッポンの規制と雇用~働き方を選べない国~』〜読書リレー(127)〜

タイトル通り、日本の雇用については賛否両論ありますが、真に働き方を選べないという点ではマイナスなのかもしれません。 

ニッポンの規制と雇用 働き方を選べない国 (光文社新書)

ニッポンの規制と雇用 働き方を選べない国 (光文社新書)

 

 

労働論・雇用論に関する本が様々ある中で、この本もまたオーソドックスな現システム反対の視点に立ち現在の日本の労働とこれからのあり方について解説しています。

 

この本の主張は、日本の労働構造である「内部労働市場 システム」(新卒一括採用、年功序列、企業内労働組合)がゆっくりと日本社会のニーズに即して形成されてきたけれども、すでにそのシステムが正常に機能する社会的な背景は薄れてしまっているから、あり方を考えないといけないんじゃないか?というものです。

 

ここまで見ると、本当に他の一般的に言われている本と同じような内容じゃない?と思いますが、この本の特徴として、個人ー企業ー政府間の「規制」という観点からこの問題を考えている点にあります。

 

この中で、内部労働市場システムを優先するあまり、企業への規制というのが緩和されてき続けたと言います。この中で、相乗的に企業の立場が強くなっていき、この問題が顕在化しつつある内部労働市場システムを変えようにも変えられなくなっている、という状況になっているのです。

 

新卒一括採用、年功序列、企業内労働組合は、様々な場所で様々な人がその欠陥を議論していますが、それでもこのシステムがなくならないのは、こうしたシステムが、企業にとってメリットがあるからです。このため、個人はこうしたシステムに乗ることを求められます。まさに「働き方を選べない国」な訳です。

 

ただし個人的には、こうしたシステムを現在早急に変えなければならないという観点には少し懐疑的です。「必要は発明の母」という言葉があるように、このシステムが色々批判を受けながらも存続しているのは、そのニーズがシステムを変えるまでには育っていないということを意味しているわけです。もちろん、取引コストの考え方から、従来のシステムのやり方の経路依存性に影響されて、変えるにも変えられないという状態にあっている可能性も否めませんが、このシステムで日本の企業だって最高益を叩き上げているし、なんだかんだ言われてても国際的には競争力は持っているんだから、いいんじゃないか?と思ってしまいます。

 

ただし、これからもこのシステムが続いていくかと言われると、またそれは別の話なのかもしれません。人口減や高齢化などの問題が徐々に顕在化しつつある中、従来通りのやり方でうまくいくとは限らないわけです。いずれはそうしたニーズに合わせて、この内部労働市場システムは軌道修正を求められていくのでしょう。

 

では、では