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加藤俊徳『高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか』〜読書リレー(139)〜

 

高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか (PHP新書)

高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか (PHP新書)

 

 

新書らしいタイトルの本(笑)。他国と比べても学歴を重視する日本社会に対するアンチテーゼのような形で書かれている本です。

 

日本とは、なんとまあ学歴が大きく前面に出ていることか。本屋に行けばビジネス書のタイトルには「東大」「ハーバード」「スタンフォード式」なんて言葉がずらり。こうした言葉のシグナリング効果があることは否めませんが、それにしてもこうした学歴(とくに大学の学歴)にあやかろうという動きは、ビジネスの世界や社会においても根強く残っています。しかし著者はそうした動きに対してNoを唱えています。

 

ここまでの議論であれば他の書籍と大して変わらないのですが、この本の特徴的な部分が、脳科学の観点からこの議論を行なって言ったという点です。著者曰く、人間の脳は、大学受験を行う20歳前後以降も成長し、30歳前後までは成長を遂げると言います。また、一応30歳前後で成長が一段落するものの、そのあとも鍛えれば一生涯にわたって成長を続けることがわかっている、というのです。このため、20歳そこそこの時点での、しかも学業成績という一面的な能力だけで人の能力を判断することは、到底できないと言います。

 

また、高い学歴で求められる脳の働きが、偏っているという点も著者は指摘しています。脳の中には、ロケーション別で機能が別れていることがわかっており、大きく分けて8つあると言います。思考系・感情系・伝達系・運動系・聴覚系・視覚系・理解系・記憶系だといいます。偏差値の高い人は、思考系や記憶系の脳番地が非常に発達しているそうです。いっぽうで、感情系の脳番地が未発達なことが多いと言います。これは、受験勉強を通じ試験合格に必要とされる知識や考える力を集中的に伸ばした結果、他の番地の能力を鍛えることをおろそかにしてしまったというのです。このため、他の人とのコミュニケーションを阻害する大きな原因になっていると言います。そしてその傾向は、高学歴であればあるほど顕著だと述べ、注意が必要だと言います。

 

それを克服するためにはどうすれば良いか。著者は学歴が決まる20歳以降もしっかりと脳の力を伸ばしていくような環境を整え、それをしっかり評価する社会の仕組みに変えていくことが必要と述べています。これは、特に社外の知識習得(学び直し)を必ずしも促進しない日本企業に対する忠告のように聞こえてきます。

 

また、脳を継続的に成長させていくには、「あえてわかりきらない」という考え方も重要だと述べています。全てわかりきってしまうとそこで知識の吸収がストップしてしまう。そうなるとすぐに老化が始まってしまうと言います。現状に甘んじては行けないということですね。精進精進。

 

では、では