ブレットキング『拡張の世紀』〜読書リレー(156)〜
フランスに向かう飛行機の中で読んだ本。前々から気になっていてずっと読みたかったのだが、分量の多さ(Kindleで表示された読了目安時間は9時間!)にビビり、ずっと読まずに置いておいてしまった本でした。しかし、長距離フライトであんまりすることなかったので、これを逃したらあとはないという背水の陣でこの本を読みました。
内容としては、Fintech等、Tech界の動きを予見して来た著者が、「Augmented」という言葉をキーワードに、近未来のテクノロジーを予測するものです。ただ、内容はAR/VR、ロボティクスやFintechから、スマートシティに至るまでかなり広範囲にわたっており、日本で創造されているところの拡張という考え方からをさらに拡大解釈しているような気がします。
落合陽一ほか多くの人が述べているように、人間の歴史というのは「自身の機能拡張」であるということが、この本を読むとさらに理解できます。すなわち、人間は自身の能力を具現化し、外の世界に出して行く、という考え方です。例を挙げると、メガネなんかは、人間の視力を向上させるのに役立っています。この捉え方で行けば、今までのテクノロジーの発展も非常にすっきりと理解することができます。
逆に言えば、そういった「自身の機能拡張」が今後も起きうるということです。それの最たる例が、VRだったり、ARだったり、はたまたロボティクスだったりするかなと思っています。
この本を読んで思ったのが、近未来における日本のポジショニングです。いや、いいところにつけているなと。ロボティクスは日本のリーディング分野ですし、VRやARについても、従来のサブカルチャーなどですでに文化的素地ができています。
さらに、各論で見てみると、ここで挙げられている内容というのは、日本で研究されて来た、もしくは日本で出版されている本の内容に比べれば、どうしても浅い印象を受けます。VRについては、「 VRビジネスの衝撃」「バーチャルリアリティ入門」が詳しいですし、「拡張する脳」でも、脳神経学の観点からこの拡張と人間の身体の関係性についてより深い議論を進めています。
VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む (NHK出版新書)
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この本は単純にそうしたホットなトピックを広く浅くまとめたというような印象を受けます。もしくは日本の研究が進んでいるのかもしれません。もし後者が正であった場合には、 日本はかなりのアドバンテージを有していることになると思います。とても興味深い分野なのかもしれません。
では、では