9月21日 〜経営判断・経営戦略について思うこと〜
今日の授業は午後から。と行っても、午前中は前日のパーティの影響が残り、またどうやら風邪を引いたらしく体調は最悪。少し休んでから学校に行きました。
午後はFinancial Market and Evaluationの授業。前日行ったケースの答え合わせの授業でした。このケースでは、意図的にNPVがマイナスに設定されており、「マイナスの指標が出ているのにも関わらず、投資判断をすることもある」ということについて考えさせられた課題でした。
具体的にどう言うことでしょう。このケースでは、外部調達していた部材の内製化について検討すると言うものでした。内製化の理由については、品質や信頼性で調達先の信用が著しく低下しており、加えて市況の悪化により調達先の経営の悪化が懸念されている状況でした。そうした中でNPVを用いた投資判断を迫られていた、と言うのがこのケースでした。
NPVと言うのはしっかりとした数値で投資結果が見えるため、投資判断には非常にわかりやすい指標として活用されているのですが、いくつかの指数に非常に影響を受けるため、これらを考える必要があると言うのです。それが、次の二つです。
1. 割引率
2. 回転資金の増加額
特に割引率については、この数字をどう設定するかと言う点においても恣意性が含まれます。恣意性を含む指数に基づいて計算された指標は、それこそ恣意的なわけです。この授業では、PE出身の学生が、「ケースで扱われている割引率は、現実から見て低すぎる!」と指摘し、「この割引率は妥当」とする教授と白熱した議論を行っておりましたが、ここからも分かる通り、割引率は人の意思によって変えられるわけです。すなわち、客観的かつ可視的な指標だといえども、その内実を疑ってかかると言うことも大事だと言うことです。
もう一点気になるのが、そうして算出された数字が、テストの試験では明らかに「投資はしない」と言うものだったとしても、現実の世界で「投資をする」と言うことは往往にしてありうる、と言う点です。今回のケースでも、NPVは明らかにマイナスなのに、投資をするという判断を下したグループは多数にのぼりました。これは、誰もが間違った結論を導いている、と言うことにはなりません。ここから分かるのは、結局のところ意思決定に必要な情報というのは、可視化の限界があるということなのでしょうか。
こんな問題意識を持ちながら、次の授業であるIntroduction to Strategyを聞いていたら、また同じような点の議論がありました。それが戦略の本質である「Outside-in」「Inside-out」というものです。前者を「Market Based View」後者を「Resourced Based View」と言い、長年経営戦略論において二大派閥として議論され続けてきた内容だと言います。(私は三谷宏治の『経営戦略全史』を読んでいたので、前提となる知識はありました)
ここでふと思うのが、「じゃあ何がOutside-in を決め、何がInside-outにするんだ」という点です。結局のところ、この点について数値で持って客観的な指標で結論づけることができた学者はいないわけです。
また、ビジネスのフレームワークにしても、上記のNPVの判断と同様、結局のところフレームワークを用いて判断するのは人間であり、そこには結局人間の主観的な恣意性が入ってきてしまう、ということになります。そういう点にビジネスの非科学的なところがあるのかなと思ってしまいます。
このIntroduction to Strategyの教授もその点については立場はクリアであり、「戦略論はアートのようなものだ」と言っていました。我々もさながら芸大に入ったかのごとく、絵の具の使い方と道具の使い方は教えられても実際に描くのは自分というような内容なのかなと思います。まあそうした非科学的なところに、ビジネスの面白さがあるという点もまた真実なのですが。
では、では