見城徹『たった一人の熱狂』〜読書リレー(161)〜

 

たった一人の熱狂 (幻冬舎文庫)

たった一人の熱狂 (幻冬舎文庫)

 

 

久しぶりに読書リレー復活です。以前想定していた通り、プログラム中は本を読む時間は全くなく、プログラムから準備された大量のリーディングとディスカッションを消化するのに手一杯で、自分の好きなような読書ができていませんでした。ただ、休み期間ということで少しずつ本に手を伸ばしている、そんなような状態です。

 

まずは軽い読み物からということで、少し前に読みたかった本であるこの本から。幻冬舎を立ち上げた見城徹による仕事論。今のMBAでの学びの振り返りとともに、仕事に対するあるべき姿勢についてまとめられた本です。これが個人的には面白い。

 

ここで述べられているのは、圧倒的な「努力論」です。結果を出すためには全て努力で繋がっている。もし誰かと競争していて、自分が負けてしまったのであれば、それは自分の努力が足りなかったから、という考え方です。

 

この考え方は、グロースマインドセットに近いような気がします。グロースマインドセットとは、「自分の才能や能力は、経験や努力によって向上できる」というベースとなる考え方の元、挑戦や目標に対しポジティブに捉えていくというものです。

 

成果を出すには、圧倒的な努力しかない、でもその圧倒的な努力をするためには、本気になる必要があるといいます。

 

 

そして、現代の起業家に対しても、かなり辛口なコメントを残しています。特にスタートアップの理念についての視点が興味深い。起業を目指す若い人には、「社会貢献をしたい」「世の中を良くする」という理想を掲げる人がいますが、その考えには見城氏は非常に疑念的です。そうした理念や目標は一見すると美しいのですが、ではその目標はどうしたらたどり着けるかというと、結局資金を調達し、ビジネスとして成立しなければなりません。まずビジネスとして成立しなければ、理念は理念のままでしかありません。こうした視点から、見城氏は、「熱狂と圧倒的努力さえあれば、最初は理念なんてなくてもいい」と述べます。

 

INSEADは起業家養成学校とも言われており、学校側の見解によると(こう書くのはまだ私がこのデータに懐疑的だからです笑)卒業生の約5割がスタートアップ関連の仕事についているといいます。それだけ起業を推進している環境の中にいるので、私を含め多くの学生が起業家精神に徐々にインスパイアされていっているような気がします。

 

ただ何か違和感を感じていたのが、「はじめに理念ありき」というような考え方です。これはビジネススクールという環境上仕方のないことなのかもしれませんが、まずビジネスをどうするかという話以前に、「あなたの取り組むべき課題は何か?」という点にフォーカスしすぎているような気がします。そうした理念・理論が先にあり、実践がないがしろにされているのかもしれません。

 

忘れてはいけないのが、ここはあくまでも学校であり、ある種社会から隔離された場所にあるということ。そうした考えに触れうつつを抜かしていた自分に対し、「現実は甘くないよ」とお叱りを受けたような、そんな読後感でした。

 

では、では