だじりブログ

日々の読書から広がる考察

Silicon Valley Trek①〜シリコンバレーのエコシステム〜

以前の記事でも紹介した通り、P4終了からP5開始までの一週間、アメリカはカリフォルニアベイエリア(サンフランシスコ〜サンノゼまでのエリア)にて、INSEADのElectiveであるSilicon Valley Trekに参加してきました。このTrekでは、一週間かけて、シリコンバレーの企業を訪問し、ゲストスピーカーとのディスカッションを通じてシリコンバレーのビジネスについての知見を深めることを目的にしています。

 

INSEADにおいて、我々学生が普段口にする「Trek」には大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、MBAプログラム即ち学校がオフィシャルに主催するTrekで、選択科目として履修することになり、参加すれば単位がもらえるというものです。内容としては、純粋な企業訪問のTrekもあれば、観光・企業訪問の双方を織り交ぜたTrekがあります。Class of July 2019では、シリコンバレーイスラエル・中国・インド・ドバイ等が開講されていました。二つ目は、INSEADのClubが主催するTrekで、「地域×セクター」という二つの切り口に基づき、それぞれのClubが企業訪問をセッティングするというものです。単位はとれませんが、特定の分野にフォーカスしたTrekになり、よって必然的に就活色が強くなりますので、その分野に興味のある学生にとっては非常に費用対効果の高いTrekになっています。私が把握しているもので、「ロンドン×金融」「アムステルダム×起業」「香港×PEVC」「ジャカルタ×テック」などが企画されており、私もこれらいくつかのTrekに参加しました。そして最後に、学生の有志が主催するTrekがあります。これはある国の出身の学生が、その国の文化を知ってもらおうと主催するものです。企業訪問よりも文化体験の方が色濃くなるのがこのTrekの特徴で、我々の代では、日本のほかレバノンイスラエル・ブラジル等が企画されています。

 

そうした数あるTrekの中でも、このSilicon Valley Trekは非常に人気があり、25名の参加枠に対して多くの学生が応募します。学生はBidding pointという、選択科目・キャンパス選択に使われるために各学生に均等に配布されたポイントを使い、このTrekにポイントを投票することによってTrek参加の意向を表明します。そして、投票したポイントの多い学生から順番に枠が割り当てられます。私はこのTrekにどうしても行きたかったので、かなりのポイントをつぎ込みました笑

 

ではどうして個人的にそんなにも行きたかったのか。理由としては以下三つがあります。

アメリカの理解

恥ずかしい話、私は仕事・プライベート含めアメリカに行ったことがありません。中国語ができるということにかまけてアジアの探究を急ぐあまり、人生の中でアメリカに行くタイミングを完全に失ってしまったというのがあります。このため、このTrekによってアメリカの食わず嫌いを克服したい、そんな思いがありました。

 

②テック総本家のシリコンバレーについての知見を深めたい

私はテクノロジー(ハードウエア・ソフトウエア双方)に興味を持っていたので、シリコンバレーは避けては通れません。多くのテック企業が本社を構えるシリコンバレーでは、日々イノベーションが起きていると聞いていましたが、果たして本当にそうなのか?この目で確かめて見たい、という想いがありました。

 

深センとの比較

少し逆説的にはなりますが、このTrekを通じてアジアの可能性について探って見たいというものがありました。私は仕事柄、「ハードウエアのシリコンバレー」と呼ばれた深センに訪問し、そのダイナミズムを肌で感じてきました。そうした中で、口々にベンチマークとして取り沙汰されるのが「シリコンバレー」でした。では深センはどうシリコンバレーと違うのか、アジアはどういう特色を持っているのか、シリコンバレーを通じて映し鏡のように見て見たい、というモチベーションがありました。

 

そうして応募したTrekですが、総じて満足度の高い一週間でした。というのも、ゲストスピーカー・訪問企業の質が良かったからです。一例を挙げると以下の企業を訪問しました。

 

テック企業:LinkedIn、Wework、Square等

スタートアップ:Ycombinatorからも出資を受けたスタートアップや、シリアルアントレプレナー

PEVC:Y-Combinator、CVC等

その他:エッセイスト、エンジェル投資家、等

 

様々なバックグラウンドからなるゲストスピーカーを通じ、短期間でシリコンバレーの全体像を把握できたのは非常に有益だったと思います。

 

そうした中で感じたのが、エコシステムの重要性です。シリコンバレーのエコシステムの特徴を挙げるとすれば、大きく以下の二点に集約されると思います。

 

①PEVCの存在

ゲストスピーカーが口を揃えて言っていたのが、「シリコンバレーは持続可能である」ということ、そしてその理由として「PEVCの存在」をあげていました。すなわち、世界中からお金が集まり、熱意を持った起業家がファンディングのために集まる場所としてシリコンバレーが機能している。このため、テクノロジーが進化して言っても、場所としてのシリコンバレーが消えるわけではない、ということを豪語していました。

 

この説明に正当性を感じるのが、今のスタートアップの特徴です。現在のスタートアップの特徴は、ほとんどがローカル市場にフォーカスしています。というのも、ソフトウエア・アプリを使って解決するのは、結局のところローカル市場のある意味アナログな部分であり、目に見える製品のような、グローバル市場共通で価値が認められるものというのは少ないように見受けられます。このため、どうしても昨今のスタートアップはローカル市場にフォーカスせざるを得ません。それでも、シリコンバレーが活気に満ちているのはなぜかというと、そうしたローカル市場にフォーカスしているスタートアップでさえも、出資のチャンスを求めてシリコンバレーに集まってくるからです。このため、お金があるところに起業家が集まり、起業家同士で切磋琢磨する、ある種の道場のような機能をシリコンバレーが有しているような気がします。

 

②大学の存在

二点目にあげていたのが、大学の存在です。シリコンバレーには、アメリカでも有数のトップ校が存在しています。具体的には、スタンフォード大学・UCバークレーなどがあげられます。彼らがシリコンバレーのエコシステムを維持していると言えます。

 

一つ目に、人材プールとしての機能があげられます。アメリカ全国から、ひいては世界中から、優秀な学生がここに集まってくる。そして彼らの卒業後の進路は、大抵ベイエリアになるといいます。このため、ベイエリアの企業は比較的外国人が多く、加えて若さを感じます。サンフランシスコは現在オフィスビルが並ぶ開発著しい都市になっていますが、私が街を歩いていて驚いたのが、先進国では珍しいほど街中を歩く人が若い、ということです。特にビジネスマンの年齢が比較的若いように見受けられました。これは、こうした大学から、コンスタントに若い人材が供給されていることの証左なのかもしれません。

 

二つ目に、ネットワーキングとしての機能があげられます。彼らは大学で繋がりを有しているので、強固なネットワーキングを有しています。このため、異なるバックグラウンド同士の交流が進みやすい、という特徴もあるのかもしれません。

 

ではここまで考察を深めた上で、一つの疑問が上がってきます。それは、「シリコンバレーは複製可能か?」というものです。現在、ベルリンや深センなど、多くの都市がシリコンバレーを模倣しようと躍起になっていますが、果たしてこれは実現可能な旅路なのか?この質問をゲストスピーカーにぶつけて見たところ、ほとんどが「シリコンバレーは複製できない」という答えでした。理由としては、上記のエコシステムはシリコンバレーに特有であり、他のエリアでは模倣はできても優位性は出せない、ということでした。

 

しかし果たして本当なのか、私はTrekが終わった現在においても疑念を持っています。深センも現在中国の多くのマネーが流入し、破竹の勢いで投資規模が増加しています。また人材においても、深セン近辺に世界クラスの大学は香港くらいしかありませんが、とにかく若い人材がどんどん深セン流入している現在の状況を見る限り、シリコンバレーと同様の状況になっていると言えなくもありません。もしかすると数十年後には、深センがアジアのスタートアップの総本家となる可能性もゼロではないと思っています。

 

(続く)