だじりブログ

日々の読書から広がる考察

Silicon Valley Trek②〜シリコンバレーから見た日本〜

Silicon Valleyを一週間渡って見て、色々考えさせられたのが技術とビジネスの関係性です。前職が電機メーカーの営業ということもあり、テクノロジーやハードウエアといった分野に少なからず興味関心を持っていたのですが、今回のTrekでもそれに関連する産業を訪問したこともあり、色々と考えさせられました。

 

特に考えさせられたのが、シリコンバレーから見えて来た日本、特に日本のものづくりです。これもまた前回と同様逆説的ではありますが、最先端と呼ばれるものに触れ、それをベンチマークとしておくことで、今自分が携わっている(もしくはこれから携わるであろう)フィールドの問題点が浮き彫りになって来たような、そんな気がします。正直にいうと、「日本のものづくりってもう終わっているようなものだけど、工夫次第でなんとかなるんじゃないか」というものです。

 

Silicon Valley Trek中に起きたある出来事を紹介します。前回紹介した通り、我々はTrek期間中様々な会社を訪問しましたが、その中でも、シリコンバレーのロボット・スタートアップの企業を訪問しました。そこでは、日本でもよく見られるようになった接客用ロボットを製造・販売していました。小さな工場で、アジャイルとフレキシブルを売りにしており、日本の顧客を多く抱えていた、というのです。スタンフォードのPhDを中退したCTO曰く、「日本の顧客が口コミで我が社を紹介してくれているので、非常に助かっている」ということ。

 

ただ、この熱気とは裏腹に、技術面での素晴らしさをこの会社からはあまり感じませんでした。実際に工場ラインを見ましたが、正直なところとてもシリコンバレーの名に相応しいような最先端を扱っているとは言えません。3Dプリンタを用いてリーン生産を行なっていると豪語していましたが、扱っている3Dプリンタは比較的古いタイプのもので、そこまで生産性が高いとは思えません。また製品のデザインや性能についても、数多の深センのスタートアップを見て来た私からすると、ハードウエアの面でとてつもなく優位が築けているかというと、どうやらそうでもなさそう。なのに、日本企業はそうしたスタートアップからこぞって製品を購入している。彼らの会議室には、日本企業のロゴが掲載されており、「ここと取引をした」というのが堂々と掲げられていました。

 

私はCTOの次の言葉を聞いて、正直がっかりしてしまいました。「日本のお客さんの中には、我々がシリコンバレーにいるということだけで好意的に思ってくれるところもある。シリコンバレーがある種のブランドとして活きている。」

 

正直、このくらいの規模の技術力と開発力、生産能力を有した会社は、日本や中国に腐るほど存在しています。日本の大手企業においても、その気になればいくらでもこうしたラボのような場所は幾つでも作ることができる。優秀なエンジニアを雇い最新鋭の3Dプリンタでも用意すれば、いとも簡単に彼らを超えるようなスタートアップを作ることができます。それなのに、実際の日本の企業はそれをせず、こうしたスタートアップから製品を購入している。ここで私は、必ずしもこのスタートアップが悪いといっているわけではありません。彼らだって真っ当にビジネスをし、企業が必要とする製品を販売しているわけですから、それだけで社会的価値の高いことをしているわけです。問題の本質はそこではなく、日本企業の側にあります。

 

この企業を訪問後、これについてずっと考えていました。そこで出た結論は、「日本企業はやりたくてもこうしたことができない。だから、リーン生産や柔軟性を有したスタートアップを活用しているのではないか」という点です。ただ、この「できない」というのをさらにブレークダウンすると、技術的にできないのではなく、文化的・制度的にできないのです。大企業の中において、秩序を乱すようなスタートアップ的組織は毛嫌いされる。だからいくらケイパビリティもキャパシティも有したとしても、大企業の秩序の維持が優先され、スタートアップなどのリスクが高いものについては外部に委託する。そうした流れができているのではないか、ということです。

 

ここで感じるのは、日本企業に重大な「空洞化」が起きているのではないか、という懸念です。すなわち、比較的リスク性向の高い分野や、日本企業の既存の秩序を乱すようなグレーな分野においては、積極的に外部に委託がされる。アベノミクスによる円安によって、日本企業は軒並み好調が続いている一方で、賃上げをせずに内部留保はたまる一方ですので、潤沢な資金があります。その資金がどこに流れているかというと、内部ではなく、外部委託先なわけです。この傾向が続くと、いつの間にか日本企業の内部に何も残らなくなってしまうという状況に陥るかもしれないのです。

 

こうしたケースはすでに他でも見られます。例えばイノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセン教授は『イノベーション・オブ・ライフ』の中で、PCメーカーであるデルの事例を取り上げています。デルは価格競争の中でコスト削減を目的に、委託先である台湾メーカーのASUSに委託を進めていきました。しかしながら、委託の中で技術力や開発力を蓄えて来たASUSが自社ブランドでPCを販売し、デルはさらに窮地に陥った、というストーリーです。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

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  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
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この本では、著書のコンセプトから「人生あまり委託しないほうがいいよ」ということを述べているのですが、このデルのケースは、どうしても日本企業の未来につながるものがあるのではないかと感じざるを得ません。

 

 

では、では