だじりブログ

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日本人流解読法で簡体字の9割は解読できる

前回様々な事例を使って、中国語で使われている漢字はほとんどが日本語で使われる漢字と同じと言うことを説明しました。半分が日本語と同じと言うことで、それだけで中国語に親近感がわきませんか?今回は、残りの45%である「簡体字」について説明したいと思います。

 

簡体字というもの。読んで字のごとく「字の体を簡略化したもの」になります。漢字というのは世界中にあるありとあらゆる文字の中で、とにかく画数が多い。私たちにとって馴染みの深いアルファベットやキリル文字、ハングル文字なども、大体が5~7画でかけてしまいます。それに対して漢字は概して画数が多く、10画を超える漢字も多く存在しています。筆記試験等で漢字の画数の多さに悩まされた人は私だけではないはずです。そこで、「難しいものを簡単にしようじゃないか」というコンセプトで生まれたのがこの簡体字というものです。

 

この簡体字の歴史は深く、漢字が生まれた頃から存在はしていたようなのです。しかしながら公の場で公式な形で使われるようになったのは実は戦後になってから。そういう意味では比較的新しい文字な訳です。

 

ではなぜ簡体字が使われるようになったのか。それには中国について少し説明しなければなりません。簡体字が使われる以前、中国における識字率は非常に低かったと言います。それもそのはず、こんなに難しい漢字が使われているので、中国の地方に住む人々からすると、大量の数の漢字を、しかも正確に覚えるというのは非常に難しいわけです。加えて後述しますが、中国では地域によって方言が存在し、同じ漢字でも発音が違うといった事態が発生していたため、正直漢字を学ぶことの意味がそこまで重要ではありませんでした。画数が多く難しいので、費用対効果が悪いわけです。そんなこんなで識字率は悪い状況にありました。それではいけないと採用されたのがこの簡体字です。

 

よく、中国大陸は簡体字が使用されていて、台湾・香港そして東南アジアの一部の華僑コミュニティでは日本の漢字と似た「繁体字」が使われているのはなぜか、という質問を受けますが、そもそも簡体字が戦後になって大陸で使われるようになった、比較的新しいものだからです。そしてこの簡体字によって中国における識字率は上昇したと言います。

 

ここまで長たらしく中国の歴史の話について説明してきましたが、なぜこんなことを説明したのかというと、この歴史の話が、日本人が簡体字を勉強するにあたって重要だからです。

 

ここからわかることは、簡体字というのは、今まで使われていた漢字を簡略化したものであるということです。すなわち、簡体字も元を正せば日本の漢字と同じ、ということができます。ということは、当時の中国人が当時の漢字をどのようにして簡体字にしたのか?というパターン・法則性を理解することができれば、簡体字も日本の漢字の知識を使って簡単に理解することができる、ということになるのです。

 

中国語を勉強されている方の中で多く見受けられるのが、「簡体字が難しい」という意見です。しかしこれはある意味ナンセンスなのかもしれません。なぜなら、簡体字というのは、今までの漢字を簡略化したものであるので、我々が普段慣れ親しんでいる漢字よりも難しいということはありえないからです。どのように簡単にしたか、というパターンをつかむことができれば、簡体字は日本人にとってはとても簡単なわけです。

 

これも百聞は一見にしかずだと思いますので、以下中国語の文を紹介したいと思います。

广东省的经济规模已经超过了香港。快速成长的Tech产业是其中一个贡献。

汉语说得很难,但学习很简单。

この文章は私がパッと作成した文章です。ネイティブの中国語からすると少し違和感はあるのかもしれませんが、それでも中国人が見てわかるギリギリのラインで、なるべく日本語に近い文章にしています。

これで使われている簡体字は、以下の通りになります。

广东  经济规  经 过   。   长         产业     个贡 。

汉语说 很难,  习很简单

 

この簡体字比率は前回でも説明した45%ルールにだいたい当てはまるかと思います。さて、この簡体字を日本語の漢字に直すと、以下のようになります。

広東省的経済規模已経超過了香港。快速成長的Tech産業是其中一個貢献。

漢語説得很難,但学習很簡単。

どうでしょう。これなら日本人にも読めそうな文章に見えませんか?

 

ところで、簡体字の部分に注目してください。「簡体字は日本語などの漢字を簡略化したもの」と言われてみれば、なんとなくなるほどと思いませんか?簡体字や日本の漢字において、何かしらの部分を共有していたり、構造が似ていたりと、当たらず共遠からず的な形で推測もできるのかもしれません。ということで、簡体字と日本語の漢字で比較した時に、簡体字がどのように簡単にしたのかについてのパターンを説明したいと思います。

 

簡体字の作り方については、2つの考え方があります。それは「漢字のどこを簡単にするか?」というものと、「漢字をどうやって簡単にするか?」という2つです。

 

一つ目の「漢字のどこを簡単にするか」についてですが、これは漢字の構造を考えば答えはすぐに出ます。それは大きく分けて二つで、①漢字の全部か、②漢字の一部しかありません。日本人の誰でも知っていることですが、漢字には「へん」や「つくり」など、複数のパーツに分けることができます。簡体字も「へん」を簡単にしたり、「つくり」を簡単にしたりなど、一部分で簡単にする、という作業が見られます。これが②です。①については、漢字の中にもそうした「へん」や「つくり」などパーツに分けることができない漢字が存在します。例えば「車」という字には、へんもつくりもありません。こうした漢字には、全体を簡単にするという①のアプローチが取られます。ちなみに車の簡体字は「车」です。

 

二つ目の「漢字をどうやって簡単にするか」このパターンについては大きく分けて3つしかありません。それは、漢字の難しい部分を、①減らす②取る③変える、です。よくよく考えれば、何かを簡単に、すなわちコンパクトにするわけですから、増えることはありません。そうなると自然と上記の取り除くか、減らしてしまうか、いっそのことより簡単なものに変えてしまうか、の3つしか選択肢がなくなるわけです。

 

では、これらの3つについて具体的に見ていきましょう。

 

①減らす

これは、画数を減らすというものがあります。先ほどの例で言えば、「車」を「车」と変えるのは、車の真ん中の田の部分が画数を多くしてしまっているので、画数を減らそう、という意図で考えられたものと私は考えています。他にも、以下の例があります。

 

日本語の漢字 簡体字

「見」 → 「见」 *見の目の部分を一本に減らした

「門」 → 「门」*門の2つの日を減らした(日本語でもたまにこのように書かれる方いらっしゃいますよね)

「長」→「长」

「説」 →「说」*言偏(ごんべん)の画数が見事に減らされています笑

 

このパターンは、へんやつくりに使われる漢字によく見られます。上述した二つの漢字も、いずれもへんやかまえに使用されていますよね。

 

②取り除く

二つ目は、「その部分を取り除いても意味として通じるから、画数増えるのやだし思い切って取り除こう」というものです。これについては、以下の例があります。

「広」→「广」 *「ム」が見事に取り除かれています。ただこの广という部分、確かにほとんどの場面で「広」ですよね。

「業」→「业」 *下の部分が取り除かれています。これも、业を冠に使う漢字って、これぐらいしかないですよね。

「習」→「习」*取り除く例の究極型だと僕は思っています。习と白をとっても习习を冠に使う漢字って、これくらいしかないので、ここまでドラスティックにできたのかと思います。ちなみに、日本語には翌という言葉がありますが、中国語ではあまり使われません。

 

これら取り除くに共通するのは、非常によく使われる漢字で、へんやつくりの一部だけでだいたいその漢字だとわかってしまうもの、ということです。

 

③変える

これは、画数が多い漢字もしくは一部を、画数の少ない別のものに変えてしまおうというものです。残念ながらこの「どう変えるか」については統一されたパターンがないのですが、「難しいものを簡単にしている」という点では同じですので、それを掴んでさえすればある程度は推測できるかと思います。

 

この変えるについては、以下の例があります。

「過」→「过」 *寸という別の文字を当てています。

「漢」→「汉」*つくりの部分が、又になっています。

「個」→「个」 *もはや日本語にない文字です。しかしこの字、今でもスーパーでたまに使われている、個数を数えるときの「ケ」(1ケ 等)の由来だと言われています。

 

これらについては法則性がないので覚えるしかないのですが、一つ推測をするにあたってアドバイスがあります。それは、「変える簡体字は、熟語で覚える」というものです。これはどういうことでしょうか。簡体字は一つの単体の漢字として覚えるのではなく、他の漢字と組み合わせた熟語で覚えた方が格段に覚えやすいということです。そしてその際のルールは、①熟語で引っ張ってくる、②簡体字の「簡略化した部分」を一旦無視する、③そこで思い浮かぶ日本語の熟語を思いついて見る、③その中で、画数の多い熟語を選ぶ、というものです。こうすることで、高い確率で日本語変換することができます。

 

具体的に、上記の例を使って説明して見ましょう。例えば、过という漢字。過が过に変わったのですが、単体で見てしまうと、过から過に日本語変換するのは難しいです。では、上記のルールに従って日本語を推測して見ましょう。①で、まず过だけでなく、超过で引っ張ってきます。次に、②超と「しんにょう」だけをみて、日本語の熟語でどういうものがあるか考えて見ます。どうでしょうか?該当するものは、超過や超速ぐらいしか思い浮かびませんよね?そこで、③です。超過や超速の二つを比較し、どちらが画数が多いでしょうか?答えは超過となります。こうすることで、高い確率で正しい漢字を推測することができます。

 

なぜこのようなことが可能なのでしょうか?そこには二つの大きな理由があります。一つ目は、中国語と日本語の熟語はほとんど同じだというものです。確かに、中には中国語独特の熟語が存在したり、日本語で使われない漢字を用いた熟語が存在したりします。例えば已経というのは、日本語で「既に・もう」という意味になりますが、この熟語は日本語にはありません。ただ、ほとんどのケースは、日本語と同じ熟語が使われています。その確率はおおよそ50%程度でしょうか。

 

次に、前回紹介した「中国語の半分は日本語と同じ」というルールです。これに基づけば、2つの漢字からなる熟語において、2つとも簡体字である確率は「25%」となります。

 

ここからは確率の世界になりますが、この二つの事象は互いに背反していますので、日本人にとってお手上げのパターン、すなわち「中国語独特の熟語」であり、かつ「熟語に使われている全ての漢字が簡体字」となる確率は、50% * 25%で 12.5%となります。すなわち、上記のルールに従えば、90%近い確率で簡体字を日本語の漢字に変換することができるのです。

 

これを使えば、前回の記事で私が説明した内容と合わせて、次のことが言えます。

50% →「日本語と同じ漢字」

45% →「90%が解読可能な簡体字」=「約40%」

すなわち、90%が中国語を勉強したことがない日本人でも解読できる、ということになります。

 

いかがでしょうか?中国語を勉強していなくても、日本語の漢字の知識を使えば、中国語の漢字を理解することができるんです。嘘だと思う方、適当に中国のサイトを見てみて、上記で紹介したメソッドを使って解読にトライしてみてください。

 

では、では