だじりブログ

日々の読書から広がる考察

楠木建『好きなようにしてください』〜読書リレー(162)〜

 

好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則
 

 

ということで、東京に一旦里帰りしました。今は年明けの準備等をしながらゆっくり過ごしている状況です。

 

今年は200冊以上の本を読むことができました。去年に比べるとかなり数は減ってしまいました。残念。とはいっても、そのほとんどがMBAプログラムが始まる前に読んだもので、今年の前半に集中しているというアンバランスな状態です。まあ、致し方なし。仕事に直結するので、ビジネスの本が必然的に多くなるのですが、個人的にはやはり政治経済・歴史系の方が面白く読めます。まあ歴史が好きということもありますし、政治経済のどちらかというとマクロな視点が好みなのかもしれません。

 

おそらく今年最後の読書リレーですが、経営学者である楠木建氏の本です。Newspicksでのお悩み相談コーナーが元になっている本で、読者の悩みを楠木氏が答えて行くという形式になっています。ただこの本の面白いところは、悩み相談にとどまらない楠木氏の思考プロセスや考え方が垣間見れるところであり、あるお悩み相談では、当初の質問からはかなり逸脱したテーマで議論を進めているところなどもあり、とても興味深いです。

 

個人的に気になる議論は、環境決定論についてです。環境決定論というと聞きなれない言葉かもしれませんが、これは「どの環境に身を置くかによって、自分がどれだけ変化することができるか」という点を重視する考えで、この考えが強いと、「どこに行くか?」という問いが最優先事項になる一方で、「何をやるか?」「どうやるか?」という実践面の問いに対しては考えが至りづらいという難点があります。

 

著者は読者より、「大学に行くべきかベンチャーに行くべきか迷っている」「日本の大学に行くべきか海外の大学に行くべきかで迷っている」というような悩みを大量に受け取りますが、それらの多くを、「環境決定論に囚われている」とコメントして戒めています。何故ならば、環境が全ての人間を決めるわけではないからです。

 

この環境決定論に対する批判、非常に当たり前な観点であるはずです。しかしこれが多くの人を依然惹きつけてやまないのは、環境選択の自由が与えられているからかもしれません。この社会では、ある環境を選ぶ際に、「どうしてこの環境なのか?」という問いに答えなければならないようなシステムになっているからで、環境を選択する自由があるからこそ、その環境を選ぶ行為に対して動機付けが必要であり、必然的に「なぜその環境か」という問いに優先的に答えようとしてしまうのかもしれません。

 

例えば就職や大学院といった環境は、その入社や入試の際に、必ずといっていいほど「なぜここなのか?」という問いを受けます。その問いに対して多くの人は、「この環境を通じて成長できる」というストーリーを組み上げて行く必要があります。このストーリー作成の段階で、論理が逆転して、もともとは「〇〇したいからここに行く」が、「ここに行けば〇〇できる」という風に考えてしまう。そこには、「What to do」や「How to do」の視点が欠如してしまう、という問題が発生します。

 

 

環境決定論の最大の問題点は、何か思い通りに行かなかった場合、全てを環境のせいにしやすくなるということです。ロジックとしては簡単で、何か物事を成し遂げられなかった場合、「ここに行けば〇〇できる」と思って飛び込んだ環境だから、「やっぱりそうじゃなかった」と片付けてしまう。だからどんどん悪い方向に向かっていってしまうと言います。環境のせいにしてしまうと、そこでさらなる自己研磨は止まってしまうわけですので、そうならないように気をつけなければ、と思った一冊でした。

 

では、では