だじりブログ

日々の読書から広がる考察

自分を知るために必要なアイデアを与えてくれる2冊

 今日は自己啓発というか、自分の強みやキャラクターをどのように活かすべきかについてインサイトを与えてくれる二冊について紹介したいと思います。

 

 

 

まずはこの有名な本から。この本はロングセラーで、今でもAmazonの売り上げランキングで2位3位あたりを堅調に維持しています。どうやら研修プログラムの一環としてこれを取り入れている企業があるみたいで、その影響も大きいと言われていますが、それでも人気が絶えない本かと思います。

 

こちらの本は、サーベイを受けることで、自分が強みとする5つの要素について理解することができます。この強みの部分については、「自分がやっていて(行なっていて)苦にならないもの」という定義です。すなわちなんらかの行動をとるときに自分が抵抗感なくできるところ、それが強みであるという考え方です。例えば、知らない人に声をかける。これは人によっては全く苦にならない人と、知らない人に声をかけるということがとても億劫な人がいます。これを性格で片付けるのではなく、強みだと捉えるものです。

 

ちなみにこれで私はかなり自分のキャリアについて大きな洞察を得ることができました。この本での診断結果、強みは「学習欲」「達成欲」「慎重さ」「原点思考」「着想」でした。これを見たときに、学習欲と達成欲を同時に満たすキャリアはないか、という点で突き詰めて考えたところ、今の職場に落ち着いたと思っています。これくらい、自分にとってはかなりインパクトがあったかと思っています。

 

 

二冊目は昨年夭逝された瀧本氏の本。これを読んだ時、今後のキャリアとして何が社会から求められているのかを捉えるには非常に優れていると感じました。本の内容としては、これから人材もコモディティ化(=差別化が難しい商品のこと)になってしまうため、差別化を図るべく様々なキャリアの歩み方があるというのが主な主張です。これは社会から求められているニーズをうまく汲み取るという点では非常に深い洞察を与えてくれています。

 

私の読み方としては、ストレングスファインダーで自分のやりたいこと、求めていることを知る。そして瀧本本で世の中が求められていることを知る。この二つをうまくシンクロさせるという作業を行うことで、自分を知るための必要なアイデアは揃ってくるのではないでしょうか。

 

ビジネスパーソンでも歴史が好きになる新書3冊①

営業として働いたり、コンサルタントとしてクライアントに接していく中で、特にマネジメントレベルの人たちで歴史が好きな方は少なくありません。歴史を知っていると、それだけで教養を持っているように見える(と断言したら失礼ですが)のが、歴史という知識の不思議かつ素晴らしいところかと思います。

 

しかし、ほとんどの人は歴史と聞くと拒絶反応が起きてしまう人がいるのではないでしょうか?過去の人がやったことなんてまるで興味ない、というのはある種当たり前の観点かもしれません。

 

私個人は歴史は非常に好きです笑 なので歴史が嫌いな人の気持ちを100%理解しているわけではありません。ただ、自分がなぜ歴史が好きなのかと言われると、現在とのつながりを見いだすことができるから、と言えるでしょう。過去を通じて、今起きていることと共通する、この世の中の「共通項」を見つけることができるという点で、過去は非常に面白い、とも言えます。

 

そんな中で、ビジネスパーソンでも興味が湧くものとして考えられるのが、「ビジネスの歴史ってなんだったんだろう」というものではないでしょうか。今自分が仕事で行なっていることが、実は過去とつながっていた、と考えることができると、過去とのつながりができると、それだけで歴史が楽しく見えてくるのではないでしょうか?

 

ということで、今日は私が読んできた中で、ビジネスと歴史をうまく組み合わせた面白い新書を三冊紹介します。

 

 

まずはこの一冊から、著者の藤野英人さんは投資家として非常に有名な方ですが、その方が書いた商売の日本史というこの本は、経済の大局観をみる上でとても面白い視座を与えてくれます。

 

この本が面白いのは、日本人の歴史を、外に開いて大きく交易を促進する「ウミヒコ」の時代と、うちに閉じこもって独自の文化を作り上げる「ヤマヒコ」の時代という二つの軸でとらえ直していることです。この軸によって、今はどの時代の流れなのか、そしてこれからどうなるのか、というのがおぼろげながらも見えてくるかもしれません。

 

今COVID-19によって先行きが極端に不透明な時代になっていますが、こうした過去の流れから今を捉えるとまた違った見方ができるのかもしれません。

 

 

 

二冊目は、織田信長とビジネスという観点で歴史をとらえ直したこの本です。織田信長というと戦国武将で、彼が行なった政治的な実績に目がいきがちですが、織田信長ビジネスパーソンないしは起業家として考えると、ものすごいイノベーターであることがわかる、そんな一冊です。

 

例えば楽市楽座。これは今まで寺院などが有していた既得権益の中でも、領地においてビジネスをするという一番美味しい権利に着目し、身分に関係ない自由な市場を作り上げ、新しい市場を作り上げました。

 

これはまさしく今のUBERと同じではないでしょうか。既存のタクシー業界が有していた既得権益を破壊する、破壊的なイノベーターという点では、織田信長アメリカのスタートアップも同じことをしていたわけです。こうした観点で見てみると、UBERも決して新しいものではないという事実が浮かび上がると同時に、織田信長の新たな一面が見えてくると思います。

 

 

三冊目は、少しぶ厚目のこの本。歴史というよりかは、過去に色々あった事例を掘り起こして、「コミュニティー・キャピタル」について描いている本です。これが面白いのが、共同体に所属していること自体が価値が高いことに働く場合がある、ということを、様々な過去の事例を用いて実証しているという点にあります。

 

最近はSNSなどでコミュニティビジネスが盛んですが、これらについても、過去に事例が数多あるわけです。そうした事例を見るにつけ、私たちの現代のビジネスというのは、なんら新しいものではないと気づかせてくれる、そんな一冊です。

 

引き続き、このシリーズで色々と本を紹介していきたいと思います。 

読書術の前に、読書そのものの大切さを教えてくれる2冊

今年初めから始まったCOVID-19の影響で、多くの人が週末も外出せず、自宅で過ごす ことが多くなったのではないかなと思います。そうした中で多くにほとが口にするのが、休日の過ごし方。人によっては家でできるような新しい趣味を見つけてそれを楽しんでいる方も多いようです。

 

そうした、新しい趣味の中で、「読書」を選ぶ人も少なくないようです。実際のところ、オンラインを中心に歴史の本の売れ行きが好調だというニュースも出ています。読書は家の中でゆっくりするものとしては非常に良いのかもしれません。

 

巷では、よく本を読むことについて色々な考え方がはびこっているような気がします。人によっては読解力を鍛えるために読書をすべきだという、目的と手段がこんがらがっているパターンもあれば、単純に読むのが楽しいからという人もいます。そうした中でそもそも読書ってなんのためにするんだろう?という疑問が浮かぶのはある種当然なのかもしれません。

 

今日はそれに二つの異なるアプローチで考える本を紹介したいと思います。

 

レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング

  • 作者:本田 直之
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

一つ目は、レバレッジ・リーディング。著者の本田直之氏は自己啓発本もいくつか出しているのですが、おそらくこの本が著者の中でも一番有名なのではないでしょうか?

 

この本の一貫しているところは、本を読むことを自己投資だと考えていることです。そしてそれは、投資の観点で考えると非常に費用対効果の高いものだと言います。どうしてかと言いますと、通常なら数万円かけて、その著者が主催するようなセミナーとうに出て、その人の話を聞くことと、数千円かけて本を読むことで得られる情報はほとんど同じだからです。もちろん、セミナーと読書では臨場感によって異なるので知識の習得具合には違いがあるのは否めませんが、本を読むことで新しい知識を習得できるという点においては、これほど効率の高い買い物はないわけです。

 

この本では、そうした観点から、特にビジネスパーソンを対象に自己投資としての読書の有用性をあげています。非常にわかりやすいロジックなので、読書のモチベーションを上げるにはうってつけの一冊かもしれません。

 

本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法

本の「使い方」 1万冊を血肉にした方法

  • 作者:出口 治明
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 単行本
 

 

続いてはこちら。大手保険会社を経て起業し、現在は大学の学長となった出口治明氏が、読書に関して自身の考えを整理した本になっています。こちらの本はビジネスライクというよりかは、人間としての教養をいかに培うことができるかという点で読書を見ており、こちらはこちらでとても参考になる考え方です。

 

まとめると、読書は人によって様々な目的があると言えますが、ビジネスパーソンとしては、「自己投資」×「教養」の重なるあたりがマインドセットとしてはふさわしいと思うので、ぜひこの二つを参考にしてはいかがでしょうか。

現場から見上げる企業戦略から、現場か資本か考える

 

 

企業戦略論で有名な藤本教授の本。この方の本はいつ読んでも新しい知見を得られます。コンサルタントとして大企業の全社改革に携わる中で、この方が専門とするようなものづくりの領域に触れることも多いのだが、そうした中でこの本の視点は本当に役に立ちます。

 

この本の主な論点としては、デジタル時代においても、日本の基幹産業である製造業においては、愚直に現在の企業が持つ現場でのものづくりの力を絶えず鍛えることによって、グローバル市場における競争優位性を維持できる、というものです。コンサルティングで様々な現場を巡る上で、この考えは私個人としても非常にしっくり来るものであると同時に、日本の方々およびビジネスパーソンにおいても考え方を改めなければならないと思います。

 

ただ、この主張は至極当たり前のように思えます。なぜなら、日本企業はこれらの競争優位性によって経済成長を遂げてきたからです。ここで浮上する問題点として、そもそも、なぜこのような議論を、著者はこの本であえて説明しなければならなかったのか、ということが挙げられます。それは、この著書でも挙げられていますが、「悲観論」にあると著者は述べています。それを如実に表しているのが以下の部分かと思います。

 

不況や円高で企業業績が悪化したり、大きなメーカーが倒産したりして悲観論的な雰囲気が充満すると「日本の製造業はもうダメだ」論がまた出てくる。そのたびに私は「条件つきだが大丈夫だ」と反論しつづけた。しかし悲観論的雰囲気が消えると、そうした雰囲気的悲観論もどこかに消える。状況が悪化するとまた出てくる。この繰り返しだ。今後も繰り返されるだろう。しかし理論的および実証的な裏づけがとれているかぎり、私はこれからも「条件つきだが大丈夫だ」といいつづける

 

日本の経済においては、やたらと悲観論が蔓延りやすい傾向にあるのかなと思います。それが健全なうちは良いのですが、それがどんどん足を引っ張っていって、自滅の道を進んでしまうことがあるので、それだけは避けてもらいたいなと思う今日この頃です。

 

さて、もう一つの議論として興味深かったのが、現場志向と資本志向の考え方です。こちらについては、もう一度本文の中から説明を引用すると、

 

「現場指向」とは、損失が生じても現場の人員を簡単には切らず、一定以上の利益が出れば現場にも還元するような現場重視・地域重視の考えをもつことをいう。それに対して「資本指向」とは、利益最大化を根本的な行動原理とすることをいう。先にも述べたように、主流派経済学の教科書に出てくるモデルは後者 

 

ということになります。

 

ここで強調すべきなのは、「損失が生じても現場の人員を簡単には切らない」という点です。ここは資本主義社会と真っ向から反対する考え方ですが、それが巡り巡って現場を活気立てる一因になる、ということです。

 

それはどういうことかと言いますと、日本の製造業の工場は、一部を除いてほとんどが地方にあります。その地方にある工場はその地域社会に根ざしていることが多く、その工場が地域の経済を発展させている、と言っても過言ではありません。例えば、私の前職では製造拠点が九州の地方都市にありましたが、その都市はある産業の集積地になっていて、そこで働く人々が一定数いることから、人口が増え、世帯が増え、結果として地域経済が発展する、というサイクルがありました。

 

そうした中で、不況のあおりを受け、生産が滞る。そうすると、工場は損失が発生し始め、コストの削減にてをつけます。コストの中で大部分を占めるのが人件費ですから、現場の人員を削ればコストは下がるわけです。ロジカルに考えると、この決断は正しいように見えますが、一方で間接的な影響が大きいとも言えます。なぜかというと、人員を削るということは、その地域で働く人が少なくなることを意味します。それは、人口が減り、世帯が減り、結果として地域経済が停滞していく、という悪循環に陥る契機を作り出しているわけです。そうなってしまうと、そもそもその工場を下支えしていた地域経済が立ち行かなくなり、工場自体で、もともと維持しようと思っていた人員までも、地域経済の停滞の影響を受けるかもしれないわけです。そうした意味では、工場と地域経済はある種一蓮托生的なところがあり、これら二つを切り離して考えることはできないわけです。

 

そうなって来ると、ロジカルで考えることが必ずしも正しいのか?というイシューにぶち当たります。ロジカルシンキングで売っているコンサルタントが何を言っているんだ、ということになりかねませんが笑、そうした資本志向では到達し得ないところに本当の解があるんじゃないかなと、そう思う今日この頃です。

他己実現でキャリアを求めていないか?ー読書リレーー

 

 

我が校先輩の本。笑 結構この人から受ける影響は大きく、彼の本はほとんど読破していると思う。

 

そんな中でもこの本に着目するのが、仕事とキャリアについて考えさせられたからです。前掲の記事でもキャリアにおける様々な考え方を取り上げましたが、この本はどちらかというと、そうした考えを盲信し、バリバリのキャリアを築き上げて言った人が典型的に陥りやすい現象をコミカルに描いていて、とても興味深いです。

dajili.hatenablog.com

 

この本が指摘する非常に強いメッセージは、簡単にまとめると以下のようになると思います。それは、キャリアを求めすぎる人は、実は非常に強い承認欲求によって動かされており、その承認欲求は外から来るものである以上、自己実現ではなく他人が理想とする何かを求めてしまい、自己実現ではなく他己実現になってしまっている、というものです。

 

これは非常に面白い視点で、自分がやりたいことが、色々と突き詰めて考えると「他人から認められたい」というところが一番にきているわけです。年収をあげたい、キャリアアップをしたいというような欲望は、言ってみればそのステータスを周囲に自慢して承認されたい欲求を満たしているのではないか?という問題意識です。

 

そして、自分にとって何が価値があるのかをはっきりと理解しなければ、自己実現のチャンスはこず、最終的には承認されたい欲望だけで終わってしまうという考え方は面白い。そしてそれを的確に表しているのが、以下の引用。

 

社会に認められてはいるけれど、まったく自分の人生じゃなかった!〟という、マウンティング・ゴリラたちの慟哭に繫がってしまう

 

 

実はどのような価値を見出したいか、これを突き詰めて考え、貫くこと。簡単なようで非常に難しいと思います。なぜなら、そこに資本主義の原理が入り込んでしまうからです。

 

どういうことかと言いますと、自分が信じている価値があり、それを貫きたいとする。しかしながら、その価値が誰も振り向いてくれないようなよくわからないものだったとすると、それを求める人は誰もいません。誰かいたとしても、とても少ない数でしょう。そうなると、その価値にお金を払う人は少なくなります。なぜなら資本主義の中では、需要と供給の関係が成り立つため、ニーズが少ないものについては価値は必然的に下がるからです。すなわち個人の価値と社会的な価値に乖離がある状態になります。そうなってしまうと、個人の価値はどうしても影響を受けやすい。自分の求める価値を維持するために、どうしても社会的な価値に近づけるように修正する必要がある。気がつけば、社会に求められている価値にどんどん近づいていく、ということになります。

 

すなわち、自分の価値を貫くことができるという人は、ある種資本主義の理論を超越して動くことができるような人でなければならないわけです。そんな人はなかなかいませんので、結論のところ、自分の価値を貫くことは難しいわけです。

 

ただ、そこに近づこうともがくことはできる。おそらくそのもがくところに、この著者が言いたい「マウンティング・ゴリラからの脱却」なのでしょう。

キャリアにおける帰納法と演繹法について

 

好きなことしか本気になれない。 人生100年時代のサバイバル仕事術

好きなことしか本気になれない。 人生100年時代のサバイバル仕事術

  • 作者:南 章行
  • 発売日: 2019/08/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

Kindle Unlimitedで読み放題の対象になっていたからこの本を読んでみた。スキルを自由に売買できるサイト、ココナラを立ち上げた南章行。この本はどちらかというと、そのビジネスのアイデアの背後にあるビジネスプランや想いを描いたというよりかは、それに至るまでの著者の半生を描いた、自叙伝的なものになっている。

 

この本を読んでいると、この人のキャリアの美しさに気づく。大学を卒業した後に日系の大手企業に就職。数年間そこで経験を積んだのちに、今で言うところのPEに転職し、20代で会社の役員として企業のターンアラウンドを経験。その後MBAに。MBAでのインターンの経験が契機となって社会起業に興味を持ち始め、帰国後に二足のわらじを履き始め、最終的に起業…。ここまでは、この人が所属する世代の、まさに絵に描いたような美しいキャリアを歩んでいるように見える。

 

ただし、著者はこの本で何度も主張しているように、彼はもともとこのキャリアを最初から描いていたわけではなく、紆余曲折を経て到達し、それなりの苦労があったという形に述べている。もともと起業家になりたくて大企業に入ったわけでもなく、そしてMBAに行ったわけでもない。全てがその時の偶然によるものであるが、と同時にそれは著者自身の考え抜いた努力の表れでもある、と言うものが、この本で著者が一貫している主張だ。

 

この本を読んでいる途中で、キャリアに関する二つの大きな考え方の違いについて考えを巡らせてしまった。それは、キャリアにおける帰納法演繹法である。

 

この人のキャリアはまるで帰納的である。帰納法とは、高校の数学でも学んでそれを覚えている人も少なくはないと思う。帰納法はある種の推論で、ある前提があった時、それを元に、前提の外にある事象について結論づけるような論理的な考え方を指す。これをキャリアに当てはめてみると、今ここで好きなことをする。その好きなことというのが、次のキャリアにつながって行き、将来的に自分の最終的に好きなキャリアに到達できるだろう、というような考え方になる。

 

この人のキャリアの考え方が帰納的であるというのは、文章の様々な節から読み取れる。例えば以下のような表現だ。

 

不確実な時代に無理やり長期プランを立てると、方向転換のタイミングを逃したり、間違ったキャリアプランにいつまでもしがみついたりする羽目になるだろう

 

つまり、究極的なゴール(=計画)は持たない。なぜなら、そんなものはわからないからである。無理に立ててしまっても、こんな不確実な時代にそんなプランは意味がない。間違っている可能性もあるわけだ。それにしがみついていても、今を無駄にしてしまう可能性がある。

 

実際、この考え方を裏付ける研究もある。スタンフォード大学で教育学・心理学の教鞭をとるジョン・クランボルツ教授は、米国のビジネスマン数百人を対象にした調査で、キャリア形成のきっかけのうち80%が偶然であるということを突き止めた。この調査結果を元に、彼はこの調査結果をもとに、「計画された偶発性=プランド・ハプンスタンス・セオリー」という理論を作り上げた。これはすなわち、「キャリアは偶発的に生成される以上、中長期的なゴールを設定して頑張るのはナンセンスであり、努力はむしろ「いい偶然」を招き寄せるための計画と習慣にこそ向けられるべき」という考え方となる。

 

その反対が、いわゆる演繹的な考え方である。演繹的な考え方とは、論理学の観点で言うと、ある正しさを証明した命題があって、それのもとで、手元にある事象について結論をつけると言う考え方を指す。これをキャリアに合わせて考えてみると、中長期的な目標があって、それに到達するために、今および数年後の自分の立ち位置を考えて行く、と言う立場に当たる。

 

正直自分はこの考え方がとてもしっくりきている。10年前から自分は自分の大いなる目標を立て、それに当てはめた時に、自分は今何をすべきかと言うところを考えてきた。一番最初の会社選びも、MBAも、そして現在の職場も、背後には全て共通する大きな目標があって、それを視野に置いた時、どこにいるべきか、何をすべきかが見えてくるような気がした。目標がなければ、自分が目指すべき山がなければ、自分は自分をコントロールできないし、奮い立たせることもできない。そんな考え方でキャリアを考えてきたフシがある。

 

そして、この著者が指摘する、「無理やり長期プランを立てて、方向転換のタイミングを見失ったり、間違ったキャリアプランにしがみつく」と言うことがないかと言うと、嘘になる。実際に、常日頃から、自分が立てている大いなる目標が、今のこのご時世に目標として成立しないのではないかと、常に根本的な問いに立たされてきた。その度に解釈を変え、目標を修正し、登るべき山を変える。でも目標を立てると言う行為はやめない。なぜならば、そうでもしない限り、自分は自分を定義できないし、自分のやりたいことを見定めることができないと思っているからだ。

 

この自分の考えを見事に整理してくれているのが、岡島悦子さんがまとめた『抜擢される人の人脈力―早回しで成長する人のセオリー』にある、タグづけの考え方だ。詳細は一年以上前にまとめた記事があるのでそれを参照して欲しいのだが、簡単に整理すると以下のようになる。

抜擢される人の人脈力  早回しで成長する人のセオリー
 

dajili.hatenablog.com

 

主体性が求められる今の日本社会におけるキャリア形成において、仕事ができるか以上に、いかにして仕事をもらうか(=抜擢されるか) が重要になってくる。そのためには、常日頃から自分が周りからどのように認識されるか、そのイメージをコントロールし、アピールしていかなければならない。

 

これを読んだ時、個人的にとても納得した部分がある。それはチャンスの掴み方の考えだ。チャンスを掴むには、まず自分が何者であるか・何がやりたいかを周りに伝えていかなければならない。そうすることで、例えば周囲にそのようなチャンスがあったときに、「ああそういえば彼/彼女、あれやりたいって言ってたな。こんな仕事きたから、彼に渡してみようか」というような形になり、チャンスが回りやすいと言うものだ。

 

これはある意味では、キャリアにおける予言の自己成就とも言えるだろう。予言の自己成就とは社会心理学的な考え方で、単なる思い込みだったとしても、声に出して自分はそうだと思い込み続けることで、本当にその思い込み通りの人間になって行く、と言う現象を指している。この現象は、心理学の多くの研究成果が実証している。私はキャリアにも同様のことが言えるのではないかと思っている。すなわち、自分で目指すべきものを見つけ、それが自分が求めているものだと思い込む。そうしてそれに向かって必要な努力を続けて行くことで、本当にそれを達成すると言うような一連のプロセスが本当にありうると言うことだ。

 

そう言う意味では、キャリアにおける中長期的目標というのはやはり個々人のアイデンティティを構築する上で、そして様々なチャンスを惹きつけるという点において大いに強さを発揮するものではないのだろうか。こうして考えてくると、冒頭で紹介した本の著者の帰納的なキャリアも、演繹的なキャリアも、どちらもありのように思えてくる。さて、あなたのキャリアの考え方はどちらですか?

いま日本の企業に組織開発が必要な理由

 

組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす

組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす

 

 

ビジネスにおいて組織が重要であることはいうまでもありませんが、ビジネスを考える上で、組織開発についてはあまり注目されていないのが現状でしょう。ビジネスにおいて、いかにして戦略上優位なポジションを構築できるか、あるいはコストダウンを行うべきかというところにはフォーカスがいく一方で、いかにして良い組織を作り上げるかという点に対しては、比較的優先順位が下がっているのではないでしょうか。

 

私もコンサルタントとして仕事を行っていく中で、よくプロジェクトでコストダウンなどに関わることがありますが、ほとんどのビジネスパーソンはいかにしてアイデアを実現するかというところに注目が行きがちで、その背後にある組織のダイナミズムにあまり注目しないのが現状です。しかし、いざ実行フェーズに進むにあたり、実際にアクションを行う担当レベルの腹落ち感が醸成されていなかったり、そもそも別の組織について改革プロジェクトの理解が得られていなかったりと、組織がボトルネックでプロジェクトがなかなか進まないケースが多く存在します。

 

この本は組織開発についてその哲学的なバックボーンも含め体系的に書かれたものですが、これを読み進めるにあたり、組織開発にかかる喫緊の問題意識について考えざるを得ませんでした。

 

なぜそもそも組織開発なのか?この問題意識を考えるにあたり、おそらく以下2つの視点で考えるべきかと思います。

 

(1)新しい職場のあり方が求められている

皆様ご存知の通り、日本は三種の神器である「年功序列・終身雇用・企業別組合」を機能させ、競争優位を確立してきました。このシステム中で、働く人々は自身の仕事にフォーカスすることができ、良好な労使関係を築いてきたと考えられます。こうした中では、組織開発の重要性は大きくはありませんでした。なぜなら組織はすでに企業によって作り上げられたものであり、そこで働く人は何もそのプラットフォームを疑うこともなく仕事に没頭できていたからです。

 

しかしながら、時代の変遷に伴いそうしたシステムが内側から変化していくにあたり、労使関係が変わっているのではないかと考えます。というと、企業を取り巻く環境の変化に伴い、終身雇用を謳っていても完全に保証はできない状態になっているからです。こうした中でそこで働く人も、自分がその組織で成長の見込みがこれ以上ないと判断すると、会社の外に機会を求めることが自然と多くなってしまうからです。実際に、日本の会社に対する信用度は、グローバルで見ても非常に低いと言われています。*1

 

こうした中で、企業は社員が自主的に生き生きと働いてもらう場として組織を設計しなければならなくなりました。さもなくば、人材の流出が免れないからです。

 

(2)人材の多様化が進んでいる

従来は、日本の組織のマネジメントは非常に容易でした。というのも、上述の通り、終身雇用、年功序列というシステムの中で、会社の中の人材はある程度バックグラウンドが似通っていました。大企業になると、4年制の大学を卒業後、新卒で入社、特に転職することもなく同期と同じような異動等を経ている形になります。そうした金太郎飴的人材が組織の中に集まっていました。私はこれはとても素晴らしいことだと思っています。なぜなら画一的な研修プログラムを通じ、人材の共通化を図ることで社員間のコミュニケーションを円滑にすることができるからです。実際日本企業の組織力が世界的に賞賛された時期には、この制度がうまく機能していたのでしょう。

 

しかしながら、日本社会の変化に伴い、組織の中の人材も多様化が進んでいるのが現状です。例えば、労働市場の流動制増加に伴う、転職組の増加。社外で経験を積んできた人を、画一的な経験で共有されたチームの中でどのように機能させるかという問いは、今までにはほとんどなかったかと思います。

 

また、ライフスタイルの変化も上げなければなりません。働く以外の価値観に対して人々が重要視することになってきており、それぞれの社員がより主体的に働き方を選ぶことができるようになっています。これら動きは、今までの企業文化の中にはありませんでした。

 

つまり、多様な人材をマネージし、最大のアウトプットを生み出すという考え方が、今になって重要性を増してきたと言えるでしょう。組織開発においても、こうした多様な人材をどのように活かしていくかというのが、喫緊の課題になっているのではないかと考えます。

 

この本においても、これらの問題意識が強くにじみ出ています。個人的にも非常に興味があるトピックなので、今のコンサルタントとしての仕事を続ける中で引き続き実践していければと思います。