日本語を使えば中国語は簡単にマスターできる

今までこのブログでは、INSEAD MBAに在籍する学生として、INSEADとはなんぞや、MBAとはどういうものか、リアルな状況をお伝えして来ました。このコンテンツに加え、中国語の学習方法についても紹介していきたいと思います。何を隠そう私は中国語を独学でマスターした人間です。一人でも多くの人に中国語に興味を持ってもらいたいと思い、中国語に関するトピックも増やしていきたいと思います。

 

なぜ私が中国語なのか?このつながりに不思議を感じる方もいらっしゃるかと思いますので、私のバックグラウンドを簡単に説明したいと思います。今でこそMBAの学生ですが、実は私は過去10年にわたって中国語と関わってきました。当時海外に行ったこともない私が中国語を勉強したのは10年前。大学の第二外国語で中国語を履修していた私は、物は試しにと中国語圏である台湾に初めて海外旅行先としていきました。そこで、流暢に日本語を操る台湾人の多さにびっくりします。台湾は日本語学習者の割合が世界地多いことでも有名なのですが、街ゆく人ほとんどが日本語を喋れたようにに記憶しています。一方の私は、1年間中国語を履修していて発することのできた言葉が「謝謝」くらいという体たらく。これではいけないと一念発起し本格的に勉強を始めました。

 

海外MBAにも行っておきながら英語もろくに話せない(そしてMBA出願時にはTOEFL等の試験で大いに苦しんだ)純粋なるジャパニーズの私ですが、英語以上に流暢な中国語を話すことができます。MBAでも、中国人のクラスメートに、「Dajiliは中国語の方がうまい」と言われるくらいです笑 

 

なぜここまで流暢に話すことができるのか。というのも、この10年の間、合算すると一年の半分を中華圏で過ごし、ビジネスおよび学術の両面にわたって、中国語を使う機会に恵またからだと思っています。まず学術の方面から。大学の学部時代には課外活動を通じ、講演会・国際会議の同時通訳や中国語学術書の日本語訳にも携わりました。そしてビジネスでは、価格交渉や契約締結等、中国語話者を相手とした中国語による商談を通算で500回以上行ってきました。また現地にも駐在し、ローカルスタッフの育成から現地販売会社の制度設計など、様々なシーンで中国語を使用する機会に恵まれました。

 

また、この10年間で様々な中国人と接して来ました。ビジネスの際には現地社員や取引先の社長、学術面では教授や出版関係者などと中国語を介してコミュニケーションをとりました。学生時代には、中国の工場で働くブルーカラーワーカーと寝食を共にした経験があります。MBAでは、中国のエリートと交流して来ました。また地域も、北は内モンゴルから南は深センまで、縦に横に様々な人々と中国語を使いコミュニケーションを取って来ました。

 

このように様々な形で中国語を使って来ましたが、二つの重要なことに気がつきました。まず一点目として、「中国語ができることのアドバンテージは非常に大きい」ということです。これは私だけでなく、私の身の回りの中国語ができる日本人全てに共通して言えることです。特に日本人の間では、ビジネス上や個々人のキャリアにおいて、中国語が果たす役割というのはとてつもなく大きいのです。

 

想像してみてください。もしあなたが日本の企業に勤めているとします。鉄道など日本国内の需要に絞った特定の業種を除き、ほとんどのビジネスにおいて海外向けのビジネスがあると思います。もしあなたがそうした事業に属していなかったとしても、あなたのデスクの隣の事業は、海外向けのビジネスを行なっている可能性が非常に高いと思います。その海外向けのビジネスの中で、どこの国向けが一番大きいでしょうか?中国向けが、一位とは言わないまでもかなり上位の地位を占めているのではないでしょうか?

 

ここからもわかる通り、ビジネス面における中国との関係というのは年々深くなって来ています。実際、日本の貿易相手国としては、中国はここ数年アメリカを差し置いてトップの座に君臨しています。またその関係性も多岐にわたっており、製造業などのハードな分野から、観光などのソフトな分野まで、まさにありとあらゆる分野で中国が切っても切れない存在になっていると思います。そして、その中国人のほとんどが、英語をうまく話すことができません。実際東京の街中で目にする中国人の英語は、あまり拙くてわかりづらいかと思います。ビジネスの面においてもそれは同じ現象が起きていて、少なくとも私が会って来たビジネスパーソンの中で、英語を流暢に喋ることのできる人は全体の5%もありません。すなわち、中国語をわかることの需要というのは非常に大きいのです。

 

一方で、日本において中国語を理解することができる日本人というのは非常に限られている印象を受けます。現に私の過去の職場においても、中国におけるビジネスの比率が非常に大きいにも関わらず、中国語話者は一事業部につき多くても3人ほどです。一事業部が30人ほどでしたので、10人に1人な訳です。もちろん、海外ビジネスにおいて中国の占める割合は10%でしょうか?そうではないはずです。

 

すなわち、現在日本においては中国語における需要と供給の大きなアンバランスが起きている状況なのです。この中でもしあなたが中国語をマスターしたとしたらどうなるでしょうか?そう、こうした需要を取り込むことができ、所謂引く手数多の人材になることができる、ということなのです。実際私の身の回りでも、中国語ができることによって昇進が早まったり、非常に早期のタイミングで海外駐在のチャンスをつかんだりと、メリットを享受しています。もちろん中国語という語学力だけでなく個々人の能力も見逃すことはできませんが、中国語がキャリアに取ってプラスになるということはおわかりいただけたかと思います。

 

二つ目に気づいたこととして、「中国語は、日本人にとっては非常に勉強しやすい言語である」ということです。もちろん、中国語と日本語は同じ漢字を使っているから勉強しやすいと巷では言われていますが、一方で同じ漢字でも使われ方が全然違うという人もいます。どちらも正しいのですが、私にとっては漢字を共有していることのメリットは非常に大きいのです。

 

具体例を説明しましょう。私が台湾に留学していた頃、中国語の塾に通っていた時期があります。私が入学したアドバンスコースにはクラスメートとして世界中から学生が来ていたのですが、欧米系の学生によくみられたのが、「会話はできるが文字は全くかけない」という状態でした。すなわち、小さな頃から興味関心があり、必死に勉強してなんとか会話はできるものの、漢字という難解な文字の記憶が非常に難しく、未だ漢字がかけないというものでした。日本人は、確かに少し書き方は異なりますが、ほとんど同じ形で漢字を共有していますので、非常にとっつきやすいのです。

 

どうして「非常に勉強しやすい言語である」という点に至ったのか。これは私のMBAの経験が大きく影響しています。私がMBAで勉強していた際、これも世界中から様々なバックグラウンドの学生が来ていました。その中でも、フランス人とスペイン人、イタリア人は彼らが話す英語に非常に特徴があり、聞いただけですぐに彼らの出身国がわかるくらい他とは違ったアクセントや発音を有していました。例えばフランス人だと、rの音が若干「h」になります。これはフランス語が「r」を「h」に近い音で発音するからであり、準備するという意味のprepareが「プリペア」ではなく、「プヒペハ」というかわいい音に変わります。

 

そこで、「どうして彼らは共通してこうした話し方なのだろう」という素朴な疑問が湧きました。そこで見つけた興味深い本が、『フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本』という本でした。

フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本

フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本

 

この本では、文字通り、同じラテン語系に属するフランス語・イタリア語・スペイン語は、文法・語彙が非常に似ていることから、3つの言語をセットで勉強した方が非常に効率的だ、という主張の元、様々な文法について3つの言語を比較して載せています。比較言語学のまさに王道とも呼べるべき本なのですが、この本を手にとって気づいたのが、これら言語と英語の類似性です。

 

例えば、前出のprepareという言葉、フランス語でも実はpreparerとほぼ同じ。他にも経験という意味の英語はexperienceですが、フランス語もexpe'rienceとなります。英語とフランス語はとても似ている。そして、どうやらフランス人は、フランス語の考え方そのままに、英語を話しているのではないか?そう考えるようになりました。出ないと上記の発音の違いが説明できないからです。これは言い換えれば、フランス語話者は、もともと彼らの母国語であるフランス語を話すように、英語を話していると言えます。フランス語の言葉を英語流に変えて話しているわけです。これはまるで、関西人ではない別の地域の人が冗談交じりに関西弁を話すとき、「ありがとう」を「おおきに」に変えたり、少しイントネーションを変えたりして、関西弁風に変えて話しているのと同じようなものです。もっとも関西人からすると「エセ関西弁」として嘲笑の的にはなりそうですが、それでも言語として伝わっているので問題ないわけです。

 

あれ、これと同じことが中国語と日本語にもいえるんじゃないか?そう思ったのがこのタイトルである「日本語を使えば中国語は簡単にマスターできる」という視点です。中国語と日本語には共通点が非常に多いです。ならばいっその事、その日本語で使える知識を全部活用すれば、中国語はものすごく簡単になるのではないでしょうか?そしてマスターすれば非常にメリットの多い中国語を、比較的短時間でものにすることができる。そう考えたのがこのメソッドの出発点です。

 

このメソッドについて、今後このブログを通じて詳細を説明していきたいと思いますが、ポイントとなるのは大きく以下の三つにまとめられると思います。

 

①文法:中国語の文法はあってないようなもの。日本語脳で8割は攻略できる。

②語彙:難しい言葉を喋ろう。難しい言葉ほど、日本語と中国語は同じ。

③発音:日本語の音との親和性を掴もう。

 

現在中国は何かとトピックになる国です。経済が芳しくないとニュースが飛び交う中、米中貿易摩擦の影響を受け、ますます先行きがわからないのが現在だと言えます。しかしながらどういったシナリオになるにしても、中国の人々が豊かになっていくに連れて、日本における中国の存在感はますます大きくなることは間違いようのない未来かと思います。そうした中で、中国語を少しでも理解することができれば面白いと思いませんか?そして英語ではない別の言語である中国語という武器を手に入れ、キャリアを高めたいとは思いませんか?このブログがこれらモチベーションに応える一助となればこれほど嬉しいことはありません。

 

このブログでは引き続き上記三つの観点について、私が過去中国語を使って遭遇した様々な小話を交えながら詳細に説明していきたいと思います。もちろんMBAの更新も続けてまいりますがこちらもどうぞお付き合いください。

 

では、では

 

 

 

 

INSEAD MBAと中国

今回のテーマは、中国とINSEADという視点。今までのブログの記事とは若干系統が異なるトピックですが、個人的に中国は長年取り組み続けたいトピックですので、このブログでも徐々に紹介していきたいと思います。

 

なぜ中国×INSEADなのか。この視点に至るまで2つの出来事がありました。1つが日本の、いや世界的な中国に対する関心です。最近でもMBA授業の余談は米中貿易戦争がほとんど。Huawei出身の学生に現在の状況について教授から質問が飛んだりと、まさにホットなトピックです。また日本においても中国ビジネスというのは切っても切れない存在になりつつあります。現在の日本の貿易相手国でも、アメリカを差し置いて中国がトップ。全体の20%を占める割合となっています。ロボティクスや自動車など、現在の日本で好調な産業も中国の輸出割合は比較的多く、中国の動向に関心が行くのもある種当然なのかもしれません。

 

2つ目が、中国MBAプログラムとの比較です。最近INSEADにキャンパスビジットにいらっしゃる方の中で、INSEADをアジアMBAの中に位置付け、中国MBAと比較をされる方が多くなってきました。特にCEIBSは近年Financial Times紙で評価が上がってきており、様々な記事でCEIBSとはなんぞやという記事が紹介されています。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/278811

 

こうした中で、INSEADは中国に対してどのようにアプローチしているのか。一言で言えば、「INSEADは中国をかなり重視していて、学生としても中国の勉強に役立つ」というものです。以下簡単にまとめてみたいと思います。

 

①学生

意外に思われるかもしれませんが、欧州のビジネススクールというイメージの強いINSEADにあって中国からの留学生比率はかなり高いです。全国籍の中でも3位(1位はインド・2位はアメリカ)となっており、存在感の強さが目立ちます。

そうしてやってきた中国人学生は、純粋培養のエリートというよりは、良い意味で一癖も二癖もある学生ばかり。この方がINSEADらしいと言えばらしいです笑。例えば北京大→外交官という花形エリートの道を歩みながら、「ビジネスの世界に身を投じたい」と言ってコンサルに転職しINSEADに来た学生や、中国人でありながらドイツの大学で修士号まで取りそのまま現地のメーカーでエンジニアとしてい働いている学生などなど多種多様です。そうした中で、色々な中国を見れるというのはINSEADならではの環境なのかもしれません。

 

そしてこれらの学生に加わるのが、国籍は違うけど中国にルーツを持つ学生です。オーストラリアやカナダ・アメリカに多いのですが、流暢に英語を扱う一方で、中国を少し遠目に見ているような学生です。またシンガポール人の存在も忘れてはなりません。彼らの中には、小さい頃に中国から移住して来たという人や、シンガポール政府から奨学金をもらって高校からシンガポールに来たというエリートも含まれます。彼らは中国語を通じて中国人と強固なネットワークを形成しており、INSEADにおいて一大コミュニティになっているような気がします。

 

そうした彼らの中に、「中国語ができる日本人」という枠(笑)で入れさせてもらっています。彼らは中国語版LINEであるWechatでチャットグループを作り、授業の情報や食事や旅行の誘いなど、ありとあらゆる情報を交換します。ここが個人的には就職活動や選択科目のチョイスなどに大きく助けになったことはいうまでもありません。

 

 

②科目

授業においても、中国の存在感が目立っています。というのも、中国にフォーカスした科目があるどころか、ケースでも中国の事例が扱われる授業が多いからです。

 

選択科目について。シンガポールキャンパス限定にはなりますが、中国にフォーカスした科目が多く開講されています。例えば「China Strategy」。中国の様々な業界からゲストスピーカーを招聘し、中国の現状についての議論を行います。またChina's Capital Marketなど、科目名に「China」がつく科目が存在します。こうした科目はTrekを除き他の国ではなく、INSEADの中国フォーカスが見て取れます。

 

また、これ以外の授業でも、中国の事例を扱い議論をするという場合が多いです。今まで私が関与して来た中でも、AlibabaやHuaweiと言ったメジャーどころは言わずもがな、北京のデザイン会社、深センのハードウエア等多岐にわたっており、文化やビジネスに対してより一層理解ができるようになっています。

 

③その他

まず、ゲストスピーカーにおいても中国出身の起業家、CEOなどが多い印象です。私がフランスにいた11月、ハイアールのCEOである張瑞敏が講演を行っていました。個人的には非常にためになる内容で、色々考えさせられた記憶があります。

また課外活動も充実。TrekではChina Trekというものも存在し、北京・上海に一週間かけて企業を訪問するといいます。またそれ以外でも学生主導のTrekがあり、中国ビジネスのさらなる理解に役立ちます。

 

以上のようにINSEADにおいても中国ビジネスを勉強するというのは大いに可能です。むしろシンガポール・フランスという少し離れた場所から、中国という国を客観的に見るという点においては、非常に恵まれた場所になるのかもしれません。

 

ただし、一点注意すべきなのが就職活動。INSEADは中国において知名度はまだまだ低く、中国人学生は中国国内での就職活動に苦戦しているようです。また中国国内での就職は基本的に中国語(しかもネイティブレベル)が必須であり、「卒業後に中国」というのは非常に狭き門です。INSEADはキャリアトランジションを掲げており、卒業後フレキシブルな選択が可能と謳っていますが、この辺りは現実に即して考える必要があるようです。

 

では、では

 

 

 

INSEADでの生活費

前日の記事でキャンパスライフの違いについて触れたので、今回はダイレクトに生活費について紹介したいと思います。私はINSEADのプログラムの中で、ちょうど半分フランス、半分シンガポールに滞在していました。ですので、どちらの生活もある程度の期間行ってきました。

 

よくよく考えると、シンガポールとフランスというのは世界的に見ても物価の高い地域です。Forbesが発表した物価が高い都市ランキングでも、シンガポールは世界1位、パリは世界7位と、堂々のランクイン。生活費も必然的に高くなるのではと思っていました。私は私費で留学している身ですので、こうした生活費がかなりダイレクトに影響して来ることはいうまでもありません。

 

 

ただ、すでに9ヶ月近く生活してみて感想としては、「とんでもなく高い」というわけでもない、ということです。もちろん、インドネシアや台湾、中国といった物価が安いところと比べたら違いますが、東京に住んでいた身としてはそこまで遜色ない印象です。

 

ということで、各キャンパスでどれくらいかかるのか、大まかにまとめて見たいと思います。

 

①フォンテーヌブローキャンパス

・食費・交通費・その他雑費(一人当たり):毎月7~12万円

フォンテーヌブローでは、自炊をするかしないかで費用が大きく変わってきます。外食の場合、最低でも€10(ケバブだと€5ぐらいでいけますが…)かかって来るので、ほとんどの学生が自炊をすることになると思います。自炊をした場合、一食あたりの食費が200-500円に抑えられるのでとても経済的。フォンテーヌブローにはスーパーはもちろんのこと、マルシェという週三回開かれる朝市があり、そこで新鮮な食料を購入することが可能です。

そして個人的に活用していたのが学食。外のレストランとは異なり、学食は比較的安価に抑えられており、€3~からおなかいっぱい食べられます。ただし、平日の昼しかやっていないので要注意。

ちなみに、パーティや飲み会は逆に安上がり。皆スーパーでワインを買い、持ち合いで宅飲みを行うのがメインです。ワインは€3~と非常にリーズナブルで、簡単な食事を買ったとしても€10~20になりますので、財布には優しいです。

 

交通費ですが、フォンテーヌブロー内の移動では公共交通機関はほとんど使いません。逆にパリまで行こうとすると、片道だけでも€10近くかかるので、どれだけ週末パリで羽根を伸ばすかによって金額が変わってきます。

 

 

・住居費:毎月8~13万円

フォンテーヌブローはフランスの田舎ということもあり、そこまで住居でお金はかかりません。私はファミリー向けの物件に住んでいて、比較的広めだったのですが、それでも€900台でした。単身で、かつルームシェアをすると、さらに節約できると思います。ただし、INSEADに寮はないので、他のビジネススクールと比べると割高に見えるかもしれません。

 

・旅費(一人当たり):毎月5~10万円

フランスという立地を生かし、近隣諸国に足を伸ばして旅行に出かける学生は多くいます。日本から比べれば圧倒的低価格で旅行することは言わずもがなですが、それでも一回あたりの旅費はそれなりにかかります。

ちなみに私の場合、P2の1ヶ月の期間に、ドイツ・デンマーク・フランス(モン・サン・ミシェル)・イギリスと旅行を行い、宿泊費と交通費で計15万円使ったこともあります…。

 

計:20-40万円(平均30万円)

 

シンガポール

・食費・交通費・その他雑費(一人当たり):7〜10万円

高いと言われるシンガポールですが、個人的には食費はそこまで高さを感じません。私の生活パターンは、朝食:近くのホーカーセンター(屋外大衆食堂的なところ)、昼食:キャンパス近辺のフードコート、夕食:レストランで食事をしているのですが、これで毎日2000円いかないくらいです。ネットワーキングイベントや飲み会などのイベントがなければ、比較的安上がりで生活ができると思います。

外食も、場所を選べば3000-4000円でそれなりに美味しいものが食べれます。クラスメートと外食する際もだいたいこのレンジの場所に行くことになります。

交通費も地下鉄・タクシー等の公共交通機関は非常に安く、財布に優しいです。特にタクシーは先進国にしては安く、普段から活用しています。

 

・住居費:毎月10~20万円

フランスより高いのがこの住居費。シンガポールは全体的に住居の費用が高く、ルームシェアを行なってもだいたい一人当たりSGD1200-1400かかると言われています。私の場合は家族帯同でしたので、HDBというシンガポール現地人のための公営団地のような場所に住んでいます。価格が抑えられるというのがHDBを選んだ理由ですが、それでもSGD2000(約16万円)します。

 

・旅費:毎月4-7万円

ヨーロッパに比べるとアジアの旅行は比較的安上がりになりますので、これぐらいの金額に落ち着きます。例えば週末ジャカルタに企業訪問した際も、フライトと宿泊費含め4万円程度でした。勿論行く場所にもよりますが、東南アジア内での旅行となるとこれぐらいの費用になるかと思います。

 

計:25万円〜40万円(平均30万円)

 

ということで、1ヶ月あたり25~30万円というのがだいたいの生活費になります。これで10ヶ月プログラムということで10かけして、だいたい250〜300万円というのが現地での生活費になります。勿論、個人差がありますので一概には言えませんが、だいたいの目安として参考になるかと思います。

 

では、では

シンガポールキャンパスとフランスキャンパスの違い

卒業も近くなり色々と書き残すことがないように、ギアを上げている今日この頃。今日はINSEADの特徴でもあるキャンパスの違いについて紹介したいと思います。

 

INSEADには現在フォンテーヌブロー(フランス)・シンガポールアブダビキャンパスの三つキャンパスがあります。MBA生の場合、入学をフランスかシンガポールかで選択をすることができ、アブダビはClass of Julyの場合、P3の1ピリオドのみ選択することが可能です。

 

一口に同じ学校といっても、キャンパスが異なるだけで学校生活やネットワーキングにも大きな違いが見られるような気がします。以下それぞれの違いについてまとめて見ました。

 

①授業

そうです。シンガポールとフランスにおいて、授業が異なります。同じMBAプログラムなのにそんなことがあっていいのか、と思わず言いたくなりますが、キャンパスによってコア科目・選択科目が若干異なってきます。

 

まずコア科目から。こちらについては、科目自体は変わりません。フランスにいてもシンガポールにいても基本的に履修しなければならないコースは同じ。科目の評価方法もスケジュールも同じです。

 

では何が違うのか。科目の内容にあります。というのも、同じ科目でもそれを教える教授が変わります。そしてその教授が提供するケースも、教授の好みによって若干変わります。そしてこの教授の違いというのが、学生のその科目に対する評価自体を変えてしまうから不思議です。

 

まあ、同じキャンパスにいても教授が異なるケースもあるわけで、この内容の違いをキャンパスの違いに帰結するのもどうかと思いますが、オフィシャルには「同じ科目だ」といっている中で、こうした違いがあることには注意する必要があるのかもしれません。

 

次に選択科目について。こちらについては、内容もさることながら、開講されている科目自体も異なります。例えばシンガポールキャンパスだと、アジアにフォーカスした科目が開講されています。例えば私が履修した「Strategies for Asia Pacific」はシンガポールキャンパスのみでの開講となっています(個人的にはこの授業は非常に良かった)。一方フランスにおいては、EUなどに関連する授業が開講されていると言います。

 

 

②ネットワーキング

個人的にはやはり最大の違いといえばここでしょうか。キャンパスがそれぞれフランスとシンガポールにあるので、学校に訪れるゲストスピーカーや卒業生についても、地理的な偏りが見られます。シンガポールにおいては、東南アジアを中心としたネットワークに容易にアクセスできますし、一方でフランスにおいてはヨーロッパ全体のネットワークにアクセス可能です。

 

③学生生活

最後に学生生活。フランスとシンガポールはキャンパスのロケーションと地域の違いにより、学生生活も異なります。フランスにおいては、キャンパスがフォンテーヌブローというパリ近郊の「田舎」ですので、大体が学校近辺にすみ、夜になるとワインを片手にネットワーキングと言う名のパーティが繰り広げられます。

 

一方でシンガポールキャンパスはと言うと、アジアの都市のほぼ真ん中に位置します。それゆえ、住む場所もまだらで、学校が終わると大体近隣のレストランに集まるか、離散するかになります。シンガポールはいい意味でも悪い意味でもドライな学生生活になっているような印象です。

 

同じ学校といえども、キャンパスによって違いがあるので、INSEADを志望される方はキャンパスの選択も注意された方が良いかと思います。

 

では、では

INSEAD学生の卒業後の進路について

5月も末になり、残すところMBA生活もあと1ヶ月近くとなりました。Intensiveなプログラムということもあって本当に充実した日々を過ごしていますが、それがあと少しともなると少しずつ感慨深くなってきています。

 

このP5という期間はとても特殊です。というのも、学生によってこの2ヶ月の使い方が全く異なるからです。就職活動を終えた学生は、この期間を旅行期間として活用し、様々なところに繰り出しています。クラスメートの中には、P5でとる授業をピリオドの前半に固め、残り1ヶ月をひたすら旅行に当てるというツワモノもいます。シンガポールキャンパスに在籍しているはずなのに、授業の合間の2週間にフォンテーヌブローに滞在する、なんていう学生もいます。

 

また、引き続き就職活動を行う学生も見受けられます。コンサル・金融以外の企業を第一優先に考えている学生にとっては、企業側もP4・P5関係なく独自に採用活動を行なっているので、それらに合わせじっくりと面接をするという学生もいます。

 

こうした中で、学生の就職活動の模様が少し面白いなと思ったのでここにまとめたいと思います。面白いのが、多様性を謳うINSEADの中においても、国籍やバックグラウンドに基づき卒業後の進路にパターンが見受けられることです。大きく分けて、学生の卒業後の進路については、①戦略コンサルティング、②金融、③テック・事業会社系、④起業・その他の大きく4つにまとめられます。④はベット紹介するとして、ここでは①②③について以下順を追って説明したいと思います。

 

①戦略コンサルティング

INSEADが「コンサルスクール」と称されるだけあって、戦略コンサルティングを卒業後の進路として考える学生は非常に多いです。INSEADの公式情報においても、卒業生のおよそ4割がコンサルティング業界に進み、また3割がMBB(McKinsey、BCG、Bainの頭文字をとったもの)にいくというので驚きです(社費生含む)。そのためか、MBBにおいてINSEADは最大の採用数を誇っており、例えばMcKinseyはグローバルで見るとINSEAD卒のコンサルタントが、他のビジネススクール卒のコンサルタントを差し置いて一番多いといいます。ダイバーシティを謳うINSEADですが、卒業後の進路までは流石にダイバーシティではないようです笑

 

余談にはなりますが、なぜMBBを中心とした戦略コンサルファームがINSEADからここまでの数を採用できるのかというと、それはやはり学生の多様性、特に欧州を中心とした多様性にあるのではないかと考えています。MBBのいずれもアメリカ企業ですので、アメリカ国内のオフィスは基本的に米ビジネススクールの卒業生から採用を積極的に行なっているといいます。ただ、たとえ世界一位の経済規模を持つといっても、一国にフォーカスしてしまっては採用数が限られてしまいます。一方でINSEADアメリカでの採用は少ないものの、キャンパスのあるヨーロッパやアジアでの採用が多いような印象です。戦略コンサルといっても今はグローバルファームですので、世界中にオフィスがある。そうしたオフィス、特に発展著しい地域においては、自然と採用も増える。そうしたアメリカ以外の需要増を、INSEADがうまく取り込んでいるのではないか、そう考えることができます。

 

閑話休題。これだけ採用数が多いので、採用プロセスも非常に整ったものになります。まず、P3に各社コーヒーチャットやケース面接対策セミナーなど、ありとあらゆるイベントを行い学生取り込みを行います。そのあと、P4の初めに会社説明会があります。そこで正式なキックオフとなります。会社説明会ののち学生は履歴書とカバーレターを提出し書類選考に臨みます。書類選考に通った学生は、学校で行われる一次面接に臨み、それに合格すると、今度は各オフィスによる二次面接、最終面接と続きます。このプロセスが、3月末〜4月末に終わるように、スケジュールがしっかりと整っています。すなわち、コンサル志望の学生は、このプロセスにある程度乗っかることで、効率的に選考を進めていくことができるわけです。「コンサルスクール」ならではの効率化ともいえるでしょう。

 

しかしながら、プロセスは一見すると非常に統一されていますが、それは「各地域の選考をまとめて一つに行なっている」だけにすぎませんので、やはり国・地域によって状況が異なります。各地域のオフィスには、現地言語が話せるかどうかを条件にするところが多いです。このため、英語が通じるシンガポール・ドバイ・ロンドン、そして中華圏内を除き、ほとんどの学生が自国のオフィスを志望します。例えば、日本の学生が日本オフィスを志望し、タイの学生がバンコクオフィスを志望します。これら「現地言語の制約がある」国々の学生にとっては、出身国のオフィスに申請すること自体がアドバンテージになりますし、逆に別の国で働くというのはよほどの理由がないと非常に難しく、自然と自国オフィスに回帰していきます。

 

また、選考の内実も各地域によって大きく異なります。というのも、いずれのコンサルファームも、各地域のオフィスが最終的な採用決定権を持っているのですが、当然各地域によって採用数や方針が同一企業においても変わってくるためです。例えば、日本やタイのオフィスを志望する学生(当然、ほとんどが日本人かタイ人)はほとんど全ての学生が書類選考をパスした一方で、あるファームの中国オフィスでは30人近くが申請して3人のみ書類選考をパスできたという非常に狭き門でした。そして、二次面接以降になってくると各オフィスでの面接になりますので、当然同国籍の学生が集まって情報共有を行います。こうなってくると、同じファームを受けてはいるものの、別の戦いをしているともいえるでしょう。

 

またオファーが出てからも、それぞれの国によってオファー受諾に対する考え方が大きく異なります。日本やタイなどは比較的シンプルで、オファーをもらったら基本的にそこにいく、という形です。一方で複雑なのは中華圏。特にシンガポール在住の中国人は中国国内のオフィスでオファーをもらうと、違う悩みに当たります。というのも、INSEADシンガポール在住の中国人は、自身もしくはパートナーがシンガポール政府から奨学金をもらってシンガポールに在住しているというケースが非常に多く、中国に帰ってしまうと多額の違約金を支払う必要があるそうです。

 

②金融系

コンサルスクールと称されるINSEADにおいても、投資銀行といった金融系のキャリアを志望する学生は少なからず存在します。こうした学生については、コンサルティングとは違った理由で「画一的なプロセス」が存在し、結果学生の特色も如実に現れてきます。

 

まず、金融系で特徴なのが、金融系のバックグラウンドを持つ学生しか志望しない、という点です。逆に、他のケースを聞いたことがありません。INSEADはキャリアチェンジの場をよくアピールしていますが、こと金融系のキャリアにおいてはそうはならないようです。

 

次に、ヨーロッパの学生は就職先としてロンドンが多いということです。これはINSEADがP1に、ロンドントレックと称して金融機関に学生を送り込むプログラムを実施しており、そこで学生がオファーをもらうというのが定石となっていることに起因します。現に、私のグループメートも、ある銀行のロンドン支店IB部門から早々にオファーをもらっていました。

 

それ以外の場所の選択肢となると、やはり自力で探すほかないようです。金融系を志望する学生が少ないということが起因しているのでしょうか、INSEADもロンドン以外の地域において強固なリソースを有しているわけでもなく、学生がそれぞれ独自に就職活動を進めている、といったような印象を受けます。例えば、私の友人の中国人は、学校のリソースを使わず自力でネットワーキングを行なっていました。

 

③テック・事業会社系

コンサルに次いで多いのが、このテック業界といえるでしょう。テック業界といっても定義は曖昧で、具体的な会社名で言えばGoogleAppleといった巨頭から、Agoda、Traveloka、Gojekといった新興テック、AmazonやShopeeといったEコマースやMicrosoftIntelといったハード系も含まれます。

 

また、これ以外にも事業会社にアプライする学生も一定数存在します。具体的にはSiemensSamsungDellNissanといった電機・機械・自動車系、ロレアルやグッチなどのRCLG(リテール・コンシューマ・ラグジュアリグッズの略称)他にもOil&GasやLogistics系など多種多様。

 

これらについて特徴的といえるのは以下の二つです。まずは学生について、テック業界に進む学生には、元戦コン出身者や異なるバックグラウンドを持つ学生が多いような印象を受ける一方で、事業会社系は、もともとそのバックグランドを有している学生がアプライする傾向にあるようです。テック企業については、戦コン出身者のExitとしてテック企業が魅力的なのに加え、働き方についても比較的フレキシブルな点なのが、彼らを魅了しているのかもしれません。一方で事業会社においては、各社MBA卒業生を対象にした「リーダーシッププログラム」を準備して、多様なキャリアプランを提供しているのですが、やはり基本的にそうしたプログラムに興味を持つのは、前職で類似した経験を持つ学生に絞られるようです。

 

二点目にあげられるのが、選考のプロセスについてです。各社採用学生数が1〜3名と、戦略コンサルティングファームと採用数が大きく異なるため、採用活動も各社ともバラバラ。期間も、書類選考からオファーまで4ヶ月以上かかる企業もあります。このため、これらを志望する学生の多くが、P5においても継続的に就職活動を行なっています。

 

事業会社やテックは、ロケーションを変えたい学生にとっては非常に魅力的な選択肢です。というのも、言語の制約が比較的緩やかで、企業側も人材の多様性を向上する目的なのか外国の学生を積極的に採用しているような気がします。MBA卒業後のキャリアでロケーションを変えるとなると、こうした企業が有効なオプションになると言えます。

 

では、では

INSEADがMaster in Managementを始めたってよ。

 昨日正式にアナウンスがされていますが、INSEADがこの度新しいプログラムとして、Master in Managementを始めたようです。詳細は下記WEB参照。

 

https://www.insead.edu/master-programmes/mim

 

ビジネススクール間で競争が激しくなる中で、他の欧州スクールがMIMプログラムを充実させているところに焦りもあったのでしょう。MIMを作ることでプログラムにおいても、INSEAD十八番の「多様性」を出したようです。

 

そもそもMIMとは何か。私自身もよくわかっていないのですがただ一つ言える違いとしては「年齢」でしょう。MIMは社会人経験も1~2年と少ない学生を対象にしています。こうすることによって、MBAが「過去のビジネス経験をベースに実務の観点で議論をする」というところにフォーカスするのに対し、MIMは「実務とは少し距離を置き、学術的な観点で議論を進める」という違いを生み出します。そして卒業後のキャリアにおいても、INSEADMBAは比較的、「従来のキャリアを変える」ためのトランジションの期間の位置付けが強いのに対し、MIMは「キャリアの良いスタートを図る」という位置付けが強いのではないかと考えています。

 

ただ、個人的にはこのMIMというプログラム、かなり中途半端になるんじゃないのではと危惧しています。理由としては、MIMとMBAのバリュープロポジションです。INSEAD(とくにMBA)が評価されているのは、何よりも①ダイバーシティ(国籍・キャンパス)、②米国MBAとの平均年齢の面でのマチュアさ、③(MBAのみ)1年制、です。Executiveはとくに①が、MBAは3つ全てがプラスに働いています。というのもMBAの例で見る限り、「キャリアを変えるためにMBAに行きたい」と考える人にとっては、INSEADは米国MBA以上に魅力的な価値を持っています。しかし、MIMの場合、①は、MIMを必要とするのが現状欧州の学生にとどまっており、他の地域での価値の訴求ができていないという点で活きません。②③は、そもそもMIMは卒業後すぐの学生を対象にしているため、また1年制を前提としているため、年齢・プログラム期間の面で差別化を図ることもできません。それどころか、INSEAD MBAの若い学生がMIMに流れ、年齢のダイバーシティを損なう恐れがあることも考えられます。すなわち、MIMはバリュープロポジションを下げる可能性すらあるのです。

 

また、キャンパスのキャパシティの問題もあります。INSEADは、フランスとシンガポールがメインのキャンパスで、そこにくわえサテライトオフィスの色合いが強いアブダビが続きます。キャンパスが複数あるのは良いのですが、現状のキャンパスの大きさを見る限り、MIMは完全にキャパオーバーな気がします。特にシンガポールキャンパスは深刻で、Exective MBAが始まった際にはほとんどの会議室が埋まり、MBAのリクルーティング活動に弊害が生じるのも目の当たりにしてきました。

 

また、INSEADはいずれのキャンパスにも寮がありません。条件は違えど土地に限りがあるフォンテーヌブローとシンガポールキャンパス近辺で、さらに学生を増やしたらどうなるのか、学生生活の不満が高まりそうです。

 

とネガティブな内容が続きましたが、悪いことばかりではありません。最終的にはINSEADにとってMIMはビジネススクールとしてのブランド向上につながると個人的には思いますし、アルムナイネットワークが増えるというのもメリットと言えます。また、何よりも感心したのが、欧米ビジネススクールの中でもトップの地位にありながらも、INSEADが常に価値向上のために考え、動いているという点です。まずはMIMの成功を願いたいです。

 

では、では

Silicon Valley Trek②〜シリコンバレーから見た日本〜

Silicon Valleyを一週間渡って見て、色々考えさせられたのが技術とビジネスの関係性です。前職が電機メーカーの営業ということもあり、テクノロジーやハードウエアといった分野に少なからず興味関心を持っていたのですが、今回のTrekでもそれに関連する産業を訪問したこともあり、色々と考えさせられました。

 

特に考えさせられたのが、シリコンバレーから見えて来た日本、特に日本のものづくりです。これもまた前回と同様逆説的ではありますが、最先端と呼ばれるものに触れ、それをベンチマークとしておくことで、今自分が携わっている(もしくはこれから携わるであろう)フィールドの問題点が浮き彫りになって来たような、そんな気がします。正直にいうと、「日本のものづくりってもう終わっているようなものだけど、工夫次第でなんとかなるんじゃないか」というものです。

 

Silicon Valley Trek中に起きたある出来事を紹介します。前回紹介した通り、我々はTrek期間中様々な会社を訪問しましたが、その中でも、シリコンバレーのロボット・スタートアップの企業を訪問しました。そこでは、日本でもよく見られるようになった接客用ロボットを製造・販売していました。小さな工場で、アジャイルとフレキシブルを売りにしており、日本の顧客を多く抱えていた、というのです。スタンフォードのPhDを中退したCTO曰く、「日本の顧客が口コミで我が社を紹介してくれているので、非常に助かっている」ということ。

 

ただ、この熱気とは裏腹に、技術面での素晴らしさをこの会社からはあまり感じませんでした。実際に工場ラインを見ましたが、正直なところとてもシリコンバレーの名に相応しいような最先端を扱っているとは言えません。3Dプリンタを用いてリーン生産を行なっていると豪語していましたが、扱っている3Dプリンタは比較的古いタイプのもので、そこまで生産性が高いとは思えません。また製品のデザインや性能についても、数多の深センのスタートアップを見て来た私からすると、ハードウエアの面でとてつもなく優位が築けているかというと、どうやらそうでもなさそう。なのに、日本企業はそうしたスタートアップからこぞって製品を購入している。彼らの会議室には、日本企業のロゴが掲載されており、「ここと取引をした」というのが堂々と掲げられていました。

 

私はCTOの次の言葉を聞いて、正直がっかりしてしまいました。「日本のお客さんの中には、我々がシリコンバレーにいるということだけで好意的に思ってくれるところもある。シリコンバレーがある種のブランドとして活きている。」

 

正直、このくらいの規模の技術力と開発力、生産能力を有した会社は、日本や中国に腐るほど存在しています。日本の大手企業においても、その気になればいくらでもこうしたラボのような場所は幾つでも作ることができる。優秀なエンジニアを雇い最新鋭の3Dプリンタでも用意すれば、いとも簡単に彼らを超えるようなスタートアップを作ることができます。それなのに、実際の日本の企業はそれをせず、こうしたスタートアップから製品を購入している。ここで私は、必ずしもこのスタートアップが悪いといっているわけではありません。彼らだって真っ当にビジネスをし、企業が必要とする製品を販売しているわけですから、それだけで社会的価値の高いことをしているわけです。問題の本質はそこではなく、日本企業の側にあります。

 

この企業を訪問後、これについてずっと考えていました。そこで出た結論は、「日本企業はやりたくてもこうしたことができない。だから、リーン生産や柔軟性を有したスタートアップを活用しているのではないか」という点です。ただ、この「できない」というのをさらにブレークダウンすると、技術的にできないのではなく、文化的・制度的にできないのです。大企業の中において、秩序を乱すようなスタートアップ的組織は毛嫌いされる。だからいくらケイパビリティもキャパシティも有したとしても、大企業の秩序の維持が優先され、スタートアップなどのリスクが高いものについては外部に委託する。そうした流れができているのではないか、ということです。

 

ここで感じるのは、日本企業に重大な「空洞化」が起きているのではないか、という懸念です。すなわち、比較的リスク性向の高い分野や、日本企業の既存の秩序を乱すようなグレーな分野においては、積極的に外部に委託がされる。アベノミクスによる円安によって、日本企業は軒並み好調が続いている一方で、賃上げをせずに内部留保はたまる一方ですので、潤沢な資金があります。その資金がどこに流れているかというと、内部ではなく、外部委託先なわけです。この傾向が続くと、いつの間にか日本企業の内部に何も残らなくなってしまうという状況に陥るかもしれないのです。

 

こうしたケースはすでに他でも見られます。例えばイノベーション論で有名なクレイトン・クリステンセン教授は『イノベーション・オブ・ライフ』の中で、PCメーカーであるデルの事例を取り上げています。デルは価格競争の中でコスト削減を目的に、委託先である台湾メーカーのASUSに委託を進めていきました。しかしながら、委託の中で技術力や開発力を蓄えて来たASUSが自社ブランドでPCを販売し、デルはさらに窮地に陥った、というストーリーです。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

  • 作者: クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン,櫻井祐子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
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この本では、著書のコンセプトから「人生あまり委託しないほうがいいよ」ということを述べているのですが、このデルのケースは、どうしても日本企業の未来につながるものがあるのではないかと感じざるを得ません。

 

 

では、では