INSEAD MBAと中国

今回のテーマは、中国とINSEADという視点。今までのブログの記事とは若干系統が異なるトピックですが、個人的に中国は長年取り組み続けたいトピックですので、このブログでも徐々に紹介していきたいと思います。

 

なぜ中国×INSEADなのか。この視点に至るまで2つの出来事がありました。1つが日本の、いや世界的な中国に対する関心です。最近でもMBA授業の余談は米中貿易戦争がほとんど。Huawei出身の学生に現在の状況について教授から質問が飛んだりと、まさにホットなトピックです。また日本においても中国ビジネスというのは切っても切れない存在になりつつあります。現在の日本の貿易相手国でも、アメリカを差し置いて中国がトップ。全体の20%を占める割合となっています。ロボティクスや自動車など、現在の日本で好調な産業も中国の輸出割合は比較的多く、中国の動向に関心が行くのもある種当然なのかもしれません。

 

2つ目が、中国MBAプログラムとの比較です。最近INSEADにキャンパスビジットにいらっしゃる方の中で、INSEADをアジアMBAの中に位置付け、中国MBAと比較をされる方が多くなってきました。特にCEIBSは近年Financial Times紙で評価が上がってきており、様々な記事でCEIBSとはなんぞやという記事が紹介されています。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/278811

 

こうした中で、INSEADは中国に対してどのようにアプローチしているのか。一言で言えば、「INSEADは中国をかなり重視していて、学生としても中国の勉強に役立つ」というものです。以下簡単にまとめてみたいと思います。

 

①学生

意外に思われるかもしれませんが、欧州のビジネススクールというイメージの強いINSEADにあって中国からの留学生比率はかなり高いです。全国籍の中でも3位(1位はインド・2位はアメリカ)となっており、存在感の強さが目立ちます。

そうしてやってきた中国人学生は、純粋培養のエリートというよりは、良い意味で一癖も二癖もある学生ばかり。この方がINSEADらしいと言えばらしいです笑。例えば北京大→外交官という花形エリートの道を歩みながら、「ビジネスの世界に身を投じたい」と言ってコンサルに転職しINSEADに来た学生や、中国人でありながらドイツの大学で修士号まで取りそのまま現地のメーカーでエンジニアとしてい働いている学生などなど多種多様です。そうした中で、色々な中国を見れるというのはINSEADならではの環境なのかもしれません。

 

そしてこれらの学生に加わるのが、国籍は違うけど中国にルーツを持つ学生です。オーストラリアやカナダ・アメリカに多いのですが、流暢に英語を扱う一方で、中国を少し遠目に見ているような学生です。またシンガポール人の存在も忘れてはなりません。彼らの中には、小さい頃に中国から移住して来たという人や、シンガポール政府から奨学金をもらって高校からシンガポールに来たというエリートも含まれます。彼らは中国語を通じて中国人と強固なネットワークを形成しており、INSEADにおいて一大コミュニティになっているような気がします。

 

そうした彼らの中に、「中国語ができる日本人」という枠(笑)で入れさせてもらっています。彼らは中国語版LINEであるWechatでチャットグループを作り、授業の情報や食事や旅行の誘いなど、ありとあらゆる情報を交換します。ここが個人的には就職活動や選択科目のチョイスなどに大きく助けになったことはいうまでもありません。

 

 

②科目

授業においても、中国の存在感が目立っています。というのも、中国にフォーカスした科目があるどころか、ケースでも中国の事例が扱われる授業が多いからです。

 

選択科目について。シンガポールキャンパス限定にはなりますが、中国にフォーカスした科目が多く開講されています。例えば「China Strategy」。中国の様々な業界からゲストスピーカーを招聘し、中国の現状についての議論を行います。またChina's Capital Marketなど、科目名に「China」がつく科目が存在します。こうした科目はTrekを除き他の国ではなく、INSEADの中国フォーカスが見て取れます。

 

また、これ以外の授業でも、中国の事例を扱い議論をするという場合が多いです。今まで私が関与して来た中でも、AlibabaやHuaweiと言ったメジャーどころは言わずもがな、北京のデザイン会社、深センのハードウエア等多岐にわたっており、文化やビジネスに対してより一層理解ができるようになっています。

 

③その他

まず、ゲストスピーカーにおいても中国出身の起業家、CEOなどが多い印象です。私がフランスにいた11月、ハイアールのCEOである張瑞敏が講演を行っていました。個人的には非常にためになる内容で、色々考えさせられた記憶があります。

また課外活動も充実。TrekではChina Trekというものも存在し、北京・上海に一週間かけて企業を訪問するといいます。またそれ以外でも学生主導のTrekがあり、中国ビジネスのさらなる理解に役立ちます。

 

以上のようにINSEADにおいても中国ビジネスを勉強するというのは大いに可能です。むしろシンガポール・フランスという少し離れた場所から、中国という国を客観的に見るという点においては、非常に恵まれた場所になるのかもしれません。

 

ただし、一点注意すべきなのが就職活動。INSEADは中国において知名度はまだまだ低く、中国人学生は中国国内での就職活動に苦戦しているようです。また中国国内での就職は基本的に中国語(しかもネイティブレベル)が必須であり、「卒業後に中国」というのは非常に狭き門です。INSEADはキャリアトランジションを掲げており、卒業後フレキシブルな選択が可能と謳っていますが、この辺りは現実に即して考える必要があるようです。

 

では、では