だじりブログ

日々の読書から広がる考察

庄司克宏『欧州ポピュリズム』〜読書リレー(138)〜

 

欧州ポピュリズム (ちくま新書)

欧州ポピュリズム (ちくま新書)

 

 

最近ポピュリズムに関する本を色々と読み進めていますが、次は地域論にトライしたいと思い、この本に手を伸ばしてみました。欧州のポピュリズムに書かれたこの本では、EUの構造上ポピュリズムEUの内部から発生するのは不可避だとしながらも、ただがん細胞のようなもので、きちんと抑えて縮小させるしかない、という主張を説明しています。

 

すでに皆様もご存知のとおり2010年代に入ってから欧州を中心にポピュリズムの波がきていると思います。一番印象に残っているのはイギリスのBrexitでしょう。著者はこうしたポピュリズムの現象を分析し、欧州のポピュリズムEUがある以上不可避であると説明をしています。

 

これはどうしてなのか?それはEUと参加国の統治形態に原因があると分析しています。EUは各国議会とは異なり、多党的な構造にはなっていません。EUの政策決定者が各国選挙民から直接負託を受けるようなことは起こらないシステムになっているのです。そして、EUの政治プロセスが各国の国内政治に影響を及ぼすのに対して、国内政治とEUの政治プロセスの間に壁が生じており、軋轢を生みやすい構造になっていると指摘しています。このため、そもそもEUの構造自体が、「インプットに基づく正当性の基盤」(EUが組織として出来上がるプロセスにおいての正当性)に欠けているのです。

 

また、もう一つの正当性のカギである「アウトプット」すなわち政策の結果についても、非常に困難を極めています。移民や経済政策などが挙げられますが、成功を収めているとは言いがたく、各国の不満を募りやすい構造になっています。加えて、こうした政策は国内政治との関連がある(国内政治とEUが連携して行なっていく)ため、不満の矛先を、 EUだけでなく国内政治にも向いてしまうような構造になっているのです。

 

これが、反対勢力としてのポピュリズム政党を生みやすい構造になっています。すなわち、①EUに政治的正当性がない(ようにみえる)②アウトプットでも結果を出し切れていない③国内の政治がその片棒を担っている。という構造のため、反対勢力からすると、EUの問題を国内政治の与党の問題に置き換えとしてクローズアップしやすい。しかもEUトランスナショナルな組織であるため、ナショナリズムをバックにした排外主義を掲げやすい。こうした環境が、ポピュリズム政党を発生させやすい温床担っているというのが、本書で説明されているところです。

 

前述した吉田徹氏の著作によれば、「ポピュリズムは民主主義にとって不可避」であると言っていますが、欧州のポピュリズムはこれとはすこし異なる形での発生となっているようです。

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では、では