日本人流解読法で簡体字の9割は解読できる

前回様々な事例を使って、中国語で使われている漢字はほとんどが日本語で使われる漢字と同じと言うことを説明しました。半分が日本語と同じと言うことで、それだけで中国語に親近感がわきませんか?今回は、残りの45%である「簡体字」について説明したいと思います。

 

簡体字というもの。読んで字のごとく「字の体を簡略化したもの」になります。漢字というのは世界中にあるありとあらゆる文字の中で、とにかく画数が多い。私たちにとって馴染みの深いアルファベットやキリル文字、ハングル文字なども、大体が5~7画でかけてしまいます。それに対して漢字は概して画数が多く、10画を超える漢字も多く存在しています。筆記試験等で漢字の画数の多さに悩まされた人は私だけではないはずです。そこで、「難しいものを簡単にしようじゃないか」というコンセプトで生まれたのがこの簡体字というものです。

 

この簡体字の歴史は深く、漢字が生まれた頃から存在はしていたようなのです。しかしながら公の場で公式な形で使われるようになったのは実は戦後になってから。そういう意味では比較的新しい文字な訳です。

 

ではなぜ簡体字が使われるようになったのか。それには中国について少し説明しなければなりません。簡体字が使われる以前、中国における識字率は非常に低かったと言います。それもそのはず、こんなに難しい漢字が使われているので、中国の地方に住む人々からすると、大量の数の漢字を、しかも正確に覚えるというのは非常に難しいわけです。加えて後述しますが、中国では地域によって方言が存在し、同じ漢字でも発音が違うといった事態が発生していたため、正直漢字を学ぶことの意味がそこまで重要ではありませんでした。画数が多く難しいので、費用対効果が悪いわけです。そんなこんなで識字率は悪い状況にありました。それではいけないと採用されたのがこの簡体字です。

 

よく、中国大陸は簡体字が使用されていて、台湾・香港そして東南アジアの一部の華僑コミュニティでは日本の漢字と似た「繁体字」が使われているのはなぜか、という質問を受けますが、そもそも簡体字が戦後になって大陸で使われるようになった、比較的新しいものだからです。そしてこの簡体字によって中国における識字率は上昇したと言います。

 

ここまで長たらしく中国の歴史の話について説明してきましたが、なぜこんなことを説明したのかというと、この歴史の話が、日本人が簡体字を勉強するにあたって重要だからです。

 

ここからわかることは、簡体字というのは、今まで使われていた漢字を簡略化したものであるということです。すなわち、簡体字も元を正せば日本の漢字と同じ、ということができます。ということは、当時の中国人が当時の漢字をどのようにして簡体字にしたのか?というパターン・法則性を理解することができれば、簡体字も日本の漢字の知識を使って簡単に理解することができる、ということになるのです。

 

中国語を勉強されている方の中で多く見受けられるのが、「簡体字が難しい」という意見です。しかしこれはある意味ナンセンスなのかもしれません。なぜなら、簡体字というのは、今までの漢字を簡略化したものであるので、我々が普段慣れ親しんでいる漢字よりも難しいということはありえないからです。どのように簡単にしたか、というパターンをつかむことができれば、簡体字は日本人にとってはとても簡単なわけです。

 

これも百聞は一見にしかずだと思いますので、以下中国語の文を紹介したいと思います。

广东省的经济规模已经超过了香港。快速成长的Tech产业是其中一个贡献。

汉语说得很难,但学习很简单。

この文章は私がパッと作成した文章です。ネイティブの中国語からすると少し違和感はあるのかもしれませんが、それでも中国人が見てわかるギリギリのラインで、なるべく日本語に近い文章にしています。

これで使われている簡体字は、以下の通りになります。

广东  经济规  经 过   。   长         产业     个贡 。

汉语说 很难,  习很简单

 

この簡体字比率は前回でも説明した45%ルールにだいたい当てはまるかと思います。さて、この簡体字を日本語の漢字に直すと、以下のようになります。

広東省的経済規模已経超過了香港。快速成長的Tech産業是其中一個貢献。

漢語説得很難,但学習很簡単。

どうでしょう。これなら日本人にも読めそうな文章に見えませんか?

 

ところで、簡体字の部分に注目してください。「簡体字は日本語などの漢字を簡略化したもの」と言われてみれば、なんとなくなるほどと思いませんか?簡体字や日本の漢字において、何かしらの部分を共有していたり、構造が似ていたりと、当たらず共遠からず的な形で推測もできるのかもしれません。ということで、簡体字と日本語の漢字で比較した時に、簡体字がどのように簡単にしたのかについてのパターンを説明したいと思います。

 

簡体字の作り方については、2つの考え方があります。それは「漢字のどこを簡単にするか?」というものと、「漢字をどうやって簡単にするか?」という2つです。

 

一つ目の「漢字のどこを簡単にするか」についてですが、これは漢字の構造を考えば答えはすぐに出ます。それは大きく分けて二つで、①漢字の全部か、②漢字の一部しかありません。日本人の誰でも知っていることですが、漢字には「へん」や「つくり」など、複数のパーツに分けることができます。簡体字も「へん」を簡単にしたり、「つくり」を簡単にしたりなど、一部分で簡単にする、という作業が見られます。これが②です。①については、漢字の中にもそうした「へん」や「つくり」などパーツに分けることができない漢字が存在します。例えば「車」という字には、へんもつくりもありません。こうした漢字には、全体を簡単にするという①のアプローチが取られます。ちなみに車の簡体字は「车」です。

 

二つ目の「漢字をどうやって簡単にするか」このパターンについては大きく分けて3つしかありません。それは、漢字の難しい部分を、①減らす②取る③変える、です。よくよく考えれば、何かを簡単に、すなわちコンパクトにするわけですから、増えることはありません。そうなると自然と上記の取り除くか、減らしてしまうか、いっそのことより簡単なものに変えてしまうか、の3つしか選択肢がなくなるわけです。

 

では、これらの3つについて具体的に見ていきましょう。

 

①減らす

これは、画数を減らすというものがあります。先ほどの例で言えば、「車」を「车」と変えるのは、車の真ん中の田の部分が画数を多くしてしまっているので、画数を減らそう、という意図で考えられたものと私は考えています。他にも、以下の例があります。

 

日本語の漢字 簡体字

「見」 → 「见」 *見の目の部分を一本に減らした

「門」 → 「门」*門の2つの日を減らした(日本語でもたまにこのように書かれる方いらっしゃいますよね)

「長」→「长」

「説」 →「说」*言偏(ごんべん)の画数が見事に減らされています笑

 

このパターンは、へんやつくりに使われる漢字によく見られます。上述した二つの漢字も、いずれもへんやかまえに使用されていますよね。

 

②取り除く

二つ目は、「その部分を取り除いても意味として通じるから、画数増えるのやだし思い切って取り除こう」というものです。これについては、以下の例があります。

「広」→「广」 *「ム」が見事に取り除かれています。ただこの广という部分、確かにほとんどの場面で「広」ですよね。

「業」→「业」 *下の部分が取り除かれています。これも、业を冠に使う漢字って、これぐらいしかないですよね。

「習」→「习」*取り除く例の究極型だと僕は思っています。习と白をとっても习习を冠に使う漢字って、これくらいしかないので、ここまでドラスティックにできたのかと思います。ちなみに、日本語には翌という言葉がありますが、中国語ではあまり使われません。

 

これら取り除くに共通するのは、非常によく使われる漢字で、へんやつくりの一部だけでだいたいその漢字だとわかってしまうもの、ということです。

 

③変える

これは、画数が多い漢字もしくは一部を、画数の少ない別のものに変えてしまおうというものです。残念ながらこの「どう変えるか」については統一されたパターンがないのですが、「難しいものを簡単にしている」という点では同じですので、それを掴んでさえすればある程度は推測できるかと思います。

 

この変えるについては、以下の例があります。

「過」→「过」 *寸という別の文字を当てています。

「漢」→「汉」*つくりの部分が、又になっています。

「個」→「个」 *もはや日本語にない文字です。しかしこの字、今でもスーパーでたまに使われている、個数を数えるときの「ケ」(1ケ 等)の由来だと言われています。

 

これらについては法則性がないので覚えるしかないのですが、一つ推測をするにあたってアドバイスがあります。それは、「変える簡体字は、熟語で覚える」というものです。これはどういうことでしょうか。簡体字は一つの単体の漢字として覚えるのではなく、他の漢字と組み合わせた熟語で覚えた方が格段に覚えやすいということです。そしてその際のルールは、①熟語で引っ張ってくる、②簡体字の「簡略化した部分」を一旦無視する、③そこで思い浮かぶ日本語の熟語を思いついて見る、③その中で、画数の多い熟語を選ぶ、というものです。こうすることで、高い確率で日本語変換することができます。

 

具体的に、上記の例を使って説明して見ましょう。例えば、过という漢字。過が过に変わったのですが、単体で見てしまうと、过から過に日本語変換するのは難しいです。では、上記のルールに従って日本語を推測して見ましょう。①で、まず过だけでなく、超过で引っ張ってきます。次に、②超と「しんにょう」だけをみて、日本語の熟語でどういうものがあるか考えて見ます。どうでしょうか?該当するものは、超過や超速ぐらいしか思い浮かびませんよね?そこで、③です。超過や超速の二つを比較し、どちらが画数が多いでしょうか?答えは超過となります。こうすることで、高い確率で正しい漢字を推測することができます。

 

なぜこのようなことが可能なのでしょうか?そこには二つの大きな理由があります。一つ目は、中国語と日本語の熟語はほとんど同じだというものです。確かに、中には中国語独特の熟語が存在したり、日本語で使われない漢字を用いた熟語が存在したりします。例えば已経というのは、日本語で「既に・もう」という意味になりますが、この熟語は日本語にはありません。ただ、ほとんどのケースは、日本語と同じ熟語が使われています。その確率はおおよそ50%程度でしょうか。

 

次に、前回紹介した「中国語の半分は日本語と同じ」というルールです。これに基づけば、2つの漢字からなる熟語において、2つとも簡体字である確率は「25%」となります。

 

ここからは確率の世界になりますが、この二つの事象は互いに背反していますので、日本人にとってお手上げのパターン、すなわち「中国語独特の熟語」であり、かつ「熟語に使われている全ての漢字が簡体字」となる確率は、50% * 25%で 12.5%となります。すなわち、上記のルールに従えば、90%近い確率で簡体字を日本語の漢字に変換することができるのです。

 

これを使えば、前回の記事で私が説明した内容と合わせて、次のことが言えます。

50% →「日本語と同じ漢字」

45% →「90%が解読可能な簡体字」=「約40%」

すなわち、90%が中国語を勉強したことがない日本人でも解読できる、ということになります。

 

いかがでしょうか?中国語を勉強していなくても、日本語の漢字の知識を使えば、中国語の漢字を理解することができるんです。嘘だと思う方、適当に中国のサイトを見てみて、上記で紹介したメソッドを使って解読にトライしてみてください。

 

では、では

 

 

 

 

 

 

中国語の漢字の95%は日本語と同じ

ということで、今回は中国語に一切関与したことがない人、もしくはどこかで中国語を見たことはあるけど全く知らないという人のために、「中国語と日本語が似ている」という天にフォーカスを当てて説明していきたいと思います。

 

皆様ご存知の通り、中国語は漢字が用いられます。ただ、中国語を知らない人からすると、「漢字といっても、中国語と日本語で使われている漢字は違うんじゃないか?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。確かに、中国語と日本語は言語学上全く別のものになります。しかし、漢字だけにフォーカスを当てて見ると、実はかなりの点で親和性があるのです。

 

これは完全なる私の肌感覚ですが、ビジネスで用いられる中国語において、50%は日本語と中国語の漢字が同じだと言い切れます(あくまでも漢字という文字にフォーカスを当てています)。すなわち、日本語話者である我々は、何もしなくとも、中国語の半分がすでにわかったということになります。これはすごいことですよね。

 

じゃあ残りの半分は何かと言うと、45%は簡略化された、いわゆる「簡体字」というものです。これはおそらくどこかで見聞きした人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?中国では1950年代にかけて、元々の漢字を簡略化した簡体字というのが使用されるようになりました。ですので、一部の漢字は依然としてこれらの簡体字を採用しているのです。この部分が、巷でよく言われる「中国語と日本語で使われている漢字は違うんじゃないか?」という部分になります。

 

ただこの簡体字、実は法則を掴めば日本語の漢字に簡単に置き換えることができるのです。これを使えば、簡体字といえどもすぐに日本語の漢字として「解読」することができます。このメソッドについては改めて紹介したいと思います。

 

そして残りの5%は、残念ですが中国語でしか使われない漢字となります。ただここまで来てこう思った方もいるのかもしれません。「待てよ、半分が日本語と同じ漢字、45%が少し解読が必要だけど日本語の漢字を使って読める漢字。ということは、95%は日本語の漢字と同じなのか?そんなことはないだろう」

 

いや、実際にそうなのです。漢字という文字にフォーカスをすると、私の肌感覚では95%が同じ漢字だと言えるのです。

 

百聞は一見にしかず(ちなみにこれを中国語で書くと百闻不如一见と書きます。あれ、なんとなく読めそうじゃないですか?)。せっかくなので実際の中国語を見てみましょう。以下は今日の中国語の記事を引っ張って来たものです。少しじっくり見てみてください。

 

金融是国家重要的核心竞争力,是推动高质量发展的重要支撑,作为北京第一大产业,金融业不仅推动了北京经济持续平稳健康发展,也有力促进了北京的城市规划、建设和高质量管理。

 

これは中国の政府が発表したコメントの一文を持ってきたものです。確かに45%の「簡体字」が含まれていますが、半分だけでもなんとかわかりそうな気がしませんか?

 

ここで、日本語と同じ漢字と、簡体字と分けて見ましょう。

 

日本語と同じ漢字:

金融是国家重要的核心争力是推高量展的重要支作北京第一大金融不推了北京持平稳健康展也有力促了北京的城市建和高量管理 (56文字)

 

簡体字

竞质发为产业业仅动经济续发也进规划设质(19文字)

 

句読点を除き75文字のこの文章の中に、日本語と同じ漢字がなんと56文字も含まれていました。この文章では、実に75%が日本語と同じ漢字が使われているということになります。この引用元はニュースでしたので、比較的硬い文章が使われていますが、それになると日本語漢字とのシンクロ率はグッと高くなります。

(引用元:http://www.ce.cn/xwzx/gnsz/gdxw/201905/31/t20190531_32229852.shtml

 

続いて、以下の文章はいかがでしょう?これは中国版LINEであるWechatで、私の友人があげていた文章を拝借したものです。より話し言葉に近い文章となっています。

 

在MIT media lab上过Cynthia的一门容量超级大的课,从语言学到心理学,到app设计,3d动画,机器人,到非洲研究。那门课只有10个学生,但配了20个教授..当时半个学期就做了一个动画游戏的app出来教非洲小朋友学英语(因为同组有个media lab的大牛博士),可惜最后只是作为课程项目,并没有上线。

 

これも同じように、日本語と同じ漢字と、簡体字と分けて見ましょう。句読点とアルファベットは除きます。

 

日本語と同じ漢字:

在上的一容量超大的言学到心理学到画器人到非洲研究那只有学生但配了教授当半学期就了一画的出来教非洲小朋友学英因同有的大牛博士可惜最只是作程目有上(71文字)

 

簡体字

过门级课从语设计动门课个个时个做个动游戏语为组个后为课项没线(31文字)

 

どうでしょう。今回も70%近い漢字が日本語と同じでした。もちろん意図的に選んだわけではなく、ランダムに選んだ結果このようになりましたので、「どれだけ日本語と同じ漢字が使われているか」というのがおわかりいただけたかと思います。

 

では、少し背伸びをして見て、これを日本語訳して見ましょう。後述しますが、日本語で使われる漢字と中国語で使われる漢字については、熟語の場合ほとんど意味が同じです。ですので、日本語の知識を使って推測で言っても、7割近くはわかってしまうものなのです。

 

それでは一番最初の文章から。

 

金融是国家重要的核心竞争力,是推动高质量发展的重要支撑,作为北京第一大产业,金融业不仅推动了北京经济持续平稳健康发展,也有力促进了北京的城市规划、建设和高质量管理。

 

思い切って、簡体字を飛ばして見ましょう。これでもなんとなくわかるんじゃないでしょか?

 

金融是国家重要的核心竞争力 ー>金融 国家重要的な核心競争力

是推动高质量发展的重要支撑 ー> 推す高品質 展的な重要な支撑(=支え)

 

なお、この文章の日本語訳としては「金融は国家にとって重要な核心的競争力であり、高品質な発展を推進する重要な支えである」というものです。ほぼ直訳に近いですが中国語の硬い文章を日本語に直すとだいたいこんな形になります。

 

次に、我が友人の文章について、頑張って日本語の頭で考えて見ましょう。先ほど同様、ここでは簡体字には目をつぶって、日本語と同じ漢字だけを見て推測して見てください。そのあと、ひらがなで適当に助詞をつけて見てください。

 

当时半个学期就做了一个动画游戏的app出来教非洲小朋友学英语

 

ステップ1:当半学期 一動画app出来教える小朋友学ぶ英語

ステップ2:半学期で一つの動画appができ、小さな友人に教え英語を学んだ

正解となる日本語訳は、「当時半学期で一つの動画(アニメーション)ゲームのappを作成し、アフリカ(*非洲はアフリカの意味です)の子供たちに英語を教えた」

 

どうでしょう、当たらずとも遠からずと言った内容でしょうか?

 

ここであくまでも強調したいのが、中国語を全く勉強していない、中国語の知識を全く持たなかったとしても、日本語の考え方である程度文章を読むことができるという点です。もちろん、非洲がアフリカという意味であるということや、是というのは英語で言うところのbe動詞のようなものといった、必要最低限勉強しなければならないことはあるのですが、逆に言えばそのポイントさえつかめば、初学者でもある程度の文章を読み切ることは可能と言うことなのです。これってすごいことではありませんか?

 

文章が読めると言うことは、逆に言うと文章が書けると言うことになります。日本語の文章を書いた場合、半分近くは中国語として意味が通じるものになります。ここで思い出されるのが「偽中国語」と言うものです。

 

数年前に日本で「偽中国語」なるものが流行りましたよね。LINEなどのチャットで、あえてひらがなを省略し、中国語っぽく表現することでコミュニケーションをとる方法です。例えば、 「あなたは明日どこに行きますか。」を、「貴方明日何処行?」とか得るものです。もちろんこれは中国語ではありませんが、中国語の文語文(古い話し方)に似ているところがあり、違和感はあるものの中国人からすると理解をすることはできます。ちなみに正しくは「你明天去哪里?」です。

 

以上のように、漢字を知っているということは、中国語を勉強する上で大きなアドバンテージなのです。日本人は普段から漢字を使っていますので、日本人全員が大きなアドバンテージを持っていると言うことになります。この手を利用しないわけにはいきませんよね。

 

次に、45%である簡体字を解読する方法を説明していきたいと思います。

 

では、では

日本語を使えば中国語は簡単にマスターできる

今までこのブログでは、INSEAD MBAに在籍する学生として、INSEADとはなんぞや、MBAとはどういうものか、リアルな状況をお伝えして来ました。このコンテンツに加え、中国語の学習方法についても紹介していきたいと思います。何を隠そう私は中国語を独学でマスターした人間です。一人でも多くの人に中国語に興味を持ってもらいたいと思い、中国語に関するトピックも増やしていきたいと思います。

 

なぜ私が中国語なのか?このつながりに不思議を感じる方もいらっしゃるかと思いますので、私のバックグラウンドを簡単に説明したいと思います。今でこそMBAの学生ですが、実は私は過去10年にわたって中国語と関わってきました。当時海外に行ったこともない私が中国語を勉強したのは10年前。大学の第二外国語で中国語を履修していた私は、物は試しにと中国語圏である台湾に初めて海外旅行先としていきました。そこで、流暢に日本語を操る台湾人の多さにびっくりします。台湾は日本語学習者の割合が世界地多いことでも有名なのですが、街ゆく人ほとんどが日本語を喋れたようにに記憶しています。一方の私は、1年間中国語を履修していて発することのできた言葉が「謝謝」くらいという体たらく。これではいけないと一念発起し本格的に勉強を始めました。

 

海外MBAにも行っておきながら英語もろくに話せない(そしてMBA出願時にはTOEFL等の試験で大いに苦しんだ)純粋なるジャパニーズの私ですが、英語以上に流暢な中国語を話すことができます。MBAでも、中国人のクラスメートに、「Dajiliは中国語の方がうまい」と言われるくらいです笑 

 

なぜここまで流暢に話すことができるのか。というのも、この10年の間、合算すると一年の半分を中華圏で過ごし、ビジネスおよび学術の両面にわたって、中国語を使う機会に恵またからだと思っています。まず学術の方面から。大学の学部時代には課外活動を通じ、講演会・国際会議の同時通訳や中国語学術書の日本語訳にも携わりました。そしてビジネスでは、価格交渉や契約締結等、中国語話者を相手とした中国語による商談を通算で500回以上行ってきました。また現地にも駐在し、ローカルスタッフの育成から現地販売会社の制度設計など、様々なシーンで中国語を使用する機会に恵まれました。

 

また、この10年間で様々な中国人と接して来ました。ビジネスの際には現地社員や取引先の社長、学術面では教授や出版関係者などと中国語を介してコミュニケーションをとりました。学生時代には、中国の工場で働くブルーカラーワーカーと寝食を共にした経験があります。MBAでは、中国のエリートと交流して来ました。また地域も、北は内モンゴルから南は深センまで、縦に横に様々な人々と中国語を使いコミュニケーションを取って来ました。

 

このように様々な形で中国語を使って来ましたが、二つの重要なことに気がつきました。まず一点目として、「中国語ができることのアドバンテージは非常に大きい」ということです。これは私だけでなく、私の身の回りの中国語ができる日本人全てに共通して言えることです。特に日本人の間では、ビジネス上や個々人のキャリアにおいて、中国語が果たす役割というのはとてつもなく大きいのです。

 

想像してみてください。もしあなたが日本の企業に勤めているとします。鉄道など日本国内の需要に絞った特定の業種を除き、ほとんどのビジネスにおいて海外向けのビジネスがあると思います。もしあなたがそうした事業に属していなかったとしても、あなたのデスクの隣の事業は、海外向けのビジネスを行なっている可能性が非常に高いと思います。その海外向けのビジネスの中で、どこの国向けが一番大きいでしょうか?中国向けが、一位とは言わないまでもかなり上位の地位を占めているのではないでしょうか?

 

ここからもわかる通り、ビジネス面における中国との関係というのは年々深くなって来ています。実際、日本の貿易相手国としては、中国はここ数年アメリカを差し置いてトップの座に君臨しています。またその関係性も多岐にわたっており、製造業などのハードな分野から、観光などのソフトな分野まで、まさにありとあらゆる分野で中国が切っても切れない存在になっていると思います。そして、その中国人のほとんどが、英語をうまく話すことができません。実際東京の街中で目にする中国人の英語は、あまり拙くてわかりづらいかと思います。ビジネスの面においてもそれは同じ現象が起きていて、少なくとも私が会って来たビジネスパーソンの中で、英語を流暢に喋ることのできる人は全体の5%もありません。すなわち、中国語をわかることの需要というのは非常に大きいのです。

 

一方で、日本において中国語を理解することができる日本人というのは非常に限られている印象を受けます。現に私の過去の職場においても、中国におけるビジネスの比率が非常に大きいにも関わらず、中国語話者は一事業部につき多くても3人ほどです。一事業部が30人ほどでしたので、10人に1人な訳です。もちろん、海外ビジネスにおいて中国の占める割合は10%でしょうか?そうではないはずです。

 

すなわち、現在日本においては中国語における需要と供給の大きなアンバランスが起きている状況なのです。この中でもしあなたが中国語をマスターしたとしたらどうなるでしょうか?そう、こうした需要を取り込むことができ、所謂引く手数多の人材になることができる、ということなのです。実際私の身の回りでも、中国語ができることによって昇進が早まったり、非常に早期のタイミングで海外駐在のチャンスをつかんだりと、メリットを享受しています。もちろん中国語という語学力だけでなく個々人の能力も見逃すことはできませんが、中国語がキャリアに取ってプラスになるということはおわかりいただけたかと思います。

 

二つ目に気づいたこととして、「中国語は、日本人にとっては非常に勉強しやすい言語である」ということです。もちろん、中国語と日本語は同じ漢字を使っているから勉強しやすいと巷では言われていますが、一方で同じ漢字でも使われ方が全然違うという人もいます。どちらも正しいのですが、私にとっては漢字を共有していることのメリットは非常に大きいのです。

 

具体例を説明しましょう。私が台湾に留学していた頃、中国語の塾に通っていた時期があります。私が入学したアドバンスコースにはクラスメートとして世界中から学生が来ていたのですが、欧米系の学生によくみられたのが、「会話はできるが文字は全くかけない」という状態でした。すなわち、小さな頃から興味関心があり、必死に勉強してなんとか会話はできるものの、漢字という難解な文字の記憶が非常に難しく、未だ漢字がかけないというものでした。日本人は、確かに少し書き方は異なりますが、ほとんど同じ形で漢字を共有していますので、非常にとっつきやすいのです。

 

どうして「非常に勉強しやすい言語である」という点に至ったのか。これは私のMBAの経験が大きく影響しています。私がMBAで勉強していた際、これも世界中から様々なバックグラウンドの学生が来ていました。その中でも、フランス人とスペイン人、イタリア人は彼らが話す英語に非常に特徴があり、聞いただけですぐに彼らの出身国がわかるくらい他とは違ったアクセントや発音を有していました。例えばフランス人だと、rの音が若干「h」になります。これはフランス語が「r」を「h」に近い音で発音するからであり、準備するという意味のprepareが「プリペア」ではなく、「プヒペハ」というかわいい音に変わります。

 

そこで、「どうして彼らは共通してこうした話し方なのだろう」という素朴な疑問が湧きました。そこで見つけた興味深い本が、『フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本』という本でした。

フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本

フランス語・イタリア語・スペイン語が同時に学べる本

 

この本では、文字通り、同じラテン語系に属するフランス語・イタリア語・スペイン語は、文法・語彙が非常に似ていることから、3つの言語をセットで勉強した方が非常に効率的だ、という主張の元、様々な文法について3つの言語を比較して載せています。比較言語学のまさに王道とも呼べるべき本なのですが、この本を手にとって気づいたのが、これら言語と英語の類似性です。

 

例えば、前出のprepareという言葉、フランス語でも実はpreparerとほぼ同じ。他にも経験という意味の英語はexperienceですが、フランス語もexpe'rienceとなります。英語とフランス語はとても似ている。そして、どうやらフランス人は、フランス語の考え方そのままに、英語を話しているのではないか?そう考えるようになりました。出ないと上記の発音の違いが説明できないからです。これは言い換えれば、フランス語話者は、もともと彼らの母国語であるフランス語を話すように、英語を話していると言えます。フランス語の言葉を英語流に変えて話しているわけです。これはまるで、関西人ではない別の地域の人が冗談交じりに関西弁を話すとき、「ありがとう」を「おおきに」に変えたり、少しイントネーションを変えたりして、関西弁風に変えて話しているのと同じようなものです。もっとも関西人からすると「エセ関西弁」として嘲笑の的にはなりそうですが、それでも言語として伝わっているので問題ないわけです。

 

あれ、これと同じことが中国語と日本語にもいえるんじゃないか?そう思ったのがこのタイトルである「日本語を使えば中国語は簡単にマスターできる」という視点です。中国語と日本語には共通点が非常に多いです。ならばいっその事、その日本語で使える知識を全部活用すれば、中国語はものすごく簡単になるのではないでしょうか?そしてマスターすれば非常にメリットの多い中国語を、比較的短時間でものにすることができる。そう考えたのがこのメソッドの出発点です。

 

このメソッドについて、今後このブログを通じて詳細を説明していきたいと思いますが、ポイントとなるのは大きく以下の三つにまとめられると思います。

 

①文法:中国語の文法はあってないようなもの。日本語脳で8割は攻略できる。

②語彙:難しい言葉を喋ろう。難しい言葉ほど、日本語と中国語は同じ。

③発音:日本語の音との親和性を掴もう。

 

現在中国は何かとトピックになる国です。経済が芳しくないとニュースが飛び交う中、米中貿易摩擦の影響を受け、ますます先行きがわからないのが現在だと言えます。しかしながらどういったシナリオになるにしても、中国の人々が豊かになっていくに連れて、日本における中国の存在感はますます大きくなることは間違いようのない未来かと思います。そうした中で、中国語を少しでも理解することができれば面白いと思いませんか?そして英語ではない別の言語である中国語という武器を手に入れ、キャリアを高めたいとは思いませんか?このブログがこれらモチベーションに応える一助となればこれほど嬉しいことはありません。

 

このブログでは引き続き上記三つの観点について、私が過去中国語を使って遭遇した様々な小話を交えながら詳細に説明していきたいと思います。もちろんMBAの更新も続けてまいりますがこちらもどうぞお付き合いください。

 

では、では

 

 

 

 

INSEAD MBAと中国

今回のテーマは、中国とINSEADという視点。今までのブログの記事とは若干系統が異なるトピックですが、個人的に中国は長年取り組み続けたいトピックですので、このブログでも徐々に紹介していきたいと思います。

 

なぜ中国×INSEADなのか。この視点に至るまで2つの出来事がありました。1つが日本の、いや世界的な中国に対する関心です。最近でもMBA授業の余談は米中貿易戦争がほとんど。Huawei出身の学生に現在の状況について教授から質問が飛んだりと、まさにホットなトピックです。また日本においても中国ビジネスというのは切っても切れない存在になりつつあります。現在の日本の貿易相手国でも、アメリカを差し置いて中国がトップ。全体の20%を占める割合となっています。ロボティクスや自動車など、現在の日本で好調な産業も中国の輸出割合は比較的多く、中国の動向に関心が行くのもある種当然なのかもしれません。

 

2つ目が、中国MBAプログラムとの比較です。最近INSEADにキャンパスビジットにいらっしゃる方の中で、INSEADをアジアMBAの中に位置付け、中国MBAと比較をされる方が多くなってきました。特にCEIBSは近年Financial Times紙で評価が上がってきており、様々な記事でCEIBSとはなんぞやという記事が紹介されています。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/278811

 

こうした中で、INSEADは中国に対してどのようにアプローチしているのか。一言で言えば、「INSEADは中国をかなり重視していて、学生としても中国の勉強に役立つ」というものです。以下簡単にまとめてみたいと思います。

 

①学生

意外に思われるかもしれませんが、欧州のビジネススクールというイメージの強いINSEADにあって中国からの留学生比率はかなり高いです。全国籍の中でも3位(1位はインド・2位はアメリカ)となっており、存在感の強さが目立ちます。

そうしてやってきた中国人学生は、純粋培養のエリートというよりは、良い意味で一癖も二癖もある学生ばかり。この方がINSEADらしいと言えばらしいです笑。例えば北京大→外交官という花形エリートの道を歩みながら、「ビジネスの世界に身を投じたい」と言ってコンサルに転職しINSEADに来た学生や、中国人でありながらドイツの大学で修士号まで取りそのまま現地のメーカーでエンジニアとしてい働いている学生などなど多種多様です。そうした中で、色々な中国を見れるというのはINSEADならではの環境なのかもしれません。

 

そしてこれらの学生に加わるのが、国籍は違うけど中国にルーツを持つ学生です。オーストラリアやカナダ・アメリカに多いのですが、流暢に英語を扱う一方で、中国を少し遠目に見ているような学生です。またシンガポール人の存在も忘れてはなりません。彼らの中には、小さい頃に中国から移住して来たという人や、シンガポール政府から奨学金をもらって高校からシンガポールに来たというエリートも含まれます。彼らは中国語を通じて中国人と強固なネットワークを形成しており、INSEADにおいて一大コミュニティになっているような気がします。

 

そうした彼らの中に、「中国語ができる日本人」という枠(笑)で入れさせてもらっています。彼らは中国語版LINEであるWechatでチャットグループを作り、授業の情報や食事や旅行の誘いなど、ありとあらゆる情報を交換します。ここが個人的には就職活動や選択科目のチョイスなどに大きく助けになったことはいうまでもありません。

 

 

②科目

授業においても、中国の存在感が目立っています。というのも、中国にフォーカスした科目があるどころか、ケースでも中国の事例が扱われる授業が多いからです。

 

選択科目について。シンガポールキャンパス限定にはなりますが、中国にフォーカスした科目が多く開講されています。例えば「China Strategy」。中国の様々な業界からゲストスピーカーを招聘し、中国の現状についての議論を行います。またChina's Capital Marketなど、科目名に「China」がつく科目が存在します。こうした科目はTrekを除き他の国ではなく、INSEADの中国フォーカスが見て取れます。

 

また、これ以外の授業でも、中国の事例を扱い議論をするという場合が多いです。今まで私が関与して来た中でも、AlibabaやHuaweiと言ったメジャーどころは言わずもがな、北京のデザイン会社、深センのハードウエア等多岐にわたっており、文化やビジネスに対してより一層理解ができるようになっています。

 

③その他

まず、ゲストスピーカーにおいても中国出身の起業家、CEOなどが多い印象です。私がフランスにいた11月、ハイアールのCEOである張瑞敏が講演を行っていました。個人的には非常にためになる内容で、色々考えさせられた記憶があります。

また課外活動も充実。TrekではChina Trekというものも存在し、北京・上海に一週間かけて企業を訪問するといいます。またそれ以外でも学生主導のTrekがあり、中国ビジネスのさらなる理解に役立ちます。

 

以上のようにINSEADにおいても中国ビジネスを勉強するというのは大いに可能です。むしろシンガポール・フランスという少し離れた場所から、中国という国を客観的に見るという点においては、非常に恵まれた場所になるのかもしれません。

 

ただし、一点注意すべきなのが就職活動。INSEADは中国において知名度はまだまだ低く、中国人学生は中国国内での就職活動に苦戦しているようです。また中国国内での就職は基本的に中国語(しかもネイティブレベル)が必須であり、「卒業後に中国」というのは非常に狭き門です。INSEADはキャリアトランジションを掲げており、卒業後フレキシブルな選択が可能と謳っていますが、この辺りは現実に即して考える必要があるようです。

 

では、では

 

 

 

INSEADでの生活費

前日の記事でキャンパスライフの違いについて触れたので、今回はダイレクトに生活費について紹介したいと思います。私はINSEADのプログラムの中で、ちょうど半分フランス、半分シンガポールに滞在していました。ですので、どちらの生活もある程度の期間行ってきました。

 

よくよく考えると、シンガポールとフランスというのは世界的に見ても物価の高い地域です。Forbesが発表した物価が高い都市ランキングでも、シンガポールは世界1位、パリは世界7位と、堂々のランクイン。生活費も必然的に高くなるのではと思っていました。私は私費で留学している身ですので、こうした生活費がかなりダイレクトに影響して来ることはいうまでもありません。

 

 

ただ、すでに9ヶ月近く生活してみて感想としては、「とんでもなく高い」というわけでもない、ということです。もちろん、インドネシアや台湾、中国といった物価が安いところと比べたら違いますが、東京に住んでいた身としてはそこまで遜色ない印象です。

 

ということで、各キャンパスでどれくらいかかるのか、大まかにまとめて見たいと思います。

 

①フォンテーヌブローキャンパス

・食費・交通費・その他雑費(一人当たり):毎月7~12万円

フォンテーヌブローでは、自炊をするかしないかで費用が大きく変わってきます。外食の場合、最低でも€10(ケバブだと€5ぐらいでいけますが…)かかって来るので、ほとんどの学生が自炊をすることになると思います。自炊をした場合、一食あたりの食費が200-500円に抑えられるのでとても経済的。フォンテーヌブローにはスーパーはもちろんのこと、マルシェという週三回開かれる朝市があり、そこで新鮮な食料を購入することが可能です。

そして個人的に活用していたのが学食。外のレストランとは異なり、学食は比較的安価に抑えられており、€3~からおなかいっぱい食べられます。ただし、平日の昼しかやっていないので要注意。

ちなみに、パーティや飲み会は逆に安上がり。皆スーパーでワインを買い、持ち合いで宅飲みを行うのがメインです。ワインは€3~と非常にリーズナブルで、簡単な食事を買ったとしても€10~20になりますので、財布には優しいです。

 

交通費ですが、フォンテーヌブロー内の移動では公共交通機関はほとんど使いません。逆にパリまで行こうとすると、片道だけでも€10近くかかるので、どれだけ週末パリで羽根を伸ばすかによって金額が変わってきます。

 

 

・住居費:毎月8~13万円

フォンテーヌブローはフランスの田舎ということもあり、そこまで住居でお金はかかりません。私はファミリー向けの物件に住んでいて、比較的広めだったのですが、それでも€900台でした。単身で、かつルームシェアをすると、さらに節約できると思います。ただし、INSEADに寮はないので、他のビジネススクールと比べると割高に見えるかもしれません。

 

・旅費(一人当たり):毎月5~10万円

フランスという立地を生かし、近隣諸国に足を伸ばして旅行に出かける学生は多くいます。日本から比べれば圧倒的低価格で旅行することは言わずもがなですが、それでも一回あたりの旅費はそれなりにかかります。

ちなみに私の場合、P2の1ヶ月の期間に、ドイツ・デンマーク・フランス(モン・サン・ミシェル)・イギリスと旅行を行い、宿泊費と交通費で計15万円使ったこともあります…。

 

計:20-40万円(平均30万円)

 

シンガポール

・食費・交通費・その他雑費(一人当たり):7〜10万円

高いと言われるシンガポールですが、個人的には食費はそこまで高さを感じません。私の生活パターンは、朝食:近くのホーカーセンター(屋外大衆食堂的なところ)、昼食:キャンパス近辺のフードコート、夕食:レストランで食事をしているのですが、これで毎日2000円いかないくらいです。ネットワーキングイベントや飲み会などのイベントがなければ、比較的安上がりで生活ができると思います。

外食も、場所を選べば3000-4000円でそれなりに美味しいものが食べれます。クラスメートと外食する際もだいたいこのレンジの場所に行くことになります。

交通費も地下鉄・タクシー等の公共交通機関は非常に安く、財布に優しいです。特にタクシーは先進国にしては安く、普段から活用しています。

 

・住居費:毎月10~20万円

フランスより高いのがこの住居費。シンガポールは全体的に住居の費用が高く、ルームシェアを行なってもだいたい一人当たりSGD1200-1400かかると言われています。私の場合は家族帯同でしたので、HDBというシンガポール現地人のための公営団地のような場所に住んでいます。価格が抑えられるというのがHDBを選んだ理由ですが、それでもSGD2000(約16万円)します。

 

・旅費:毎月4-7万円

ヨーロッパに比べるとアジアの旅行は比較的安上がりになりますので、これぐらいの金額に落ち着きます。例えば週末ジャカルタに企業訪問した際も、フライトと宿泊費含め4万円程度でした。勿論行く場所にもよりますが、東南アジア内での旅行となるとこれぐらいの費用になるかと思います。

 

計:25万円〜40万円(平均30万円)

 

ということで、1ヶ月あたり25~30万円というのがだいたいの生活費になります。これで10ヶ月プログラムということで10かけして、だいたい250〜300万円というのが現地での生活費になります。勿論、個人差がありますので一概には言えませんが、だいたいの目安として参考になるかと思います。

 

では、では

シンガポールキャンパスとフランスキャンパスの違い

卒業も近くなり色々と書き残すことがないように、ギアを上げている今日この頃。今日はINSEADの特徴でもあるキャンパスの違いについて紹介したいと思います。

 

INSEADには現在フォンテーヌブロー(フランス)・シンガポールアブダビキャンパスの三つキャンパスがあります。MBA生の場合、入学をフランスかシンガポールかで選択をすることができ、アブダビはClass of Julyの場合、P3の1ピリオドのみ選択することが可能です。

 

一口に同じ学校といっても、キャンパスが異なるだけで学校生活やネットワーキングにも大きな違いが見られるような気がします。以下それぞれの違いについてまとめて見ました。

 

①授業

そうです。シンガポールとフランスにおいて、授業が異なります。同じMBAプログラムなのにそんなことがあっていいのか、と思わず言いたくなりますが、キャンパスによってコア科目・選択科目が若干異なってきます。

 

まずコア科目から。こちらについては、科目自体は変わりません。フランスにいてもシンガポールにいても基本的に履修しなければならないコースは同じ。科目の評価方法もスケジュールも同じです。

 

では何が違うのか。科目の内容にあります。というのも、同じ科目でもそれを教える教授が変わります。そしてその教授が提供するケースも、教授の好みによって若干変わります。そしてこの教授の違いというのが、学生のその科目に対する評価自体を変えてしまうから不思議です。

 

まあ、同じキャンパスにいても教授が異なるケースもあるわけで、この内容の違いをキャンパスの違いに帰結するのもどうかと思いますが、オフィシャルには「同じ科目だ」といっている中で、こうした違いがあることには注意する必要があるのかもしれません。

 

次に選択科目について。こちらについては、内容もさることながら、開講されている科目自体も異なります。例えばシンガポールキャンパスだと、アジアにフォーカスした科目が開講されています。例えば私が履修した「Strategies for Asia Pacific」はシンガポールキャンパスのみでの開講となっています(個人的にはこの授業は非常に良かった)。一方フランスにおいては、EUなどに関連する授業が開講されていると言います。

 

 

②ネットワーキング

個人的にはやはり最大の違いといえばここでしょうか。キャンパスがそれぞれフランスとシンガポールにあるので、学校に訪れるゲストスピーカーや卒業生についても、地理的な偏りが見られます。シンガポールにおいては、東南アジアを中心としたネットワークに容易にアクセスできますし、一方でフランスにおいてはヨーロッパ全体のネットワークにアクセス可能です。

 

③学生生活

最後に学生生活。フランスとシンガポールはキャンパスのロケーションと地域の違いにより、学生生活も異なります。フランスにおいては、キャンパスがフォンテーヌブローというパリ近郊の「田舎」ですので、大体が学校近辺にすみ、夜になるとワインを片手にネットワーキングと言う名のパーティが繰り広げられます。

 

一方でシンガポールキャンパスはと言うと、アジアの都市のほぼ真ん中に位置します。それゆえ、住む場所もまだらで、学校が終わると大体近隣のレストランに集まるか、離散するかになります。シンガポールはいい意味でも悪い意味でもドライな学生生活になっているような印象です。

 

同じ学校といえども、キャンパスによって違いがあるので、INSEADを志望される方はキャンパスの選択も注意された方が良いかと思います。

 

では、では

INSEAD学生の卒業後の進路について

5月も末になり、残すところMBA生活もあと1ヶ月近くとなりました。Intensiveなプログラムということもあって本当に充実した日々を過ごしていますが、それがあと少しともなると少しずつ感慨深くなってきています。

 

このP5という期間はとても特殊です。というのも、学生によってこの2ヶ月の使い方が全く異なるからです。就職活動を終えた学生は、この期間を旅行期間として活用し、様々なところに繰り出しています。クラスメートの中には、P5でとる授業をピリオドの前半に固め、残り1ヶ月をひたすら旅行に当てるというツワモノもいます。シンガポールキャンパスに在籍しているはずなのに、授業の合間の2週間にフォンテーヌブローに滞在する、なんていう学生もいます。

 

また、引き続き就職活動を行う学生も見受けられます。コンサル・金融以外の企業を第一優先に考えている学生にとっては、企業側もP4・P5関係なく独自に採用活動を行なっているので、それらに合わせじっくりと面接をするという学生もいます。

 

こうした中で、学生の就職活動の模様が少し面白いなと思ったのでここにまとめたいと思います。面白いのが、多様性を謳うINSEADの中においても、国籍やバックグラウンドに基づき卒業後の進路にパターンが見受けられることです。大きく分けて、学生の卒業後の進路については、①戦略コンサルティング、②金融、③テック・事業会社系、④起業・その他の大きく4つにまとめられます。④はベット紹介するとして、ここでは①②③について以下順を追って説明したいと思います。

 

①戦略コンサルティング

INSEADが「コンサルスクール」と称されるだけあって、戦略コンサルティングを卒業後の進路として考える学生は非常に多いです。INSEADの公式情報においても、卒業生のおよそ4割がコンサルティング業界に進み、また3割がMBB(McKinsey、BCG、Bainの頭文字をとったもの)にいくというので驚きです(社費生含む)。そのためか、MBBにおいてINSEADは最大の採用数を誇っており、例えばMcKinseyはグローバルで見るとINSEAD卒のコンサルタントが、他のビジネススクール卒のコンサルタントを差し置いて一番多いといいます。ダイバーシティを謳うINSEADですが、卒業後の進路までは流石にダイバーシティではないようです笑

 

余談にはなりますが、なぜMBBを中心とした戦略コンサルファームがINSEADからここまでの数を採用できるのかというと、それはやはり学生の多様性、特に欧州を中心とした多様性にあるのではないかと考えています。MBBのいずれもアメリカ企業ですので、アメリカ国内のオフィスは基本的に米ビジネススクールの卒業生から採用を積極的に行なっているといいます。ただ、たとえ世界一位の経済規模を持つといっても、一国にフォーカスしてしまっては採用数が限られてしまいます。一方でINSEADアメリカでの採用は少ないものの、キャンパスのあるヨーロッパやアジアでの採用が多いような印象です。戦略コンサルといっても今はグローバルファームですので、世界中にオフィスがある。そうしたオフィス、特に発展著しい地域においては、自然と採用も増える。そうしたアメリカ以外の需要増を、INSEADがうまく取り込んでいるのではないか、そう考えることができます。

 

閑話休題。これだけ採用数が多いので、採用プロセスも非常に整ったものになります。まず、P3に各社コーヒーチャットやケース面接対策セミナーなど、ありとあらゆるイベントを行い学生取り込みを行います。そのあと、P4の初めに会社説明会があります。そこで正式なキックオフとなります。会社説明会ののち学生は履歴書とカバーレターを提出し書類選考に臨みます。書類選考に通った学生は、学校で行われる一次面接に臨み、それに合格すると、今度は各オフィスによる二次面接、最終面接と続きます。このプロセスが、3月末〜4月末に終わるように、スケジュールがしっかりと整っています。すなわち、コンサル志望の学生は、このプロセスにある程度乗っかることで、効率的に選考を進めていくことができるわけです。「コンサルスクール」ならではの効率化ともいえるでしょう。

 

しかしながら、プロセスは一見すると非常に統一されていますが、それは「各地域の選考をまとめて一つに行なっている」だけにすぎませんので、やはり国・地域によって状況が異なります。各地域のオフィスには、現地言語が話せるかどうかを条件にするところが多いです。このため、英語が通じるシンガポール・ドバイ・ロンドン、そして中華圏内を除き、ほとんどの学生が自国のオフィスを志望します。例えば、日本の学生が日本オフィスを志望し、タイの学生がバンコクオフィスを志望します。これら「現地言語の制約がある」国々の学生にとっては、出身国のオフィスに申請すること自体がアドバンテージになりますし、逆に別の国で働くというのはよほどの理由がないと非常に難しく、自然と自国オフィスに回帰していきます。

 

また、選考の内実も各地域によって大きく異なります。というのも、いずれのコンサルファームも、各地域のオフィスが最終的な採用決定権を持っているのですが、当然各地域によって採用数や方針が同一企業においても変わってくるためです。例えば、日本やタイのオフィスを志望する学生(当然、ほとんどが日本人かタイ人)はほとんど全ての学生が書類選考をパスした一方で、あるファームの中国オフィスでは30人近くが申請して3人のみ書類選考をパスできたという非常に狭き門でした。そして、二次面接以降になってくると各オフィスでの面接になりますので、当然同国籍の学生が集まって情報共有を行います。こうなってくると、同じファームを受けてはいるものの、別の戦いをしているともいえるでしょう。

 

またオファーが出てからも、それぞれの国によってオファー受諾に対する考え方が大きく異なります。日本やタイなどは比較的シンプルで、オファーをもらったら基本的にそこにいく、という形です。一方で複雑なのは中華圏。特にシンガポール在住の中国人は中国国内のオフィスでオファーをもらうと、違う悩みに当たります。というのも、INSEADシンガポール在住の中国人は、自身もしくはパートナーがシンガポール政府から奨学金をもらってシンガポールに在住しているというケースが非常に多く、中国に帰ってしまうと多額の違約金を支払う必要があるそうです。

 

②金融系

コンサルスクールと称されるINSEADにおいても、投資銀行といった金融系のキャリアを志望する学生は少なからず存在します。こうした学生については、コンサルティングとは違った理由で「画一的なプロセス」が存在し、結果学生の特色も如実に現れてきます。

 

まず、金融系で特徴なのが、金融系のバックグラウンドを持つ学生しか志望しない、という点です。逆に、他のケースを聞いたことがありません。INSEADはキャリアチェンジの場をよくアピールしていますが、こと金融系のキャリアにおいてはそうはならないようです。

 

次に、ヨーロッパの学生は就職先としてロンドンが多いということです。これはINSEADがP1に、ロンドントレックと称して金融機関に学生を送り込むプログラムを実施しており、そこで学生がオファーをもらうというのが定石となっていることに起因します。現に、私のグループメートも、ある銀行のロンドン支店IB部門から早々にオファーをもらっていました。

 

それ以外の場所の選択肢となると、やはり自力で探すほかないようです。金融系を志望する学生が少ないということが起因しているのでしょうか、INSEADもロンドン以外の地域において強固なリソースを有しているわけでもなく、学生がそれぞれ独自に就職活動を進めている、といったような印象を受けます。例えば、私の友人の中国人は、学校のリソースを使わず自力でネットワーキングを行なっていました。

 

③テック・事業会社系

コンサルに次いで多いのが、このテック業界といえるでしょう。テック業界といっても定義は曖昧で、具体的な会社名で言えばGoogleAppleといった巨頭から、Agoda、Traveloka、Gojekといった新興テック、AmazonやShopeeといったEコマースやMicrosoftIntelといったハード系も含まれます。

 

また、これ以外にも事業会社にアプライする学生も一定数存在します。具体的にはSiemensSamsungDellNissanといった電機・機械・自動車系、ロレアルやグッチなどのRCLG(リテール・コンシューマ・ラグジュアリグッズの略称)他にもOil&GasやLogistics系など多種多様。

 

これらについて特徴的といえるのは以下の二つです。まずは学生について、テック業界に進む学生には、元戦コン出身者や異なるバックグラウンドを持つ学生が多いような印象を受ける一方で、事業会社系は、もともとそのバックグランドを有している学生がアプライする傾向にあるようです。テック企業については、戦コン出身者のExitとしてテック企業が魅力的なのに加え、働き方についても比較的フレキシブルな点なのが、彼らを魅了しているのかもしれません。一方で事業会社においては、各社MBA卒業生を対象にした「リーダーシッププログラム」を準備して、多様なキャリアプランを提供しているのですが、やはり基本的にそうしたプログラムに興味を持つのは、前職で類似した経験を持つ学生に絞られるようです。

 

二点目にあげられるのが、選考のプロセスについてです。各社採用学生数が1〜3名と、戦略コンサルティングファームと採用数が大きく異なるため、採用活動も各社ともバラバラ。期間も、書類選考からオファーまで4ヶ月以上かかる企業もあります。このため、これらを志望する学生の多くが、P5においても継続的に就職活動を行なっています。

 

事業会社やテックは、ロケーションを変えたい学生にとっては非常に魅力的な選択肢です。というのも、言語の制約が比較的緩やかで、企業側も人材の多様性を向上する目的なのか外国の学生を積極的に採用しているような気がします。MBA卒業後のキャリアでロケーションを変えるとなると、こうした企業が有効なオプションになると言えます。

 

では、では