奥野修司『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』ー読書リレー(101)ー

 

怖い中国食品、不気味なアメリカ食品 (講談社文庫)

怖い中国食品、不気味なアメリカ食品 (講談社文庫)

 

 

食の安全をめぐる議論については、過去から様々な角度で取り上げられていますが、これはかなりセンセーショナル。特にアメリカと中国から輸入される食品に着目し、これらがいかに怖さを持っているのか、その裏を探るという本です。

 

私も上海在住の身ですので、中国の食品をこれでもかと毎日食べているわけですが、改めて食の安全について考えさせられる一冊でした。

 

現在日本の食料自給率は40%をきるレベルです。それはすなわち、約3分の2の食事を、外国産に依存するということになります。しかしながら、これらの食事は、日本人のために、日本人が認める基準で生産されたものか、と言われると疑問が残ります。「グローバル化を進めるということは、食の安全のスタンダードを、最も低い国に合わせる」、とこの本でも指摘されていましたが、まさにスタンダードが全く異なるものを取り入れている危険性があるわけです。

 

この本では、アメリカ牛肉で、日本で禁止されているホルモン剤(エストロゲン)が大量に含まれている、中国産のコメが重金属で汚染されている、といった事例が紹介されています。こうした事例は日本からは考えにくいことですが、彼らからすれば「自分たちが食べないものはどのように作ったって構わない。お金になりさえすれば良い」という考えがベースとなって生み出されているものです。消費者が生産される土地が思いつかないと不安になるのに対して、生産者も、消費者があまりにも遠いと、消費者の顔をイメージすることができず、そうした考えに至ってしまうのかもしれません。

 

しかしそれらは一方で、安易に安いものに手を出してしまう日本人にも一因があるのではと思ってしまいます。前回紹介した大前研一氏の書籍の中でも、「日本は低欲望社会」だという指摘がありましたが、安いものにどんどん手が伸びてしまうのです。そうしているうちに、知らず知らずに自分たちの健康を害する行為をしてしまっているのかもしれません。

 

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これらの安価な食事が危険であるならば、極端な言い方をすれば不買運動を行なっても良いわけです。そうすることで日本の生産者を安価な食品から守ることができ、消費者の手に届く食品も安全なものとなる、正のスパイラルに持っていくことができます。そうしたサイクルにするためにも、まずは知ることが大事。そういった意味では、この本は良質な知識を提供してくれていると思います。

 

では、では