だじりブログ

日々の読書から広がる考察

菊澤研宗『戦略の不条理~なぜ合理的な行動は失敗するのか~』〜読書リレー(85)〜

やはりビジネスと軍事は似た者同士、お互いに学ぶべきことは多いようです。

戦略の不条理?なぜ合理的な行動は失敗するのか? (光文社新書)

戦略の不条理?なぜ合理的な行動は失敗するのか? (光文社新書)

 

 現在は慶應大学商学部で教授として教鞭を執る菊澤氏による、戦略における不条理についてまとめた一冊です。軍とビジネスの具体例が豊富に盛り込まれており、比較的読みやすい文章になっています。

 

まず、著者によると、「「戦略」という言葉は様々な分野で多様に使用されていますが、その本質はみな同じです。それは、生物学あるいは進化論に通じる生存のための積極的あるいは消極的方法であり、生き残るための知恵、生存するためのアート(技法)」だといいます。すなわち、ロジカルではなく、最終的にはアートだというのは、他の著書にも述べられています。

 

この前提の上で、著者によると、戦略というのは、物理的世界、心理的世界、知性的世界からなる新しい三次元的な世界をすべての方面で考慮しなければならない、というのです。この三つはどういう意味かというと、物理的世界は文字通り、どのようなリソースを持っているのか、資源を持っているのかという点です。文字通り目に見えた形ですので、これを扱うことは、直接的アプローチだといえます。心理的世界というのは、物理面では説明できない、行動に制限を加える心理的なものをさします。これは目に見えないものですので、これを扱うことは、間接的アプローチだと言えます。最後に、知性的世界というのは、人間の知性によって理解される世界であり、これも目に見えないことから、これを扱うことも間接的アプローチだと言えます。

 

そして、軍においてもビジネスにおいても、戦略の不条理、すなわち戦略的な行動がうまくいかないことが発生するのは、こうした三つの世界のバランスを欠いたためだ、としています。逆に言えば、戦略の不条理を起こさないようにするためには、こうした三つの世界のバランスを取る必要がある、ということなのです。

 

著者は、これら三つの世界を説明するために、クラウゼヴィッツリデル・ハートと言った世界的に有名な戦略家とドイツの将軍エルヴィン・ロンメルを取り上げています。また、ビジネスでは、マイケル・ポーターなどの著名な研究者や、心理的面を捉えたダニエルカーネマンなどを取り上げています。

 

しかし、私は少し知的世界と心理的世界の区別がわかりづらいイメージがあります。いずれも目に見えないという点では、心理的なものであり、かつ考えによるものです。また、心理的アプローチというのは、人間が合理的に考えようと努めていても(これが著者の言う知的世界)、合理的にならないケースがある(これが著者の言う心理的世界)のです。そのため、この二つの世界は、一見独立しているようで、実は一直線上に存在する同一の世界だと考えられなくもないのです。

 

何れにしても、こうした直接・間接のアプローチをバランスを持って考慮する必要があると言う点は非常に興味深いアプローチでした。引き続き、探究が必要なようです。

 

では、では