テレワークは組織の生産性を上げるのか?

新型コロナウイルスにより、多くの企業がテレワークを採用しています。そもそも東京オリンピックの開催期間に予想された都市圏の混雑を踏まえ、テレワークを推奨する動きはもともとありましたが、今回の一連の事態によってこのテレワーク推奨の動きはさらに加速しています。

 

ここで一つ気になる疑問があります。それは、「テレワークは本当に効率的か?」というものです。そもそも日本人のほとんどの方々は、オフィスで仕事をすることに慣れきっていたはずで、家で働きたいという願望はあったものの、なかなか制度が整わないというのが現場だったはずです。それが今回の非常事態も相まって、いきなり準備期間もなしにテレワークをスタートしたのですから、本当に生産性が担保されているのか、疑問に思っても仕方ないのかもしれません。

 

ということで、ここで生産性を考える上でのいくつかの視点から考えていきたいと思います。

 

1.移動時間がなくなる 

オフィスを離れて仕事をすると、確かに余計な移動を省くことができます。これは大きなアドバンテージで、世界的にも通勤時間が長いと言われている日本の社会においても、生産性を上げるということに確実に繋がるでしょう。

 

これはかなりクリティカルで、平成28年度の調査では、全国平均で1.2時間を通勤に費やしているそうです*1。現在ほとんどの方が平日平均で7-8時間(残業除く)働いていることになりますから、移動時間を準備時間と考えると、実に10-12%の時間短縮につながるわけです。これは非常に大きいでしょう。

 

2.コミュニケーション

オフィスを離れて仕事するわけですから、当然周りには誰もいません。チームの内部のコミュニケーションにおいても、基本的には電話もしくはビデオで行うことになります。つまり、コミュニケーションのあり方が変わるわけです。

 

オフィスだと、周りに仲の良い同僚もいるかもしれません。彼らと日常について話をすることもよくあるでしょう。雑談がつい長くなってしまって、気がつけば時間がなくなるということもあるのではないでしょうか。

 

こちらは単純に生産性が上がるか上がらないかという議論ではなく、コミュニケーションの質の問題です。一見するとテレワークの方が効率的に見えるかもしれませんが、実はオフィスで仕事している方が生産性を上げる鍵はありそうです。というのも、上述した雑談の中には、仕事の生産性を上げるようなキーがあるかもしれないからです。

 

例えば、雑談の中で、オフィスの中の隣のブロックで働いているチームの今直面している問題を耳にしたとします。その事例をふむふむと聞いている中で、「あれ待てよ、自分たちのチームにも、将来的にそんな問題が起きる可能性があるんじゃないか?」ということに気づき、早めの対応ができます。こうして、雑談を契機に問題を解決することもあるかもしれないのです。

 

そうなってくると、テレワークのコミュニケーションは、あまりにも最適に選びすぎているために、そうした自分の範疇の外にある重要な情報を逃してしまう危険性があります。これはテレワークの潜在的な問題点と言えるでしょう。

 

3.仕事の場所

最後に場所について。オフィスから家へと仕事の場所が変わることによって、集中の度合いは変わります。これは個人差があるようで、家の方が確実に集中できるという人もいれば、オフィスの方が集中しやすいという人もいます。前者の場合、誰にも邪魔されずに自分のタスクに集中できるという点を上げる人が多くいます。一方で後者は、人とinteractiveにならないと効率が上がらないという点を上げる人が多い印象です。

 

ここの生産性の考え方は、人の性格が大きく影響しているかもしれません。MBTIというパーソナリティ調査によれば、人間は人と交流することでエネルギーを得る外向的なタイプの人間と、自分で考えることによってエネルギーを得る内向的なタイプの人間に分けられることができます。これらによってどのように集中できるかは変わってきますので、こうしたタイプも考慮しながら、どちらが効率が良いかを選択する必要がありそうです。

 

総じて、現時点でテレワークが生産性を確実に上げるということは言えない一方で、一部では確実にオフィスで働くことよりもメリットがあることがわかりました。一番良いのは、タイミングやパーソナリティに応じて、テレワークかオフィスかを選ぶことができる柔軟性を持つことかもしれません。