GMAT Verbal独学記① 〜洋書の活用法〜

前回に引き続き、GMATの対策についてまとめていきたいと思います。今回はVerbalで。

 

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Verbalには三つのタイプの問題があります。一つはSentence Correction。問題文の中に下線部が引かれており、その文章に文法的な誤りがなければ、Aを、誤りがあるのであれば、残りのB〜Eの4つの選択肢から選択するというタイプの問題です。英文法に対する理解もさることながら、独特な表現方法(いわゆるGMATルール)をしっかりと覚えておく必要があります。

 

2つ目はCritical Reasoning。これは100words前後の比較的短い文章とそれに付随する質問が提示され、それに該当する回答を5つの選択肢の中から選ぶというタイプの問題です。その名の通り、ロジカルシンキングが求められるタイプの問題と言えるでしょう。

 

最後はReading Comprehension。その名の通り文章題です。 これは日本人に取っても馴染みのあるスタイルの問題ですが、扱われるトピックが多岐にわたる(アメリカの歴史だったり、心理学とかだったりする)ことから、それらの背景知識を掴んでおく必要があります。

 

これらは同じVerbalとはいえ、それぞれに独立した問題のスタイルであることから、個別に対策を進めていく必要がありました。そこで私が活用したのがManhattan PrepのStrategy Guideシリーズです。

Reading Comprehension GMAT Strategy Guide, 6th Edition (Manhattan Prep GMAT Strategy Guides)

Reading Comprehension GMAT Strategy Guide, 6th Edition (Manhattan Prep GMAT Strategy Guides)

 

 

Sentence Correction GMAT Strategy Guide

Sentence Correction GMAT Strategy Guide

 

 

Critical Reasoning GMAT Strategy Guide, 6th Edition (Manhattan Prep GMAT Strategy Guides)

Critical Reasoning GMAT Strategy Guide, 6th Edition (Manhattan Prep GMAT Strategy Guides)

 

 

本来であれば、洋書ではなく日本語の書籍を用いて対策を進めるべきだと思うのですが、このクオリティで各パートを詳細に説明する書籍が日本において存在せず、Manhattanに当たらざるを得ないという形で対策を進めました。結果としてはとても良かったと思っています。

 

特にSentence Correction。いわゆるGMATルールをかなり細かく掲載しているのと、頻出する文法分野(時制の一致やイディオム)を詳細に説明してくれているので、問題を解きながら辞典のように扱うことができます。

 

驚くべきは、GMATの出題レベルとの同期率です。言い換えれば、GMATが出題するタイプの問題をうまく捉えていて、「あ、これManhattanでやっていたな」と思う問題が、OG Prepでも本番でもかなり出てきたと記憶しています。

 

ちなみに、もう一つKaplanも活用したのですが、これは個人的にはあまり活用法を見出せず…。高得点を取るための各パートの攻略法と例題が掲載されているのですが、いずれも散発的な印象があり、あまりOG Prepや本番で出てきた覚えがありません。OG Prepもやり込んだ、もう問題がない、という方はこの本に手を出して見るのも良いかもしれませんが、逆にいうとそこまではあまり必要性を感じられない一冊でした。

Kaplan GMAT 800 (Perfect Score Series)

Kaplan GMAT 800 (Perfect Score Series)

 

 

では、では

MBA Period Zero Week 3 〜Value Creation〜

 粛々と続けているPeriod Zero。今週は戦略に関するトピックです。戦略は特にINSEADが強みとするところで、有名どころでは、「ブルーオーシャン戦略」を提唱するチャン・キムと、レネ・モボルニュが教授として在籍しており、個人的にはとても楽しみにしている分野であります。

 

ということで今回の講義では、特に戦略の実行の結果もたらされる「価値の創造」について取り上げられていました。価値の創造については大きく二つのアプローチがあるといいます。

WTPをあげる

②RCを下げる

WTPもRCもなんじゃそりゃという感じですが、WTPはWillingness to pay、RCはResource Costの略で、日本語でいうと「支払い希望の額」と「資源のコスト」というべきでしょうか。あえてResourceを資源と訳したのは、このResourceには単純な物質だけではなく、生産性の効率などの無形のものも含まれているからです。

 

 

WTPをあげるためには、様々な方法があるわけで、新しい技術の発明による性能の向上、強いブランドの植え付けによる無形の価値の提案などがあります。前者で言えばリチウムイオン電池の向上による駆動時間の長いPCの開発などがあり、後者で言えば見栄えのしないポロシャツにロゴマーク入れればたちまち価格が10倍に跳ね上がる、ということが挙げられます。

 

RCを下げるためにも、様々な方法があります。生産性の向上が一番わかりやすい例ですし、後は物質的な材料コストの減少というものがあります。前者で言えばトヨタの改善活動による製造コストの減少、後者で言えば燃料のコストダウンによる航空券価格の下落などが挙げられます。

 

これらを自分が今ある資源をもとに、WTPをあげ、RCを下げるということをしていくことこそが価値の創造につながるということになります。

 

こういう観点で見ると、日本の企業は概してRCを下げることは得意だが、WTPをあげることはなかなか苦手としているんじゃないかな?と振り返って考えてしまいます。唯一の例外が昔のSONYや、ビューティー家電を生み出しているパナソニックで、ウォークマンなどを始め新しいライフスタイルを提案しているという点では、WTPをあげる方に動いているわけです。しかしほとんどが、RCを下げる、すなわち生産性を向上させたり、海外の競合他社がうまくできていないところを効率性をあげてコストを下げるという方法で戦ってきたような気がします。

 

ただ、もしかすると今の日本は全体としてこの傾向が強く出ているのかもしれません。すなわち、WTPのあげることには興味がなく、向上した価値を認めない一方で、ひたすらRCを下げよう努力させられるという構図です。大前研一氏も最新の著書で日本は「程欲望社会に突入した」といいますが、低欲望社会というのは、「いいものを安く」という言葉に修飾されるように、コストを前提に物事を考えるために、消費がどんどん弱まっている、という現象を表します。 

 

今後の日本企業、いや日本社会にとって必要なのは、 WTPの方かもしれません。

 

では、では

 

GMAT Quantitative対策記

GMATは大きく分けてVerbal、Quantitative、Analytical Writing、Intergrated Reasoningの四つのパートがあります。このうち、VerbalとQuantitativeについては、各51点満点で、それぞれの点数に基づいてスコア(最大800点)が付与されます。ここが各スクールが重視する点数であり、日本人出願者が海外トップスクールのMBAにアプライする際、基本的に700点以上取ることが推奨されています。

 

Verbalはいわゆる国語、Quantitativeは数学、と思えば良いでしょう。Verbalでは読解能力や論理的思考能力を測り、Quantitativeは計算能力や数学の思考能力を測る試験と言えます。

 

日本人出願者が特に苦労するのがVerbalです。高い英語の読解能力が要求されるため、高得点を取るのは非常に難しいパートとされています。一方、Quantitativeは要求される数学の知識は必ずしも高くはなく、日本の文系大学受験レベルで十分に対応可能です。このため、対策次第にとっては満点を取ることも不可能ではありません。このため、日本人出願者としては、いかにQuantitativeで満点に近い点数を取り、Verbalをカバーするか、という考え方になると思います。私も典型的な日本人出願者でしたので、このようなアプローチで対策を進めていきました。

 

私は、以下教材を用い、独学で対策を進めていきました。

 

アゴス・ジャパン『MBA留学 GMAT完全攻略』

 前回のブログでも書きましたが、GMATの試験がどんなものかということを掴む上では、この本はかなりの良書です。それはQuantitativeにおいても過言ではなく、どのような試験の内容なのかということを把握することができました。

新テスト対応版 MBA留学 GMAT完全攻略

新テスト対応版 MBA留学 GMAT完全攻略

 

 

洋書と異なり日本語で記述されており、また日本人出願者を対象として記述されているので、レベル感がマッチしており、効率的に理解を進めることができました。

 

②インターナショナルマスアカデミー

ネット上で購入できる教材です。下記ウェブサイトを通じて購入ができます。

インターナショナルマスアカデミー

多くのGMAT受験ブログでこの本が書かれていたので、まずは購入をしてみて対策を進めていきました。この本は「大学受験の数学レベル」から「GMATのQuantitative」の対策を進めるにあたって足りない部分をちょうどよく補っている、日本人出願者にとっては最適の教材と思います。まず数学の各用語(足し算掛け算、中間値、確率など)の英単語がまとめられており、その後Quantitativeにおいて頻出する分野(確率など)の例題と対策が載っています。難易度も非常にGMATで出題される問題と酷似しており、対策が非常にしやすかったと記憶しています。正直、日本人出願者だったらこの一冊で十分なんじゃないかと思っています。

 

③GMAT Official Guidebook

①②でインプットした後は、ひたすらOGを用いてアウトプット。私は最新版のOGに加え、過去数年前のOGをネット上で中古で購入し、一通り解いてみました。

GMAT Official Guide 2018: Book + Online

GMAT Official Guide 2018: Book + Online

 

 

こうして対策を行い、本試験1回目は満点には一歩及ばず50でしたが、その後は継続して満点を取れるようになりました。ご参考になれば幸いです。

 

では、では

W杯と中国について

皆様もご存知の通り、W杯が始まりました。最弱ホスト国のロシアがサウジアラビア相手に大勝したり、イランとモロッコの試合が予想以上に面白かったりと、早速寝不足になるだけのトピックがたくさん出てきています。

 

私も、上海現地のスタッフとW杯に関する議論は絶えません。惜しくもW杯出場を逃した中国ですが、国内でのW杯に対する関心は非常に高く、上海でもレストランは何かにことつけてW杯と繋げたキャンペーンを張ったり、オンラインショッピングもW杯で盛り上がっていたりと、否が応でもW杯に興味がいってしまう街並みへと風貌を遂げています。

 

そんな中、気になったのが今回のW杯のスポンサーです。テレビ中継をみていると、広告板でやたらと漢字が気になりませんか?気になりますよね?牛なり中国なり、日本人に取っても馴染みのある文字が出てきて、なんだか国際試合とは思えないような印象を受けます。

 

ということで、オフィシャルサイトをみてみました。

 

2018 FIFA World Cup Russia™ - FIFA.com

 

このFIFAのオフィシャルサイトによると、やはり中国のスポンサーの多さが目立ちます。FIFAパートナーズの7社のうち1社が中国企業(WANDA:不動産)、W杯スポンサーの5社のうち3社が中国企業(Hisense:家電、VIVO:携帯電話、Mengniu:飲料品メーカー)、そしてナショナルサポーターとして1社が中国企業(Yadi:電気バイク)と、4割近くを中国企業が占めていることになります。圧倒的な存在感です。

 

もちろん、これはスポンサーになることによる知名度向上を狙ってのことなのでしょう。それにしても、自国チームが出ない国際大会に対して、ここまでやるのは、やはり中国という国全体のサッカーに対する関心の強さをうかがわせます。

 

ちなみに、日本企業は0…。まあ、こうしたスポンサーに頼らずとも知名度があるということなのかもしれませんが、それにしてもちょっと寂しいですね。

 

では、では

 

藤野英人『ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義』〜読書リレー(136)〜

 

著者である藤野英人氏はレオス・キャピタル・ワークス創始者の一人にして代表取締役社長という人物です。「ひふみ」投信の方が有名かもしれません。私もこの人を知ったのはガイアの夜明けか何かで特集されていた会をたまたま見たことがきっかけでした。その時のインパクトは少なからずあり、投資信託を含む投資に関するイメージがあまりよくない日本において、日本の中小規模の「伸びる会社」に着目して投資を行うという手法はなかなかみられない、面白い手法だと記憶しています。

 

そんな藤野氏ですが、投信の他にもこのように執筆活動も精力的に行なっているという点に驚きです。今回紹介するのはPHPの新書ですがこの他にもかなり本を出版されており、知見の深さが伺えます。

 

この本では、投資やビジネスにおける「大きな時代の流れ」を理解するために、歴史に解を求めようと試みています。具体的には、日本の経済の歴史を振り返り、過去の先人がどのように日本をみてきたのか、そしてどのような行動をとっていったのかというところを具にみることで、今の日本人の行動のヒントにしていこうという試みです。タイトルは「商売の日本史」とありますが、商売のみならずその時代の統治者が行なった経済政策にも触れており、広く経済史といっても過言ではないと思います。

 

この本で特徴的なのが、日本の歴史を「ウミヒコ」と「ヤマヒコ」に分けて捉えようとした点です。簡単に言えば、「ウミヒコ」は海洋による交易を中心とした「外向き」の考え方、そして「ヤマヒコ」は陸路を中心とした「内向き」の考え方です。そして、日本の経済そしてお金の動きは、この「ウミヒコ/ヤマヒコ」すなわち「外向き/内向き」をスイングするというのです。

 

例えば、平清盛を中心とする平安末期は「ウミヒコ」の時代、それが源頼朝による鎌倉になると「ヤマヒコ」の時代。更に言えば、江戸時代は「ヤマヒコ」の時代で明治は「ウミヒコ」の時代。そして現代は「ヤマヒコ」の傾向が強く出ているといいます。

 

では、このスイングがどこからきているかというと「外国の影響」特に中国の影響力だといいます。中国の影響力が大きいと、日本は国を開き「ウミヒコ」的な傾向を強めていき、逆に中国の影響力が弱いと、日本は内向きになり「ヤマヒコ」となる、というのです。

 

同様の議論は、歴史学者の輿那覇氏による「中国化する日本」においてもされています。この本では「中国化」「江戸化」という言葉で表現されていますが、上述の「ウミヒコ」「ヤマヒコ」に類似する考えといっていいでしょう。 

 

もっと深い議論がこの本で話されているのですが、私が特に興味を持ったのが、この「中国の影響」です。日本人の感覚からすると、アイデンティティが外の影響によって決まってくるというのはいささか納得したくないかもしれませんが、やはり日本は中国の影響を大いに受けていると思うのです。内向きか外向きかのスイングが外からの影響で決められているとするのならば、今後ますます影響力をもつであろう中国に対して、日本がどのように自身のスタンスを変えていくのか、中国に携わる身としては非常に楽しみに思えてきてしまうところでもあります。

 

 

では、では

海外MBAの受験費用まとめ

この時期になると、海外MBAの説明会だったり、各予備校が実施するセミナーが行われたりと、海外MBAに関するイベントが増えてくると思います。そうした中できになるのが、海外MBA出願にかかる費用になってくるでしょう。

 

海外MBAでは、MBAプログラム自体にかかる費用(学費、生活費)などはもちろんの事、受験や出願までに多くの時間と費用、そして労力を要します。海外MBAに対して強い志がある方は別かもしれませんが、海外MBA受験は前掲の記事の通り「費用対効果」で考える傾向もあることから、受験にかかるリソースを鑑みて、受験に踏み切らないという決断をされてきた方も私の周りには少なからず存在します。

 

では、私が海外MBA入学に至るまで一体どれくらいの費用がかかったのか、各準備事項とともに振り返っていきたいと思います。

 

と、費用振り返りの前に、ざっと私のスペックです。

 

形態:私費

業務経験:メーカー6年

出願時年齢:29歳

海外経験:台湾1.5年(留学)、中国1.5年(駐在)

英語環境:海外営業としてメール・国際会議で使用する程度。

入社時に受けたTOEICは700点台以下の、いわゆる「純ドメ」受験生にあたります。

 

 

TOEFL費用:約360,000円

内訳は、TOEFL受験費用(25,000円*13=325,000円)、テキスト代25,000円、レアジョブ2ヶ月10,000円。

 

・ほとんどを受験費用に費やしてしまいました。勉強のペースづくりにと、1ヶ月に一回定期的に受けていたら、最終スコア(108)に到達するためにだらだらと1年かかってしまいました。

・もう一つの特徴として、予備校には通いませんでした。私費留学を考えていた当時の私は、「時間はあるが(社費生と異なり、出願時期に制限はない)、お金はない」という状態だったので、独学で突き進んでいきました。中国のサイトなどのリソースをうまく活用しながらの勉強だったので、かなりコスパよくできたところだと思います。

・個人的に最もコスパがよかったのがレアジョブ。2ヶ月やっただけでスピーキングが飛躍的に向上し、一気に最終スコアに到達しました。もっと早く気づいていれば、と反省。

 

②GMAT費用:約123,000円

内訳は、受験費用(25,000円*3=75,000円)、テキスト48,000円。

 

・受験は3回で最終スコア(750)に到達できたので費用はそれなりに抑えられたほう。

・こちらも予備校には通わず、独学で全て貫き通す。勉強開始から最終スコア到達まではだいたい半年くらい。ここも、コスパよかったと自信を持って言えるところ。

・勉強法としては、Verbal→Manhattanおよびネット情報で基礎固めののち、OG+OG Prep+中国参考書でひたすらアウトプット。Quantitive→マスアカ一本。この辺りの勉強法は別で紹介したいと思います。

 

③エッセイ・インタビュー対策:約800,000円

内訳は、エッセイ対策(カウンセラー代740,000円、テキスト6,000円)、インタビュー対策(54,000円)

 

・反省多い出費。個人的な戦略として「TOEFL・GMATで浮いた費用を、エッセイ・インタビューで徹底的につぎ込む」という考えだったので、金を惜しまなかったが、いかんせんエッセイカウンセラーが高すぎ。もう少し調べて賢い選択をすれば、もう50万円くらい安くできたと思う。

・なぜこう言えるのか。(1)エッセイ執筆当時は受験校を多く考えていた(結果的に2校)、(2)エッセイからインタビューまで、フルパッケージで申し込んでしまった(結果、エッセイ執筆後個人的な理由により出願を一年伸ばし、ほとんど意味をなさず…)という二つの理由があるためです。

 

④キャンパスビジット:約100,000円

イギリスのMBA3校のビジット(と自分の旅行も兼ねて):100,000円

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・旅行も兼ねてなので入れるべきかどうか迷ったがまあカウントしておこうということで。キャンパスビジットは上記記事を参考ください。

 

⑤出願費用:約60,000円

内訳は、2校への出願(30,000円*2=60,000円)

 

合計:1,443,000円

 

英語のネイティブや留学経験がある人は、もっと費用を抑えられることができると思う。TOEFLの準備もそこまでかけずに済むし、エッセイ・インタビューのプルーフリーディングも手間をかけずにできると思う。このため、私の情報はあまり参考にならないでしょう。

 

エッセイカウンセラーの件もあるのでなんとも言えないが、英語の勉強をゼロからスタートさせた場合、やはり最低でも100万くらいはかかってしまうのではないでしょうか。英語で文章・エッセイを書いたことない人が、闇雲にエッセイを書いて合格できるほど甘い世界ではないと思うので、英語の勉強を含め、それなりに費用はかかることを覚悟しておいた方がいいと思います。

 

ただし、MBA出願の利点は、損切りができることです。まずは興味半分にTOEFLを勉強してみて、途中で興味がもてなかったらそこで止めれば良いわけです。塾や予備校に通わなければ、初期投資は軽くて済みますので、まずはやってみる、というのも良いのかもしれません。ちなみに私はそのパターンで、やればやるほど面白くなっていったので、最後まで突き進みました。

 

他にも様々な方が様々な媒体で受験費用についてまとめていると思います。ただ、「私費生・英語をゼロから勉強スタート」という私と同じバックグラウンドを共有する方にとっては、私の経験がかなり重複するところがあると思いますので、少しでも参考になれば幸いです。

 

では、では

中野剛志『日本の没落』〜読書リレー(135)〜

 

日本の没落 (幻冬舎新書)

日本の没落 (幻冬舎新書)

 

 

 タイトルから、日本の現状を鮮やかに浮き彫りにした分析本かと思いきや、100年前に出版された本のレビューであるのがこの本です。この本では、その内容の大部分を、ドイツの哲学者オズヴァルト・シュペングラーが1918年に執筆した『西洋の没落』という本の解説に当てています。内容も多く読み応えがあり、改めて原著を読んでみようという気になります。

 

この『西洋の没落』という本には、1918年時点で共有されていた進歩史観という歴史観を否定し、これからは文明による没落の時代がやってくるという予言がなされています。著者によれば、現代の現象の多く、すなわち経済成長の鈍化、グローバリゼーション、地方の衰退、少子化ポピュリズムリベラリズムの失効、環境破壊、機械による人間の支配、非西洋諸国の台頭、金融の支配などは、全てシュペングラー氏によって予言されていたと言います。

 

ではなぜ、現在が『没落』の時代だと言えるのか?それはシュペングラー氏の哲学に関係すると著者は述べています。人間を含む全ての生き物には知能と生命の二つの存在があり、本来であれば、生命の存在の上に成り立っているはずの知能が独立して活動するようになることがあると言います。そうしてそれが過度になってしまうと、生命自身を脅かすようなことにつながります。これがいわゆる没落の状態だとシュペングラー氏はいうのです。これは、グローバリゼーションによって人々がその土地に根付いた固有の文化を失い、加えて経済が停滞している中で人間の生命そのものが脅かされている、そんな現在の状態を予言していた、ということに繋がるのでしょう。

 

なぜ知能が過度になり、暴走してしまうのか。著者はゲーテの名著『ファウスト』を取り上げて説明します。そうした人間をファウスト的人間と呼称しているのですが、ファウストは「引き起こされる結果には目もくれず、ただひたすら、技術の進歩や事業の拡大に向けて邁進する」人物として描かれています。それはいつまでも幸福が満たされず、いつまでも行為に餓えている状態なのですが、こうした魂を人間が持ってしまったからこそ、すなわち際限のない成長を求めてしまったからこそ衰退をたどる運命にあるというのです。

 

個人的に面白いと思ったのはシュペングラー氏の考え方のほうです。彼はこうした没落の状態を悲観的に見ているわけではなく、むしろ肯定的に捉えています。そして、優れた哲学もそうしたファウスト的魂から出てくるとしています。それは著者も何度も引用している以下の言葉にあらわられています。

 

「自分は主張する。今日より優れた哲学者は実験心理学のくだらない手仕事をしている連中のなかにはいないで、多くの発明家、外交家、財政家のなかにいると。これはある歴史的な段階において、絶えず生ずる状態である」

 

すなわち、現在の時代が没落の時代と受け止めた上で、それでもなお悲観的になることになく運命を引き受け、頑張り抜くことが大事なのだという考え方です。

 

もちろん、シュペングラー氏が主張するように、現在が本当に没落の時代なのかは、個々人の定義によるものなのでなんとも批判のしようがありません。進歩史観を否定するというのは重要な作業かもしれませんが、かといって過度に否定的になっているのかもなと思うのもまた事実です。ただ、何れにしてもシュペングラー氏が述べようとしていた点については大いに納得できるものであり、現在を視る切り口として面白い解釈を提供してくれているような気がします。

 

では、では