海外MBAをキャリアに活かすための3つの視点
遅まきながら、先月末をもって、MBA後に転職した会社で半年が経過しました。半年というのビジネススクール換算ですでに半分をすぎてしまったわけですから、時間の流れの早さを感じます。
卒業後しばらくたって実務にも慣れてきて、このタイミングで多くの人からよくMBAに関する相談を受けるようになりました。特に私の場合は、日系企業を経て留学し卒業後は戦略コンサルという、ポストMBAとして典型的なキャリアを歩んでいるため、MBA準備はどのようにすればいいのか、学生生活はどのようか、そして就職活動はどうだったかといったような相談を受けるようになりました。その中でも特に「今振り返ってみて、海外MBAでの経験で何が一番有益な学びだったか」「何がよかったか・悪かったか」という質問をよく聞かれます。この質問、MBAホルダーとして実際にキャリアを積んでいる段階として、少し考え方が固まってきたので、少し整理してシェアしたいと思います。
簡単に言えば、以下3つの視点に集約されるのかなと思います。
1.MBAはキャリア・チェンジャーではあるが、キャリアそのものではない
最近感じるこの視点。MBAをとること自体はキャリアではありません。そこでの経験がキャリアとして評価されることはほぼないといえます。
これは特に私が所属しているようなコンサルティング業界では特に顕著かと思います。例えば、私の場合、前職がメーカーの営業ですので、主にそこでの知見がアドバンテージとして重宝される傾向にあります。一方で、MBAで何を学んだか、何を行ったかについてはほとんど見られません。というか誰もそんなことは気にせず、過去の職業として何を行ったかに注目がいきます。
ただ、私に相談に来る方の中にはこの辺りを混同している人がいて、「キャリアアップのためにMBAを」と考えている人がいますが、MBA自体がキャリアとして評価されることはありません。キャリアとして評価されるのはあくまでも前職の経験であり、何を学んだかではないのというところだけは強調したいと思います。
一方、MBAがキャリア・チェンジャーであることには疑いの余地はありません。MBAは良い意味でも悪い意味でもつぶしがききやすく、卒業後の進路を考える際選択の幅が非常に多いというのが特徴的です。今まで何らかの職場の経験によって染められた自分の履歴書を、可能な限りリセットしてくれる、そんな効果があります。そういう意味では、私のようにメーカーからコンサルという転職も可能にしてくれたり、私の知り合いでいたような、マーケティングからファイナンス系のポストへのキャリア・チェンジを可能にしてくれるようなものだと考えた方が良いでしょう。
ここで何度も強調しますが、MBAがキャリアそのものに活きるのは、こうした方向転換を行う時のみで、後は実力勝負です。いわばどこかに向かうためのチケットのようなもので、行き先に到着した後は、切符が意味をなさなくなるのと同じように、MBAはキャリアとしては意味を持ち得てないのです。
2.MBAは、学ぶコンテンツそのものではなく、学びの途中で生み出される問題意識・イシューに価値がある
これは「MBAの学びで何が一番有意義だったか?」という質問に対する、私の答えです。学ぶものではなく、その中で考えたこと自体に意味があると思います(少なくとも、私はそれを生かそうと思っています)
具体的にはどういうことか少し説明したいと思います。例えば私が受けたB2Bマーケティングの授業の話。コンテンツとしては、PricingやBuilding trustといったようなありきたりな話で、日本でも本屋に行けばそれなりのリソースは手に入りそうなトピックが並んでいます(それだけ、日本の書籍が有しているコンテンツ力は目を見張るものがあります)。振り返ると、これらの内容については自分で勉強しようと思えば勉強できるもの、と言えなくもないのです。
ただ、その授業で一番印象に残っているのが、そもそもB2Bマーケティングをどのように考えるべきかという問題設定の方でした。以前までは、B2Bマーケティングの意義はそこまで大きくありませんでした。重厚長大産業はほとんど垂直統合で車内で何でも行うという方針だったからです。ただ現代では、垂直統合が徐々に解体しており、バリューチェーンの中で異なるプレーヤーが活躍することが多くなってきました。そうした中で、いかにB2Bマーケティングがあるべきなのか、どのようにして、今まで内部に取り込まれていたvalueを、外部の関係で、より目に見える形で獲得していくか、という問題意識を教授が話していたのが印象的です。この視点は、どのような知識を得るよりも原点でのマインドセットという点ではとても良かったと思っています。
この授業に限らず、多くの授業で自分の問題意識を掻き立てるトピックはありましたし、学生との交流を通じて培った考え方というのは、これからも財産になると思っています。
3.MBAネットワークを活かせるかはあなた次第
最後にネットワークについて。疑う余地もなく、MBAでは今までにないネットワークを培うことができます。特に欧州のMBAだと、それこそ世界中からバランスよく学生が集まっていますので、その幅は非常に広いです。例えば私の場合、同じコンサルティング会社に就職したクラスメートがおり、世界中のオフィスにネットワークが散りばめられているということができます。私の場合チャットグループを作っていて、その所属は多種多様。全大陸をカバーしています笑
ただ、これを活かせるかどうかは、どのようなキャリアを求めているかによって変わってくるかと思います。卒業後も日本に引き続きいるということであれば、このネットワークを活かす機会は限定的になりますし、もっとグローバルな場でキャリアを深めていきたいというのであれば、このネットワークは非常に強みになる武器となり得ます。すなわち、MBAのネットワークは活かすも殺すもあなた次第、ということができそうです。