大前研一『2018年の世界~2時間でつかむ経済・政治・ビジネス、今年の論点~』〜読書リレー(74)〜

やはり日本には課題が山積みです。 

大前研一氏による2018年の論点をまとめた本です。内容自体はコンパクトで、1時間ほどで読めるような内容になっています。ただ、経済・政治・ビジネスの面で多岐にわたる議論が展開されており、様々な問題提起をしているので、色々考えさせられます。冒頭では、経済・政治・産業についてそれぞれまとめられています。

 

注目なのが、後半に紹介されている日本のこれからについてです。私も様々な本を読んで思ってきたことがこの本でも提起されており、産業面では本当に深刻な状況だと思います。

①企業の新陳代謝が起きない。ユニコーン企業(未上場で想定時価総額が10億ドル以上の企業)は、日本には数社しかなく、どれもアメリカ・中国発のアイディアのパクリ。

②労働では、本当に必要な人材育成がされずに、働き方改革という見当はずれな施策を行なっている。

③何より、日本全体が低欲望社会になっている。

 

①は深センで感じたことです。(過去ブログ参照)

藤岡 淳一『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ−これからの製造のトレンドとエコシステム』〜読書リレー(71)〜 - だじりの日記

 

特に、③については、今「長寿命の中の働き方」というテーマで自己啓発書が健闘しているという点と、関係があると考えます。

style.nikkei.com

この記事によると、リンダ・クラットン著『LIFE SHIFT』が一つの潮流を作っているといいます。数年前までには、若いうちにバリバリ働いて、アーリーリタイアするというのがいわゆる人生の理想像だったわけです。しかし、この本の登場により、そうした理想像が変わったといいます。ここでは、人の寿命が長くなることによって、健康でいられる時期も伸びます。このため、「60歳で定年」という従来の考えが覆され、さらに長く働く必要がある、という点を投げかけたのです。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

この本では比較的こうしたシフトをポジティブに捉えているのですが、どうやらこの論調を参考にした日本の書籍では、ネガティブな論調が目立ちます。老後がわからないから、現在の消費を抑えておこうか、というような考え方にシフトしつつあるのです。失われた20年の中で、停滞することが普通の状態であるという認識が蔓延してしまったために、今のような(官製の)好景気の中でも、「また停滞に戻るんじゃないか?」という危機感が働き、消費を抑えてしまうわけです。

 

この将来に対する不安が、現在の悪循環を生み出しているんじゃないかな、なんて考えてしまう本でした。

 

では、では